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23年度からドローン配送を実用化へ<日本郵便、「レベル4」が成功> 郵便局間の輸送にも

2023年 3月30日 11:00

 日本郵便が3月24日、東京・奥多摩町でのドローンによる荷物配送において第三者上空(有人地帯)を含む飛行経路での補助者なし目視外飛行(「レベル4」)を成功させた。「レベル4」の運航は国内初となる。日本郵便は2023年度からが5キログラムまでの荷物に対応する物流専用の新型ドローン機体による実用化のフェーズとしており、山間地での顧客向けの郵便・荷物の配達だけでなく、郵便局間の輸送にも取り組んでいく。

 




 今回の「レベル4」は昨年12月5日の改正航空法施行に基づき、日本郵便が申請していたのに対し、国土交通省が3月17日に許可・承認したのを受けて実施した。また、同法ではドローン機体は「第一種機体認証」を取得する必要があるが、今回の機体は業務連携先のACSLが製造したもので、同機体は同認証を3月15日に日本で初めて取得していた。

 今回のドローン配送は、1キログラムの荷物を積んで奥多摩郵便局の屋上から離陸し、約2キロメートル強離れた住居まで運航。住人へ荷物を届けた後、再び離陸地の郵便局屋上に戻った。

 往復の飛行距離は約4・5キロメートルで、要した時間は約9分。19年度に行ったレベル3での運航では、有人地帯などを避けての飛行となったため、飛行距離が5・87キロメートル、飛行時間が15分だった。「レベル4」での運航となったことで目的地までほぼ直線に近い飛行が可能となり、飛行距離で22%、飛行時間で40%を削減した。

 山間地にある配達先の住居へは、配達バイクでは林道を通り抜け、さらに徒歩で坂のきつい小道を登った上でたどり着くところ。山間地での荷物配送をドローンにより行う好例のモデルと言えるものとなった。

 奥多摩郵便局屋上を飛び立ったドローンは、上昇後目的地となる山間地へ進み、操縦士がいる屋上から目視できない状態になったが、操縦士がパソコン画面で進行を確認し、配達先住居に到着。住人が荷物を受け取った。

 荷物を受け取った住人は「奥多摩町よりも大変な地域は全国にたくさんあると思う。その中でわざわざ配達員が届けなくていいのであれば、ドローン配送もあるかなと思う。今回は配達してもらったが、逆に荷物などを持っていってもらえるようになればと思う」と今回のドローン配送についての感想を述べた。

 なお、奥多摩町でのドローン配送は19年度から取り組んできた。

23年度以降は物流専用機で

 日本郵便は昨年12月6日、ドローン配送の実用化に向け新たな物流専用の国産ドローン(ACSL製)を発表。「レベル4」での運用を前提にした機体で、全長が1・5×1・7メートルと今回の機体より大きい。そのため、積載する荷物の重量が5キログラムと従来比5倍、最大飛行距離も約35キロメートルとなっている。

 今回の「レベル4」の運航の次のステップとして、同機体を活用して実用化を進めることになる。23年度には山間地での荷物配送だけでなく、山間地などの郵便局と郵便局との間で郵便や荷物を輸送する事業モデルにも取り組む予定。

 また、将来構想として、日本郵便の社員が「レベル4」でドローンの操縦を行えるよう「一等技能認証」の取得も進めていく。


「23年度は新機体で定期的に」

小池常務 操縦士の内製化も


 「レベル4」の運航後における日本郵便の小池信也常務執行役員との質疑応答の要旨は次の通り。

                                                                   ◇

 ――ドローンの取り組みを急ピッチで進める理由は。

 「日本社会の変化を考えると、少子高齢化、労働力不足が目前の課題となるなか、いかに顧客の利便性を向上し、当社としてもオペレーションの効率化・改善ができるところはないかと常々考えてきた。ドローンに関しては16年という初期の段階から取り組み、新しい技術を導入していくということは必要であると考え活用を進めてきた」

 ――これからの目標あるいは意気込みは。

 「これまでいろいろな場面でドローンに取り組んできた。そして今回、実用化の一歩手前まで達することができた。ご覧いただいたように運航も安定しており、『レベル4』ということで国からも認めていただいている。このような取り組みをどんどん広げていきたい」

 ――今回の運航についての評価は。

 「予定通りのプロセスを踏んで、予定通りの運航になったのではないかと思う。途中で降雨があったので、天候の急激な変化があった場合には安全を優先して、運航を中止するのが大原則であり、(2回目は途中で)中止とした」

 ――雨天の場合に対し今後の実用化の際にどう対応していくのか。

 「具体的な実用化に当たって降雨など天候が悪化した場合にどうするかというのは現状、決め切れているわけではなく、これから検討する。顧客の不便にならず、我々としても望ましい方向でやっていきたいと考えている」

 ――ドローンは運べる量が少ないのが弱点だが、黒字化できるのはいつ頃か。

 「運ぶ量は今回の機体では1キログラムまでで、新たな物流専用機であれば5キログラムと増やせる。ドローンの費用対効果はドローンを飛ばすだけで見るのか、視野を広げて対象となる地域全体における収支を見るのかとでは数値が違ってくると思う。単体で見れば費用がかかり、赤字ではないかと言われてしまうと思うが、日本郵便はユニバーサルサービスを果たす役割があるので、日本全国で同じレベルのサービスを少なくとも郵便ではしないとならない。そのよう点からコストをどう見るのかということを社内的にも議論していかなければならない」

 ――23年度はどのような取り組みを行うのか。

 「23年度は、昨年12月6日に発表した物流専用機となるドローンがあるが、一辺が1メートル50センチほどになり、今回の1メートル10センチと比べると大型化しており、その機体を使って『レベル4』の運航を行って、実用化にどうつなげられるか、また実用化といってもいろいろな実用化があるが、1回だけ飛ばして終わりではなく、ある程度定期的に運用ができるようにしていきたい。23年度以降の実用化に向けて新しい専用機を使って行っていきたい」

 ――ネットワークの維持という観点から、ドローン配送は全体でどれほど占めるようになるか。

 「10~20年後というところまではなかなか読み切れない。また、例えば配送ロボットもあり、自動運転という技術もあり、2~3年のスパンで見たものでも予測が違うということもある。新しい技術なので急に進むかもしれないし、思ったほど進まないかもしれない。そのため、あまり長期的な予測で何割をということは今のところ考えていない。ただし、先ほど述べたように物流専用機は5キログラムまで積め、距離も往復40キロメートル程度になるので、配達先だけでなく、郵便局と郵便局という使い方もできるようになると、使い道が広がると思う。そのようなところを考えながら、どれくらい実走できるかを検討していきたい。5キログラムまで積めるようになると、山間地の郵便局と郵便局の間で郵便物や荷物は5キログラムで収まってしまうので、軽4輪車に代替してドローンで輸送するということもできると思う」

 ――操縦など日本郵便での内製化は。

 「これまでのレベル3についても、無線の資格など必要な資格があり、日本郵便の社員で取得している者が何人もいる。『レベル4』の今回は『一等技能認証』は時間の関係もあり、社外に依頼したが、遅かれ早かれ日本郵便の社員でもその資格を取得した上で、内製化していきたいと考える。日本郵便の実力としてつけていけるようにする」
 
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