企業の「健康経営」に対する意識の高まりを受け、健康食品を扱う通販大手の法人向け事業が活性化している。ファンケルは、総合サプリメント企業としての強みを活かし展開。ディーエイチシーやわかさ生活は、「ダイエット」や「アイケア」などノウハウを持つ分野を強みに展開している。
従業員の健康に配慮した職場環境を整える「健康経営」は、生産性向上や、優秀な人材の確保といった観点からも注目されている。
ファンケルは、管理栄養士など有資格者が月額1万円ほどの負担で健康づくりに関する個別指導を行う「健康増進プログラム」を展開する。昨年から事業を本格化。今年4月、組織再編の中で新たに「法人営業部」を設置し強化している。
「健康増進プログラム」では、総合サプリメント企業としての強みを活かし、自社商品も提供する。商品の購入代金の15%をファンケル側で負担。割引価格による提供で導入が進み「感触の良さを感じている」(池森賢二会長、今年5月の決算説明会で)としており、すでに数十社が導入・検討を進めている。中には購入代金の85%を自社で負担。従業員に無料で提供するなど福利厚生の観点から特色にする企業も現れ始めているという。
ディーエイシーはダイエットコンテスト「DHCダイエットアワード」などで培ったノウハウを背景に、15年に法人向け「DHCメタボ脱出減量プログラム」を開始。15社への先行導入を経て、昨年、事業を本格化した。
在籍する医師10人を含む薬剤師、管理栄養士など有資格者30人(昨年3月時点)が個別に減量をサポート。ダイエット関連の遺伝子検査キットを使い、体質に合った減量プランを提案する。主力の置き換え食「DHCプロティンダイエット」を割引価格で提供するほか、日々の体重や体脂肪率、食事内容を管理する。
昨年7月には、医療機関に通院中の患者にまで対象を広げ、「DHC患者様減量サポートプログラム」も開始。医療機関の案内を受けて患者から申し込みを受ける形で、「フォーミュラー食(DHCプロティンダイエット)」の提供や減量サポートを行い、医療機関で指示される食事療法を補完する。
わかさ生活は、昨年末から企業・団体向けに「出張健康セミナー」を開始。すでに十数社が利用しており、1社で複数回に渡り利用する企業もある。
「出張健康セミナー」は、企業の規模を問わず1回から受講できる手軽さが売り。現在、コールセンター部門を含め管理栄養士など有資格者が104人在籍(今年4月時点)しており、企業の実情に合わせて開催回数やテーマを決める。
例えば、健康診断結果に基づく指導を求める企業にはメタボリックシンドローム対策を、内勤業務が多くパソコンなど事務作業が多い企業には目の健康講座を行う。セミナーを通じ、自社で提供する遺伝子検査キットやサプリメントを紹介する機会にもつなげている。
通販企業以外でも健康サービスに取り組む企業は現れている。
サントリー食品インターナショナルは、メタボ該当者や予備軍の割合が08年から6年連続で全国ワースト2位となり、県民活動として健康への取り組みを推進する宮城県を皮切りに、トクホ飲料「サントリー伊右衛門 特茶」を使った「特茶健康プログラム」を開始。今年5月、県内企業の人事・総務担当者約120人を集め説明会を行った。8週間に渡る特茶の提供に加え、日常的な運動習慣のちょっとした変化やクックパッド監修による食事の見直しのアドバイスなど、手軽に始められる点を強みにする。オフィス内のサントリー対象自動販売機とアプリケーションを連携させ、飲料を購入したり、歩数でポイントが得られる健康支援サービス「GREEN+(グリーンプラス)」も展開している。