消費者委の健食議論 〝消費者視点〟を失念? 「用法用量」表示で意見対立
消費者委員会(=消費者委、松本恒雄委員長)が行う健康食品を巡る審議の結末へ懸念が濃くなった。健食の情報提供のあり方や効果的な規制について審議するものだが、2月25日に行われた第3回会合では、消費者委が担うべき"消費者視点"を失念したかと思われる発言が相次いだからだ。既成の法律や制度について「規制強化」の方向性は持てても、「適正化」に向かうことはできない。これが消費者委の限界と言えそうだ。
第3回会合では医薬品にのみ認められる「用法用量」などの表示を巡り、消費者委とヒアリング団体の意見がぶつかった。
ヒアリングには、日本通信販売協会(JADMA)と日本健康・栄養食品協会(日健栄協)が参加。JADMAでは、利用者から「飲み方が分からない」といった声が寄せられていることを背景に、適切な情報提供のあり方について意見。会員各社の大半は注意表示を行っていることを説明する一方、薬事法との関係から用法用量の説明ができないことなどを課題の一つに挙げた。
また、日健栄協も健食が食品に分類されることから摂取量などを説明できない状況にあることを説明した。
だが、田島眞委員(実践女子大学生活科学部教授)は、「食品はいくら食べても良いというのが基本。
用法用量を表示すべきでない」と指摘。これに対し、日健栄協では「いくら食べても良いと言われれば消費者は効くまで飲むが、それは適切な使い方ではない。一定の目安量は必要」と反論した。
また別の一幕では、下谷内冨士子委員(全国消費生活相談員協会)が、ヒアリング団体が健食を「飲む」と表現することについて「さきほどから"飲む"という表現を使われるが、健食はあくまで食品。表現に違和感があることを自覚してほしい」と、法律上、食品に分類されることに固執する場面もみられた。
消費者委の目的は、法律の枠組みに捉われることなく、消費者目線で適切な情報提供のあり方を探ることのはず。法律上の定義や、細かなニュアンスに固執することがさして重要なこととも思えない。
顧客の声を背景に"消費者視点"を意識した提案を行うJADMAや日健栄協に対し、既成の枠組みにこだわる消費者委。今会合で見られた意見交換は今後の審議の行方を不安視させるに十分なものだった。
JADMA・宮島会長の発言要旨
「表示」は消費者の権利、利用実態から課題読み解く
日本通信販売協会(JADMA)の宮島和美会長は利用実態や顧客の声など"消費者視点"に立ち、健康食品が抱える問題を読み解いた。発言の一部を抜粋する。
生活に根付く健食、約4割が利用
宮島会長はまず、自治体や調査会社が行った利用実態に関わる複数の調査データを報告。いずれも約4割近い消費者が日常的に利用している結果が得られていることを背景に、「消費者の生活に深く根ざしている」とした。
利用者の声から課題を分析
また、自らが会長を務めるファンケルの顧客データを基に、利用者の"リアル"な声を伝えることにも努めた。
ファンケルで日常的に健食を利用する顧客は約103万人(直近7カ月の購入者数)。月間約1万5000件の問い合わせを受けており、「商品説明」が約8割を占めるという。その中から「何に良いかはっきりと書いて欲しい」「飲み方が分からない」などの問い合わせを抜粋。消費者が抱える悩みの根幹を示した。
また、最近では「医薬品との相互作用」に関する相談が増加傾向にあることを指摘。ファンケルでは薬剤師や管理栄養士を配置した相談窓口でこれに対応できるシステムを導入しているとした。
疾病予防の可能性に言及
続いて健食の可能性と課題を説明。「薬事法上、予防という表現が認められていないことは承知しているが、敢えて使わせていただく」と前置きしつつ、疾病予防に役立つ可能性に言及。DHAや葉酸など一部の機能性成分は予防効果が科学的に実証されているとした。国内でも大手企業を中心に大学との共同研究などが行われているが、薬事法との絡みから情報提供できないことを課題に挙げた。
一方、問題点としては、誇大広告や医薬品成分を含む商品の流通、ねずみ講的な販売システムの跋扈を挙げ、「まじめな事業者が得るべき販売機会を失っている」と、懸念を示した。
今夏めどに「登録制」を導入
こうした市場環境下、JADMA会員企業の総売上高が通販市場の約7割をカバーすることを背景にした自主規制も紹介。
表示や安全性に関わるガイドライン運用に加え、今夏をめどに会員企業の扱う商品名や安全性のチェック体制等のデータベース化を進める「登録制」を導入するとした。
最後に、健食を巡る議論に必要な視点として米国のケネディ大統領が示した消費者の4つの権利(安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利)を挙げ、これに対応する(1)製品の品質の向上や研究の推進、(2)注意喚起や機能性表示、(3)相談窓口の充実に取り組む必要性を示した。
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第3回会合では医薬品にのみ認められる「用法用量」などの表示を巡り、消費者委とヒアリング団体の意見がぶつかった。
ヒアリングには、日本通信販売協会(JADMA)と日本健康・栄養食品協会(日健栄協)が参加。JADMAでは、利用者から「飲み方が分からない」といった声が寄せられていることを背景に、適切な情報提供のあり方について意見。会員各社の大半は注意表示を行っていることを説明する一方、薬事法との関係から用法用量の説明ができないことなどを課題の一つに挙げた。
また、日健栄協も健食が食品に分類されることから摂取量などを説明できない状況にあることを説明した。
だが、田島眞委員(実践女子大学生活科学部教授)は、「食品はいくら食べても良いというのが基本。
用法用量を表示すべきでない」と指摘。これに対し、日健栄協では「いくら食べても良いと言われれば消費者は効くまで飲むが、それは適切な使い方ではない。一定の目安量は必要」と反論した。
また別の一幕では、下谷内冨士子委員(全国消費生活相談員協会)が、ヒアリング団体が健食を「飲む」と表現することについて「さきほどから"飲む"という表現を使われるが、健食はあくまで食品。表現に違和感があることを自覚してほしい」と、法律上、食品に分類されることに固執する場面もみられた。
消費者委の目的は、法律の枠組みに捉われることなく、消費者目線で適切な情報提供のあり方を探ることのはず。法律上の定義や、細かなニュアンスに固執することがさして重要なこととも思えない。
顧客の声を背景に"消費者視点"を意識した提案を行うJADMAや日健栄協に対し、既成の枠組みにこだわる消費者委。今会合で見られた意見交換は今後の審議の行方を不安視させるに十分なものだった。
JADMA・宮島会長の発言要旨
「表示」は消費者の権利、利用実態から課題読み解く
日本通信販売協会(JADMA)の宮島和美会長は利用実態や顧客の声など"消費者視点"に立ち、健康食品が抱える問題を読み解いた。発言の一部を抜粋する。
生活に根付く健食、約4割が利用
宮島会長はまず、自治体や調査会社が行った利用実態に関わる複数の調査データを報告。いずれも約4割近い消費者が日常的に利用している結果が得られていることを背景に、「消費者の生活に深く根ざしている」とした。
利用者の声から課題を分析
また、自らが会長を務めるファンケルの顧客データを基に、利用者の"リアル"な声を伝えることにも努めた。
ファンケルで日常的に健食を利用する顧客は約103万人(直近7カ月の購入者数)。月間約1万5000件の問い合わせを受けており、「商品説明」が約8割を占めるという。その中から「何に良いかはっきりと書いて欲しい」「飲み方が分からない」などの問い合わせを抜粋。消費者が抱える悩みの根幹を示した。
また、最近では「医薬品との相互作用」に関する相談が増加傾向にあることを指摘。ファンケルでは薬剤師や管理栄養士を配置した相談窓口でこれに対応できるシステムを導入しているとした。
疾病予防の可能性に言及
続いて健食の可能性と課題を説明。「薬事法上、予防という表現が認められていないことは承知しているが、敢えて使わせていただく」と前置きしつつ、疾病予防に役立つ可能性に言及。DHAや葉酸など一部の機能性成分は予防効果が科学的に実証されているとした。国内でも大手企業を中心に大学との共同研究などが行われているが、薬事法との絡みから情報提供できないことを課題に挙げた。
一方、問題点としては、誇大広告や医薬品成分を含む商品の流通、ねずみ講的な販売システムの跋扈を挙げ、「まじめな事業者が得るべき販売機会を失っている」と、懸念を示した。
今夏めどに「登録制」を導入
こうした市場環境下、JADMA会員企業の総売上高が通販市場の約7割をカバーすることを背景にした自主規制も紹介。
表示や安全性に関わるガイドライン運用に加え、今夏をめどに会員企業の扱う商品名や安全性のチェック体制等のデータベース化を進める「登録制」を導入するとした。
最後に、健食を巡る議論に必要な視点として米国のケネディ大統領が示した消費者の4つの権利(安全である権利、知らされる権利、選択できる権利、意見を反映させる権利)を挙げ、これに対応する(1)製品の品質の向上や研究の推進、(2)注意喚起や機能性表示、(3)相談窓口の充実に取り組む必要性を示した。