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メディアが事務局【「論文評価委」の短慮①】 取材対象企業の論文を評価

2023年 5月11日 12:20

 機能性表示食品の「届出論文」を評価する委員会が発足した。発起人は、東京大学名誉教授の唐木英明氏。事務局は、ヘルスケア産業のニュースメディアを運営する「ウェルネスニュースグループ(=WNG)が務める。WNGにとって取材対象になる企業の論文を、委員会が評価する。同社は、「事務作業に徹する」というが、業界関係者からそのスキームや運営に疑問の声があがっている。

 「機能性表示食品『届出論文』評価委員会」は4月18日に発足した。原則、機能性表示食品の届出論文を独自に評価。問題があると判断した場合、WNGの会員限定ページで公開する。深刻な疑義がある場合、消費者庁に通報するほか、同社が運営するニュースサイト「ウェルネスデイリーニュース」で報告する。

 製品の有効性や安全性ではなく、根拠論文の「科学的な質」を評価する。臨床試験実施の根拠となる「前臨床試験結果(臨床試験実施の根拠)」、「方法論(対照群の種類や被験者の設定根拠等)」、「トータリティ・オブ・エビデンス(現在の科学水準からみた総合評価)」など5つの観点から確認する。

 評価は、確定前に企業側に確認することもあるという。企業の質問や意見も委員会が審議した上で公表する。

 委員は、現時点で論文評価に知見を持つ3人で構成。ただ、外部からの圧力等を避けるため、委員名は公表しないとしている。

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 発足の経緯について、唐木氏は、現状の届出論文に統計的有意差を出すため統計が誤用されるなど、「科学的な質」に問題があるケースがあるためとする。論文の自己点検の機運を高めるため、論文の監視を通じた外部評価を行い、業界の健全化と制度の質向上への貢献を目的にする。

 ただ、委員会設置に向け支援会員の募り、運営することを考えたものの、評価や論文入手の経費、事務所設置や事務員の雇用が「現実的ではない」(唐木氏)と断念。支援する組織を探したが見つからず、とはいえ経費なしに委員の善意に頼るだけでは継続的な評価は望めないとしてWNGに運営費用の負担を依頼したという。

 唐木氏は、WNGの学術顧問を務めるなど、以前から同社と密接な関係にある。「WNGの会員を委員会運営の支援会員とみなし、支援をお願いした」(同)。つまり、「WNG会員(月刊誌等の購読者)=委員会会員」という一体の構図だ。当然、会費は、WNGの収益の一部を占める。

 WNGの年会費は15万円(税抜き)。会員は、月刊誌やメルマガの購読だけでなく、ニュースサイトでの記事の優先掲載、月刊誌の企業紹介記事の優先掲載、セミナー聴講の割引、メルマガを通じたイベント情報の発信などのサポート、プロモーション動画制作の割引の特典も受けることができる。サイトで公表されている会員社は、現在、73社。健康食品関連の販売事業者やOEM・原料メーカーが大半を占める。

 WNGは、「(委員会評価の閲覧が)会員の増加につながるとは考えたこともなく、期待もしていない」とする。「評価に口出しを一切しない条件で事務局を引き受けた」として、報道機関としての中立性、公平性も保たれるとする。

 しかし、その構図を捉えた業界関係者は、そうは受け取っていないようだ。(つづく)


 
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