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昨年12月にスタートした、ゾゾの負担で常時10%割引を行う有料会員サービスは、事前に十分な説明がなかったこともあり、常時割引を嫌う一部のブランドが「ゾゾタウン」から退店したほか、同サービスの入会者数が想定を下回って推移していることを理由に4月25日付で新規入会受け付けを中止し、5月30日にサービスを終了することになった。4月下旬に開かれたゾゾの決算説明会では、アリガトー割引を理由にゾゾの物流拠点から在庫を引き上げて完全に退店したショップは21ショップで、さらに14ショップが販売停止を継続中で、7ショップは販売を再開したという説明があった。ただ、出店ブランドの中にも「ゾゾタウン」向けの展開商品を絞ったり、アウトレット的に活用する方針を打ち出す企業が出てくるなど、退店や販売中止のショップ数だけにとどまらない影響も懸念されていた。
有料会員サービスは終了することになったが、大手アパレルの中には「一度崩れた信頼関係は簡単には戻らない」や、「自社EC強化の流れは変わらない」と話す企業もあり、完全収束とは言えない状況だ。同サービスを巡る騒動では多くのブランドがリスク分散の必要性を感じたはずで、大手を中心に自社EC強化に向けて投資も積極化している時期だけに、ECチャネルについては中長期的に”ゾゾ依存”からの脱却を図るブランドが増えてくることは想像に難くない。足もとでは、右肩上がりだった「ゾゾタウン」のショップ数が減少に転じた。アパレル側のブランド終了や、売り上げ不振による退店などの影響はあるものの、ショップ数の拡大は成長の原動力のひとつであることは確かだ。
以前のゾゾは、費用対効果の面から長続きはしなかったものの、定価商品の販売比率を高める目的で予約商品専門の月刊誌「ゾゾカタログ」を発刊したり、幕張メッセで予約アイテムの先行受注会イベントを開催するなど、価格以外の価値を前面に打ち出した施策にも積極的だった。服をネットで買う消費者が増える中、ファッションECモールとしてさらにパイをとりにいく戦略は理解できるが、有店舗アパレルは利益率の改善に向け定価販売比率の改善に注力する傾向が強まっているだけに、”どこよりもお得なゾゾタウン”を打ち出すのは反感を買いかねない。
ゾゾは有料会員サービスの終了と同時に中国への再進出や、出店ブランドの服をマルチサイズ展開する新規事業などを発表したが、こうした価格以外の価値を提供できるのがゾゾ本来の強さで、ブランドとの関係性を強め、退店ショップが戻ってくるくらいの事業になるのか注目したいところだ。