前号に引き続き、事業者向けオフィス用品通販事業を展開するカウネットの宮澤典友氏に現状と今後について聞いた。
◇
データ活用を当たり前に
――テクノロジーの活用はどうか。
「現状、テクノロジーの活用度合いについては正直、競合他社に追いついていない。カウネットを含めたコクヨグループはこれまで様々、素敵な製品を世に生み出していった非常にクリエイティビティの高い企業で発想力はすごく高いが、ECに関しては発想力だけでなく、テクノロジーをしっかりと活用しなければ成長できない。
カウネットはデータやAIの活用などテクノロジーの利用度はこれまで非常に低い状態だった。例えばウェブサイトのUI・UXについても担当者が思う見やすさや理解しやすさなどで感覚的に作ってきた。しかし、それはお客様の使いやすさではない。UI・UXを考える際、お客様はいつも何をよく使っているのか、そうした利用頻度の高いものをより使いやすい場所に配置していこうなどお客様の行動データを分析して改善していくべきだ。まずはしっかりとデータの活用を当たり前とした形に切り替えていきたい。
データを活用するための仕組みはすでにカウネットにもいくつか導入しており、あとはそれを十分に活用するための下地作りが必要だ。
経験者の採用も必要だが、社内でスキルを磨いてきた人材や興味を持っている人材もいるため、そういった人達を組み合わせて、データを活用できる人材の確保、育成を進めつつ、そうしたスキルを拡充できる社員向け育成プログラムの実施も今夏から始めようと思っている。育成プログラムはカウネットにとどまらず、コクヨのグループ全体にも広げていく。
このほか、インターネットでの新規顧客獲得についても十分にできていなかったと思う。例えば、サーチエンジン対策や検索連動型広告などの施策についてもあまり積極的ではなかった。こうした部分は積極的にやっていきたい。今年の1年間はネット上やデータを活用してすぐに改善できるような施策などをどんどんとやっていこうと考えている。
データ活用は商品開発にもより活かしていこうと思っている。カウネットの最大の強みはコクヨグループでモノを考えられることだ。コクヨはトップメーカーであり、商品の企画開発力が強みだ。そのコクヨときちんと連携していくこができれば非常にできることは多い。
かつては既存流通網への配慮か連携しにくかった部分もあったかと思うが、それから時代は随分、変わってきている。盤石なビジネスであった卸事業は年々減り続けており、ECは逆に年々成長し続けている。卸事業の減少を抑え、ECをさらに拡大させるために両方をうまく連携させてトータルで成長させていく必要があると考え、それを実現するために先ほどお話したように卸事業とカウネット事業を一体で進めていこうという方向に舵を切ったので、今後は例えばカウネットが持つ売れ筋の傾向や商品のニーズなどお客様の行動データやレビューなどを活かして、PB商品を開発するだけでなく、コクヨのNB商品の開発にも積極的に活用していくことなども進めていきたい」
事業開始当初の原点に立ち返る
――カウネットの中長期的な方向性は。
「モノ売りをどんどんスケールアップしたり、モノからコトへとシフトしていくというようなことを進めても、あまり面白くない。それよりも、サービスをスタートした当時の目的に立ち返って、それを突き詰めるべきだと思っている。
カウネットでは中小企業向けのオフィス用品通販『カウネット』や主に大企業向けに間接材・消耗材購買を一元化できる購買システム『べんりねっと』などを展開しているが、それらがそもそもお客様や社会のどんな課題を解決するために事業化したのかと考えると、それは『働く人達に無駄な時間を使わせないこと』が根底にあったのだと思う。オフィスや工場などの仕事場で必要なものがすべてそろっていて、商品も探しやすく選びやすくなっており、わざわざお店に買いに行く必要がない。働く人にとってより効率的に時間を使うことができるようにすると。そのために当社のサービスはあり、それを突き詰めていくべきだ。お客様がいかに早く欲しい商品にたどり着けるか。または、仮にカウネットに欲しい商品がないならば『ないこと』がすぐ分かるようにして、お客様が他のところに探しに行けるようにする。
商品開発についても同様で、『お客様の仕事の効率をどれだけ上げられるか』ということが我々の向かうべき道ではないか。仕事をより効率的にして頂くためのツールであることを意識して、単に物販サービスとしてだけでなく、よりサービス、商品を磨いていきたい」
――直近決算(2022年12月期)の売上高は前年比4・3%増の689億6600万円、営業利益は同30・2%増の28億9100万円だった。今後の業績計画は。
「具体的な数字は言えないが、BtoBの通販・EC市場の各プレイヤーはきちんと利益を確保しながら成長できており、まだまだ成長できる市場だ。BtoBはようやくモノの買い方がリアルからECへとスイッチが始まったところでこれからどんどんシフトしてくるだろう。それはオフィス用品だけでなく、仕事で使う商品・サービス全般だ。
我々としてはトータルでお客様の仕事の効率を高めるためのお手伝いができればよく、ニーズ次第で自社による物販サービスにこだわることなく、『べんりねっと』で行なっているように、『カウネット』でも他の法人向け購買サービスと連携して、当該購買サービスの中の一機能としてオフィス用品の物販機能を提供するようなことも積極的に進めているのでこれまでとはスケールの異なる成長をしていけると思う。
仕事の効率化のためのツールとして、お客様にとって便利になるような商品やサービスをコクヨと連携しながら提供していきたい」(おわり)
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データ活用を当たり前に
――テクノロジーの活用はどうか。
「現状、テクノロジーの活用度合いについては正直、競合他社に追いついていない。カウネットを含めたコクヨグループはこれまで様々、素敵な製品を世に生み出していった非常にクリエイティビティの高い企業で発想力はすごく高いが、ECに関しては発想力だけでなく、テクノロジーをしっかりと活用しなければ成長できない。
カウネットはデータやAIの活用などテクノロジーの利用度はこれまで非常に低い状態だった。例えばウェブサイトのUI・UXについても担当者が思う見やすさや理解しやすさなどで感覚的に作ってきた。しかし、それはお客様の使いやすさではない。UI・UXを考える際、お客様はいつも何をよく使っているのか、そうした利用頻度の高いものをより使いやすい場所に配置していこうなどお客様の行動データを分析して改善していくべきだ。まずはしっかりとデータの活用を当たり前とした形に切り替えていきたい。
データを活用するための仕組みはすでにカウネットにもいくつか導入しており、あとはそれを十分に活用するための下地作りが必要だ。
経験者の採用も必要だが、社内でスキルを磨いてきた人材や興味を持っている人材もいるため、そういった人達を組み合わせて、データを活用できる人材の確保、育成を進めつつ、そうしたスキルを拡充できる社員向け育成プログラムの実施も今夏から始めようと思っている。育成プログラムはカウネットにとどまらず、コクヨのグループ全体にも広げていく。
このほか、インターネットでの新規顧客獲得についても十分にできていなかったと思う。例えば、サーチエンジン対策や検索連動型広告などの施策についてもあまり積極的ではなかった。こうした部分は積極的にやっていきたい。今年の1年間はネット上やデータを活用してすぐに改善できるような施策などをどんどんとやっていこうと考えている。
データ活用は商品開発にもより活かしていこうと思っている。カウネットの最大の強みはコクヨグループでモノを考えられることだ。コクヨはトップメーカーであり、商品の企画開発力が強みだ。そのコクヨときちんと連携していくこができれば非常にできることは多い。
かつては既存流通網への配慮か連携しにくかった部分もあったかと思うが、それから時代は随分、変わってきている。盤石なビジネスであった卸事業は年々減り続けており、ECは逆に年々成長し続けている。卸事業の減少を抑え、ECをさらに拡大させるために両方をうまく連携させてトータルで成長させていく必要があると考え、それを実現するために先ほどお話したように卸事業とカウネット事業を一体で進めていこうという方向に舵を切ったので、今後は例えばカウネットが持つ売れ筋の傾向や商品のニーズなどお客様の行動データやレビューなどを活かして、PB商品を開発するだけでなく、コクヨのNB商品の開発にも積極的に活用していくことなども進めていきたい」
事業開始当初の原点に立ち返る
――カウネットの中長期的な方向性は。
「モノ売りをどんどんスケールアップしたり、モノからコトへとシフトしていくというようなことを進めても、あまり面白くない。それよりも、サービスをスタートした当時の目的に立ち返って、それを突き詰めるべきだと思っている。
カウネットでは中小企業向けのオフィス用品通販『カウネット』や主に大企業向けに間接材・消耗材購買を一元化できる購買システム『べんりねっと』などを展開しているが、それらがそもそもお客様や社会のどんな課題を解決するために事業化したのかと考えると、それは『働く人達に無駄な時間を使わせないこと』が根底にあったのだと思う。オフィスや工場などの仕事場で必要なものがすべてそろっていて、商品も探しやすく選びやすくなっており、わざわざお店に買いに行く必要がない。働く人にとってより効率的に時間を使うことができるようにすると。そのために当社のサービスはあり、それを突き詰めていくべきだ。お客様がいかに早く欲しい商品にたどり着けるか。または、仮にカウネットに欲しい商品がないならば『ないこと』がすぐ分かるようにして、お客様が他のところに探しに行けるようにする。
商品開発についても同様で、『お客様の仕事の効率をどれだけ上げられるか』ということが我々の向かうべき道ではないか。仕事をより効率的にして頂くためのツールであることを意識して、単に物販サービスとしてだけでなく、よりサービス、商品を磨いていきたい」
――直近決算(2022年12月期)の売上高は前年比4・3%増の689億6600万円、営業利益は同30・2%増の28億9100万円だった。今後の業績計画は。
「具体的な数字は言えないが、BtoBの通販・EC市場の各プレイヤーはきちんと利益を確保しながら成長できており、まだまだ成長できる市場だ。BtoBはようやくモノの買い方がリアルからECへとスイッチが始まったところでこれからどんどんシフトしてくるだろう。それはオフィス用品だけでなく、仕事で使う商品・サービス全般だ。
我々としてはトータルでお客様の仕事の効率を高めるためのお手伝いができればよく、ニーズ次第で自社による物販サービスにこだわることなく、『べんりねっと』で行なっているように、『カウネット』でも他の法人向け購買サービスと連携して、当該購買サービスの中の一機能としてオフィス用品の物販機能を提供するようなことも積極的に進めているのでこれまでとはスケールの異なる成長をしていけると思う。
仕事の効率化のためのツールとして、お客様にとって便利になるような商品やサービスをコクヨと連携しながら提供していきたい」(おわり)