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ヤマトグループがオンラインで診察、薬販売 自動車運送従業員向け診療、服薬指導を10分で

2025年 2月13日 12:00

 ヤマトホールディングスは自動車運送事業者の従業員向けにオンライン医療診断支援や処方箋薬のネット販売などを行う新会社を立ち上げ、2月7日から本格的に事業を開始した。他業種と比べ労働時間が長く、生活習慣病などの診療や治療のための通院が滞る傾向があるドライバーに対して、アプリ上で医師によるオンライン診断による院外処方および薬剤師による服薬指導を10分程度で受けることができるサービスを提供する。処方箋薬はヤマト運輸が配送する。同サービスはすでに運送業のほか、タクシーやバスの運営会社などの導入が決定しており、25年度までに200社の導入を見込む。

 展開する自動車運送事業者の従業員向けのオンライン医療サービス「MYMEDICA(マイメディカ)」は昨年12月12日にヤマトHDと医薬品や医療機器・用具の製造販売などを行うアルフレッサホールディングスが出資して新設したMYMEDICAが展開する。資本金は4億9500万円。出資比率は明らかにしていないがヤマトHDの連結子会社だという。同社社長にはヤマト運輸の伊藤匡マイメディカ推進室長(写真㊤)が兼務している。

 同サービスは利用者が専用アプリ上で予約して当該時間に問診票などの入力や健康診断の結果をアップロードするなどした後に、連携する医療機関の医師によるオンライン診療を受ける(写真㊦右)。診察後に薬を処方された場合、診療からそのまま切らずに薬剤師による服薬指導を受ける(写真㊦左)ことができる。薬は翌日以降にドライバーの自宅や所属する運送事業者の事務所など職場にヤマト運輸の「宅急便」で配送する。同サービスの利用は自動車運送事業者が同社サイトから申し込む必要があるが導入費や月額費は徴収しない。サービス利用料は税込440円、薬の配送料は同550円。別途、診察料と調剤料を徴収する。決済はクレジットカードおよびデビッドカードに対応している。なお、従業員が支払う利用料や配送料については導入事業者との契約に応じて、一部または全額を会社負担にするなどにも対応する。

 「マイメディカ」での診療に対応する病気は高血圧や脂質異常症、高尿酸血症、花粉症、皮膚病など。「オンライン診療には限界はある。高血圧など病状が軽度の方や一部、自己採血キットを導入して検査することで初診を受け付けるが、病状が重度の場合や皮膚病など触診などが必要な病気は最寄りの病院への診療を促して、その後に仕事の関係でなかなか通院できない場合などにマイメディカを使って継続的に診療頂いたり、服用中の薬を出すなどの使い方を想定している」(伊藤社長)という。

 開始時点の提携診療機関はウチカラクリニック、オンラインで服薬指導を行う薬剤師が所属する薬局はMYMEDICAが運営するヤマト運輸の神奈川県の大型物流拠点内および事務所内に構える「ターミナルファーマシー」となる。なお、連携医療機関は今後、利用者数などに応じて増やしていく方針。オンライン服薬指導を行う薬剤師が所属する薬局は今後もターミナルファーマシーのみとするようだが、処方箋薬自体は受診者が他の薬局で購入することもできる。

 アプリ上で簡単に予約可能で、その日のうちに診療から服薬指導までシームレスに受けることができ、また、サービス提供時間は午前7時から午後9時までで土日も対応しているため、始業前や夜勤後、就業後、休憩中でも診療・服薬指導を受けることができることから、拘束時間が短く、長時間労働かつ夜勤などもあり、健康診断の再検査や生活習慣病の診察や治療などのための通院が滞りがちというドライバーでも診療や治療の継続がしやすくなるメリットがあるという。

 従業員の健康を管理する事業者側には社員が生活習慣病のリスクを正しく理解するための教育動画の提供や検査対象者へ渡す再検査の通知書の作成支援などを行う。また、「これまで工数をかけていた再検査結果の集計もアプリから簡単にデータ管理できるようにし、その結果を見える化することで自社の健康管理状況について経営者や管理者が一目で把握できる。また、本人同意があれば生活習慣病に限定して企業側に治療状況の共有もできるようになっている」(伊藤社長)という。

 「マイメディカ」の本格展開に先駆けてヤマトグループの従業員を対象に23年12月から今年1月末までの1年超にわたってトライアル展開(アプリのダウンロード数は約4万4000件、累計受信数1万件超、月間利用者数約1000人)したところ、一般的には50~70%、50%という再検査受診率、治療継続率がそれぞれ98%、80%まで高まったという。

 「自動車運送事業者は健康診断で再検査が必要だとされた従業員が再検査を受診しないで健康起因事故を発生させると40日間の使用停止命令という行政処分が下されるため、『従業員に再検査を受診させること』は義務化しているが、労働時間が長く、自覚症状がないことなどで受診するように促しても受診しなかったり、一度、病院に行っても治療の途中で行かなくなる人が多い傾向にある。従業員に何度も受診するように促しても解決できない現状に困っている自動車運送事業者も多いのではないか。自動車運送事業者にターゲットを絞ったサービス設計で使いやすい。コストを極力かけずに従業員の健康管理と重症化予防が可能で健康診断の再検査にかかる管理業務の負担軽減も図れ、福利厚生の充実にもつながる。社員の健康管理に課題を抱える多くの自動車運送事業者に導入頂きたい」(伊藤社長)とし、25年度までに200社の提供を目指す。売り上げの目標については明らかにしていない。

 なお、ヤマトグループやアルフレッサグループ傘下の企業のほか、西濃東京エキスプレスやエコアライアンス、西久大運輸倉庫、フジトランポートといった運送事業者のほか、タクシー会社の日本交通、バス会社の宮崎交通が導入を始めているという。
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