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TV広告枠をオークション販売、放送局と広告主をつなぐ

2020年10月15日 13:30

 「”通販枠”を1枠から手軽にカンタンに購入できます」。テレビ局が販売するCM枠や通販枠をテレビ通販実施企業ら広告主が直接、購入できるオンラインサービス「TEMPRA(テンプラ)テレビ広告マッチングシステム」が始動した。各放送局が販売したい広告枠を出品。広告主は放送エリアや番組などから希望の枠を検索した上で、オークション形式で放送枠を購入できる仕組み。

 テレビ局にとって広告主のつかなかった広告枠、いわゆる「空き枠」は、広告収入につながらない番宣番組などを放送せざるを得なかったが、同仕組みを介して直接、広告枠の販売先を広告主に広げることで広告枠の販売価格の適正化や販売ロスの低減が図れる。一方で通販事業者ら広告主側では入札方式で広告枠を購入し、欲しいタイミングで1本から効率的にインフォマーシャルを放映できる利点があるようだ。

 すでにキー局系列の地方局や独立UHF局など二十数局が参加、広告枠を出品し始めるなど試用期間をスタート。来春にも本格稼働を開始する予定という。

 通販事業者ら広告主や広告会社がテレビ局の広告枠を専用サイト上で入札、購入できるサービス「TEMPRAテレビ広告マッチングシステム」は地方局で長年にわたって広告枠の販売業務などを手掛けていた井上次郎氏と馬場孝輔氏が独立して今春から起業した広告代理業務などを行なうWAKUWorks(=ワクワークス)が開発、運用している。同システムは特許出願中。

 広告枠を販売したいテレビ局とインフォマーシャルやテレビCMを出稿したい広告主や広告会社とをマッチング。オークション形式で広告枠の売買を行える仕組み(上表参照)だ。

 放送局が販売したい広告枠を出品。15秒、30秒、60秒のCM尺やインフォマーシャルにも使用できる90秒や120秒の短尺枠、15分や29分などの長尺枠も扱う。それぞれの広告枠には最低入札価格となる「最低価格」と当該価格で入札した場合にすぐ落札となる「即決価格」を設定している。

 テレビ通販実施企業などを含む広告主は出品されている広告枠の中から当該枠が放送される地域や例えば「時代劇」など番組のジャンル別などから検索して希望枠に対して、500円単位で入札し、最高値を付けた場合、または即決価格で入札した場合に購入できるもの。落札後はテレビ局側の承認を得て各種手続きを行った後に、出稿となる流れ。広告枠のバイイングのみでも利用可能だが、出稿経験のない企業向けなどに映像制作やCM進行表、考査手続きの代行なども行い、広告枠の活用を支援する。

 前職での経験からテレビ局の事情に精通した井上氏によると特に地方局は「空き枠」をいかに減らし、収益に結び付けるかが課題だという。この課題をクリアにするため、「TEMPRAテレビ広告マッチングシステム」では広告枠価格をオークション形式で決定。テレビ局側にとっては需要と供給に見合った単価(ダイナミックプライシング)で広告枠の販売が可能となる。この場合、空き枠の出品時の値付けについても割安な価格設定もあり得るという。また、広告枠の販売先を広告主に直接、リーチできるようになることで販路が広がるというメリットもある。

 一方で広告主や広告会社にとってはこれまでは購入できなかった費用対効果の高い”掘り出し物の枠”を獲得できるかもしれない利点などもあるようだ。

 「TEMPRAテレビ広告マッチングシステム」で成約した広告枠販売の取引額の20%程度を手数料としてテレビ局から徴収する。なお、システム使用料(月額)は広告主からは徴収しない。

 「TEMPRAテレビ広告マッチングシステム」は今夏から始動。11月からは実際にテレビ局が広告枠を出品して実際に広告主がオークション形式で購入するテスト運用を開始する。現状、出品に参加するテレビ局は地方局やU局など21局で今後も参加局を増やしていく考え。広告主や広告会社も複数のテレビ通販事業者などの利用を見込んでいるという。

 テレビ局の広告枠を広告主に販売する仕組みはほかにもあるが、空き枠の問題がより深刻な地方局では導入していないところの方が多かったよう。地方局の悩みを熟知し、それらに配慮した設計とした「TEMPRAテレビ広告マッチングシステム」を活用したいテレビ局は今後、増えそうだ。一方で通販事業者にとっては地方の費用対効果の高い優れた通販枠を獲得できるチャンスにつながりそうだ。(詳しい問い合わせはinfo@wakuworks.co.jpまで)

 
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