前号に引き続き、東日本旅客鉄道(=JR東日本)では仮想モール「JRE MALL」が拡大を続けている。コロナ禍で鉄道事業を巡る環境が変化を見せる中、EC事業での手応えや今後の目標について、運営担当の寺迫浩司氏(
写真(左))、百瀬祐二氏の両マネージャーに聞いた。
◇
――販促について。
百瀬「ウェブでの販促設計に関しては、以前はリターゲティング広告などが上手く回っていなかった面もあり、2022年8月に千趣会からのノウハウも提供できる専任部隊として『デジタルメディアチーム』を作って本格的に取り組み始めた。ちょうど、ふるさと納税のピークが10月~12月だったので、ここでリターゲティング広告が効率的に運用できたことで、前年よりも獲得セッション・コンバージョンが取れた。広告内容のクリエイティブや出すタイミングなども含めて、自社で運用・管理を徹底できるようになったことは大きいと思う」
寺迫「関連して22年6月には組織改正も行った。駅ビルやECなどを行うチームの『事業創造本部』に、旅行業や商品企画、ITなどのチームがすべて一緒になって『マーケティング本部』という1つの組織になった。先ほどのウェブ広告の話もそうだが、電車内での広告の出し方などについても、同じ1つのチームの中でコミュニケーションを図って行えるようになったことが好影響している」
――ポイント会員外からの新規顧客は増えているか。
百瀬「最終的にはポイント会員になっていただくのがグループの目標であり、モールを利用するために会員になろうという人は徐々に増えている。まだまだ、スピードは足りないとは思うが、それでも10万人単位で伸びている」
25年に取扱額を1300億円へ
――今後の施策や目標について。
寺迫「25年にモールの取扱額として1300億円を目指していることに変わりはない。まだ、モールとしてはカテゴリーが完全に充足できているわけではないため、例えば、スポーツ・アウトドア系、Bookなどのカテゴリーを充実させていくことがある。あとはふるさと納税も、今大きく伸ばしていきたいところ。従来だと肉や魚のような商品があるが、当社らしく鉄道を利用した独自の返礼品も提供したいと思う。例えば、新幹線と宿泊のセットであったり、観光列車を絡めた返礼品などは研究していきたいところ」
――ライブコマースなど、新しいEC関連ツールへの興味は。
寺迫「興味はなくもないが、現行のシステム的な限界も色々あるため、今後システムをどう見直していくのかを含めて考えていくところかなとは思う」
――最近になってJR東日本では金融サービスへの参入など、鉄道事業以外での動きも活発化しているが、その中でEC事業の位置付けとは。
寺迫「1つはJREポイント経済圏をしっかり確立していきたいということ。その中で、ポイントを使うこともできて貯めることもできることがモールの大きな特徴になる。鉄道に乗って貯められるようにもなっているので、そうしたものの魅力を高めていく1つのツールとして機能させていくことが大事。
また、提供するカテゴリーが広がっていけば様々なライフスタイルのシーンで使ってもらえることになるので、比較的若い層から年配の顧客まで幅広い層にリーチできる。そうしたところを強化していくことでグループ内のECとして確立していきたい」
――23年のEC市場の展望について。
寺迫「我々は鉄道の会社であり、鉄道利用自体はやはりコロナ禍において回復途上にある。リアルでの移動やショッピングなどは回復しつつあるが、とは言え、コロナ前にすべて戻るかというとそうではない。例えば、在宅勤務が増えたりするなど人々の働き方やライフスタイルも変わっていっている。その中でECや通販はしっかりと伸びているカテゴリーだと思うので、そこの部分は我々はまだまだチャレンジャーの立ち位置であり、拡大できる余地があるので、積極的に成長させていきたいと考えている。
鉄道というメインの事業がありながらも、駅ビルやエキナカ、ホテルなども含めた大きな企業グループであり、そのリアルの強みをどうやってネットでも活かしていくかが我々のチャレンジになるかと思う。その中で利用してもらうためにはどういった形で価値を届けられるかが重要になるだろう。独自性やオリジナリティのある商品をしっかりと企画していけるか、また、UI・UXも含めた使い勝手の良さなどは継続的に改善していく必要がある」(
おわり)
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――販促について。
百瀬「ウェブでの販促設計に関しては、以前はリターゲティング広告などが上手く回っていなかった面もあり、2022年8月に千趣会からのノウハウも提供できる専任部隊として『デジタルメディアチーム』を作って本格的に取り組み始めた。ちょうど、ふるさと納税のピークが10月~12月だったので、ここでリターゲティング広告が効率的に運用できたことで、前年よりも獲得セッション・コンバージョンが取れた。広告内容のクリエイティブや出すタイミングなども含めて、自社で運用・管理を徹底できるようになったことは大きいと思う」
寺迫「関連して22年6月には組織改正も行った。駅ビルやECなどを行うチームの『事業創造本部』に、旅行業や商品企画、ITなどのチームがすべて一緒になって『マーケティング本部』という1つの組織になった。先ほどのウェブ広告の話もそうだが、電車内での広告の出し方などについても、同じ1つのチームの中でコミュニケーションを図って行えるようになったことが好影響している」
――ポイント会員外からの新規顧客は増えているか。
百瀬「最終的にはポイント会員になっていただくのがグループの目標であり、モールを利用するために会員になろうという人は徐々に増えている。まだまだ、スピードは足りないとは思うが、それでも10万人単位で伸びている」
25年に取扱額を1300億円へ
――今後の施策や目標について。
寺迫「25年にモールの取扱額として1300億円を目指していることに変わりはない。まだ、モールとしてはカテゴリーが完全に充足できているわけではないため、例えば、スポーツ・アウトドア系、Bookなどのカテゴリーを充実させていくことがある。あとはふるさと納税も、今大きく伸ばしていきたいところ。従来だと肉や魚のような商品があるが、当社らしく鉄道を利用した独自の返礼品も提供したいと思う。例えば、新幹線と宿泊のセットであったり、観光列車を絡めた返礼品などは研究していきたいところ」
――ライブコマースなど、新しいEC関連ツールへの興味は。
寺迫「興味はなくもないが、現行のシステム的な限界も色々あるため、今後システムをどう見直していくのかを含めて考えていくところかなとは思う」
――最近になってJR東日本では金融サービスへの参入など、鉄道事業以外での動きも活発化しているが、その中でEC事業の位置付けとは。
寺迫「1つはJREポイント経済圏をしっかり確立していきたいということ。その中で、ポイントを使うこともできて貯めることもできることがモールの大きな特徴になる。鉄道に乗って貯められるようにもなっているので、そうしたものの魅力を高めていく1つのツールとして機能させていくことが大事。
また、提供するカテゴリーが広がっていけば様々なライフスタイルのシーンで使ってもらえることになるので、比較的若い層から年配の顧客まで幅広い層にリーチできる。そうしたところを強化していくことでグループ内のECとして確立していきたい」
――23年のEC市場の展望について。
寺迫「我々は鉄道の会社であり、鉄道利用自体はやはりコロナ禍において回復途上にある。リアルでの移動やショッピングなどは回復しつつあるが、とは言え、コロナ前にすべて戻るかというとそうではない。例えば、在宅勤務が増えたりするなど人々の働き方やライフスタイルも変わっていっている。その中でECや通販はしっかりと伸びているカテゴリーだと思うので、そこの部分は我々はまだまだチャレンジャーの立ち位置であり、拡大できる余地があるので、積極的に成長させていきたいと考えている。
鉄道というメインの事業がありながらも、駅ビルやエキナカ、ホテルなども含めた大きな企業グループであり、そのリアルの強みをどうやってネットでも活かしていくかが我々のチャレンジになるかと思う。その中で利用してもらうためにはどういった形で価値を届けられるかが重要になるだろう。独自性やオリジナリティのある商品をしっかりと企画していけるか、また、UI・UXも含めた使い勝手の良さなどは継続的に改善していく必要がある」(おわり)