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厳しさ増すカタログ通販 効率化やMD強化で事業継続を

2025年 3月 6日 15:44

カタログなど、紙媒体を使った通販事業を取り巻く環境が厳しさを増している。用紙代や印刷代が高騰しており、今後も高くなることが予想される。ただ、カタログ通販のファンはまだまだ多く、社会的なインフラとして重要な存在であることは変わっていない。もちろん、赤字を出さないことが前提とはなるが、各社の奮闘を求めたい。

経営不振が続く千趣会は2月、本社ビルを売却するとともに、社長を交代することを発表した。同社は3期連続の最終赤字を計上しており、「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に重要な疑義を生じさせる状況」が続いている。

千趣会の2024年12月期売上高は456億円。14年12月期売上高は1400億円を超えており、実に10年間で1000億円近く売り上げを減らしたことになる。同社に限らず、総合通販企業はカタログを利用する顧客のネットへの移行に腐心してきたものの、新規を獲得する競争力に欠けていた。そのため、市場での存在感が低下し、ジリ貧の道を歩んだというのが実態だろう。千趣会では今般発表した再生計画において「カタログのシーズンサイクルにとらわれない新商品を投入する」などとしているが、「カタログの発行時期と販売する商品の季節感が合致していない」ことが総合通販企業の弱点であるというのは、10年以上前から言われていたことだ。「通販事業以外の新たな収益基盤の構築」なども含めて、同社の再生計画は遅きに失している感がぬぐえない。

一方、総合通販企業の中では「勝ち組」とされてきたベルーナに関しても、用紙代と印刷費の上昇、急激な円安による仕入れ価格上昇の影響を受け、アパレル通販事業は赤字に陥っている。同社では25年3月期より、「アパレル・雑貨事業」などを収益性の効率化を第一とした「サステナブル領域」と位置づけた。紙を使った通販の売り上げ規模が国内でトップを誇るベルーナにしても「成長を続けるのが難しい」とみているわけだ。

ただ、ベルーナでもカタログやチラシによる通販を「高齢化・過疎化を支える消費インフラ」とみており、時代にあった商品力・ビジュアル力を強化することで立て直しを図っている。成果も出始めており、黒字化への道筋が見えてきたようだ。

千趣会よりも先に経営危機を迎えたニッセンホールディングスは、昨年歯愛メディカル傘下となっており、連結後の業績は営業黒字に転じた。紙媒体を巡る状況は予断を許さないが、効率化やMD強化など、工夫できる余地はまだあるはず。「買い物難民」が増える中で、ネット以外の通販も社会にとって必要不可欠。各社の取り組みに期待したい。
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