「疲労回復」「元気」で訴求【大正製薬VSサントリーW ②「競合禁止規定」の中身】 大正製薬「商品イメージ考慮すべき」
大正製薬は、広告出演の競合禁止規定に反するとしてハットトリックを提訴した。法廷では、サントリーウエルネス(以下、サントリー)、主力の「セサミンEX」が競合にあたるかが争われた。
大正製薬は16年、三浦知良選手の広告出演に関する契約を電通と結ぶ。20年8月、代理店を博報堂に変更。電通契約をベースに、「大正製薬と博報堂」「博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリック等」との間で契約が交わされた。契約を通じて、20年10月に発売した新商品「リポビタンDX」の広告に出演させる権利、競合他社の広告に出演させない権利があると主張。ハットトリックがこれを認識しつつ、新商品の広告出演を拒否し、競合他社の広告に出演させたことが不法行為にあたると提訴した。
◇
契約の範囲は、「リポビタンシリーズのためのテレビ、ラジオ等の広告全般」。競合する第三者の広告への出演禁止に関する条項(一部抜粋して要約)は、(1)リポビタンシリーズと同種・類似の商品(エナジードリンク、ゼリー飲料、ショットドリンクを含む)を対象とした第三者の広告宣伝、(2)主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝、(3)機能性飲料、トクホ、機能性表示食品に該当する飲料、その他の保健効果効能、身体防衛機能、老化抑制機能等の体調を整える効果効能をうたう清涼飲料を対象にした第三者の広告宣伝――などを定める。同様の契約を博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリックも結ぶ。法廷では、新商品の広告出演拒否が契約違反となるかが争点の一つになった。
大正製薬は、広告出演の権利について、シリーズは飲料やゼリー飲料等があり、固形の錠剤(健康食品)を除く条件はないため、栄養ドリンクに限定されるものではないと主張。栄養ドリンクは同様の効果を持つ錠剤がシリーズで販売されるのが一般的なため「商品イメージ」を重要な要素として考慮すべきとした。リポビタンDXは、リポビタンDと同様「疲労回復」、「元気」のイメージで訴求するため、シリーズの一つと訴えた。
ハットトリックはシリーズは飲料のみで、錠剤が含まれるとは解釈されないと主張。「健康食品」が含まれないとの理解を前提に明記が検討されたが、記載されなかった交渉経緯があるとした。
◇
もう一つの争点は、サントリー商品の広告出演が競合禁止規定に反するかについて。サントリーは、20年11月23日~21年5月19日に「セサミンEX」、今年4月15日~6月11日に「グルコサミンアクティブ」のCMに三浦選手を起用した。
大正製薬は、シリーズに「リポビタンDX」(錠剤)が含まれることを前提に、「セサミンEXも同様(疲労回復、予防等)の効果を持つ錠剤であるため同種・類似の商品」と主張。「エナジードリンク等」はあくまで例示に過ぎず、契約の趣旨からすれば、「商品イメージと同一・類似かによって判断すべきであり、飲料か錠剤ないし健食という基準で判断すべきではない」とする。
(2)の規定の「医薬品・医薬部外品」との記載も「健食の違いは効果をうたえるかに過ぎない。商品イメージに差はない。医薬品、医薬部外品に限定する意味合いで記載されたのではない」と主張。対象は、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費を考慮して広く解釈されるべき」とした。このためサントリーは同種、類似の商品を製造販売する事業者とする。
ハットトリックは、新商品は契約が拘束する”シリーズ”に含まれず、「エナジードリンク」等の記載を踏まえると対象は飲料に限定され、錠剤、健食は除外されるとした。また、「シリーズの印象、イメージと同一、類似かなど主観的で広範すぎる基準で判断すべきではない」などと指摘した。(つづく)
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大正製薬は16年、三浦知良選手の広告出演に関する契約を電通と結ぶ。20年8月、代理店を博報堂に変更。電通契約をベースに、「大正製薬と博報堂」「博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリック等」との間で契約が交わされた。契約を通じて、20年10月に発売した新商品「リポビタンDX」の広告に出演させる権利、競合他社の広告に出演させない権利があると主張。ハットトリックがこれを認識しつつ、新商品の広告出演を拒否し、競合他社の広告に出演させたことが不法行為にあたると提訴した。
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契約の範囲は、「リポビタンシリーズのためのテレビ、ラジオ等の広告全般」。競合する第三者の広告への出演禁止に関する条項(一部抜粋して要約)は、(1)リポビタンシリーズと同種・類似の商品(エナジードリンク、ゼリー飲料、ショットドリンクを含む)を対象とした第三者の広告宣伝、(2)主力商品(医薬品、医薬部外品)と同種・類似の商品を主として製造販売する第三者の広告宣伝、(3)機能性飲料、トクホ、機能性表示食品に該当する飲料、その他の保健効果効能、身体防衛機能、老化抑制機能等の体調を整える効果効能をうたう清涼飲料を対象にした第三者の広告宣伝――などを定める。同様の契約を博報堂キャスティング&エンタテインメントとハットトリックも結ぶ。法廷では、新商品の広告出演拒否が契約違反となるかが争点の一つになった。
大正製薬は、広告出演の権利について、シリーズは飲料やゼリー飲料等があり、固形の錠剤(健康食品)を除く条件はないため、栄養ドリンクに限定されるものではないと主張。栄養ドリンクは同様の効果を持つ錠剤がシリーズで販売されるのが一般的なため「商品イメージ」を重要な要素として考慮すべきとした。リポビタンDXは、リポビタンDと同様「疲労回復」、「元気」のイメージで訴求するため、シリーズの一つと訴えた。
ハットトリックはシリーズは飲料のみで、錠剤が含まれるとは解釈されないと主張。「健康食品」が含まれないとの理解を前提に明記が検討されたが、記載されなかった交渉経緯があるとした。
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もう一つの争点は、サントリー商品の広告出演が競合禁止規定に反するかについて。サントリーは、20年11月23日~21年5月19日に「セサミンEX」、今年4月15日~6月11日に「グルコサミンアクティブ」のCMに三浦選手を起用した。
大正製薬は、シリーズに「リポビタンDX」(錠剤)が含まれることを前提に、「セサミンEXも同様(疲労回復、予防等)の効果を持つ錠剤であるため同種・類似の商品」と主張。「エナジードリンク等」はあくまで例示に過ぎず、契約の趣旨からすれば、「商品イメージと同一・類似かによって判断すべきであり、飲料か錠剤ないし健食という基準で判断すべきではない」とする。
(2)の規定の「医薬品・医薬部外品」との記載も「健食の違いは効果をうたえるかに過ぎない。商品イメージに差はない。医薬品、医薬部外品に限定する意味合いで記載されたのではない」と主張。対象は、「商品イメージ、売上構成比、市場シェア、広告宣伝費を考慮して広く解釈されるべき」とした。このためサントリーは同種、類似の商品を製造販売する事業者とする。
ハットトリックは、新商品は契約が拘束する”シリーズ”に含まれず、「エナジードリンク」等の記載を踏まえると対象は飲料に限定され、錠剤、健食は除外されるとした。また、「シリーズの印象、イメージと同一、類似かなど主観的で広範すぎる基準で判断すべきではない」などと指摘した。(つづく)