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伊勢丹(本社・東京都新宿区、大西洋社長)は、ファッションアイテムのネット販売で"量"を売る戦略にチャレンジしている。従来から、新宿店の店頭商材を通販サイト「アイオンライン」で販売しているが、取扱商品は限定的で、しかもネット販売専用の在庫を持たないため、中長期的な成長戦略を描くのには限界があった。
そこで、09年9月に新宿店メンズ館と同じ商品を扱う「イセタンメンズオンラインショップ(以下、イセタンメンズ)」を開設。「アイオンライン」がハウスカード会員を対象に尖ったファッションアイテムを販売するのに対し、「イセタンメンズ」では新規ネットユーザーの囲い込みを目指してナショナルブランドの商品も扱い、ネット販売用の在庫を持つことになった。
量を売る戦略に舵を切ったことで、繁雑化するバックヤード業務について、「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイの子会社に委託。これは、スタートトゥデイがネット販売専業のシステム構築で実績を持つことや、同社会員の半数が男性のため、「ゾゾタウン」で買い物をするファッション好きのネットユーザーを取り込めると判断したからだ。
実際に、「イセタンメンズ」会員の約半数が新規のネットユーザーだ。また、スタートトゥデイのフルフィル対応力により、商品配送は「アイオンライン」の最短5日から、「イセタンメンズ」は同3日で届くようになった。
一方、量を売るために、削ぎ落としたサービスもある。例えば、「アイオンライン」や店頭では衣服をハンガーにかけたまま届けるサービスがあるが、「イセタンメンズ」では提供できないほか、ギフト包装も受け付けないなど、"早さ"を優先したネット販売を推進する。
伊勢丹では、当面はメンズ館の取り扱いブランド、商品数の30%をネット販売でカバーする方針だが、現状は店頭商材の10%程度を扱うのにとどまっている。というのも、ハイエンドブランドが他のアパレルの動向を気にして出店や商品投入の拡大に消極的だからだ。
しかし、顧客の購買行動を分析すると、デザイナーズブランドなどハイエンド商品の購入者に新規のネットユーザーが多いため、同分野の拡充は新規客獲得に向けた生命線と言えそうだ。
このため、今秋冬シーズンにも「イセタンメンズ」をリニューアルし、ハイエンド商品を前面に出すなど、新規客を意識したサイトの作り込みを行う考え。また、「アイオンライン」では一部のブランドでトライアルしているツイッターなど、SNSの活用も検討する。
「イセタンメンズ」を開設して1年が経過し、売り上げは初年度の計画を上回ったものの、会員数は目標に届いていないという。
伊勢丹が量を売る戦略でメンズ館を選んだのは、レディースに比べて規模が小さくテストしやすいからだ。「イセタンメンズ」が軌道に乗れば宿店本館の婦人服も視野にあるだけに、品ぞろえを充実させて結果を出したいところだ。(つづく)