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――寝具関連市場の景況感について。
「昨今はストレス社会が指摘されるようになり、健康の側面からも睡眠の大切さが注目された結果、『寝具・眠り』などのキーワードに反応する人が増えた。コロナ禍で在宅時間が増えた2020年からは自宅でいかに快適に過ごすために良いものを揃えるかという動きが見られた。そこでインテリアも含めて関連市場が上振れた。コロナ禍で日本人の平均睡眠時間が15分程度伸びたという話もあり、寝具についてこだわりを持ちはじめるケースが増えたのでは。そのほかにも睡眠に関するグッズやアプリに興味をもって、睡眠を可視化したりするなどの動きも見られた。
一方、22年はその反動が来ており、当社もその影響を受けた。しかし、反動減はあったが、良いものを求めている人を多く獲得できた。今は低価格帯と高価格帯の2極化の時代であり、我々の枕は市場で見ると比較的上位の価格帯のグループに入る。価格にこだわらず良いものを求める人は増えており、新しい顧客の需要は確実に捉えることができたと思う」
――現状の販路は。
「まず、対面による実店舗での販売は90%が百貨店。直営店は現在3店舗あり、そのほかにエアウィーヴの店で一緒に販売をしてもらっている。通販事業は全体の1割以上~2割未満程度。ネットでの通販は自社ECのほか、アマゾンさんや楽天さんなどのモールがある。あとは、新聞の3紙で毎月1回、5段の広告枠の中で『ホテルピロー』というホテル向けの商品を販売している。通販はまだまだ開拓しなくてはいけないボリュームだと思う」
――通販規模を上げたい理由は。
「もともと実店舗に来てもらって、頸椎のカーブの深さを測って、感触の違いや好みを聞きながら枕を提案するビジネスを行っている。対面で向き合ってコンサルしながら販売するスタイルなので、当初はネット販売をあまりしていない実情があった。
16年にエアウィーヴがロフテーを買収して傘下にしたが、創業ではロフテーは90年を越えている会社。枕事業を扱うようになったのは20数年前から。傘下になった時、枕以外にもシーツや布団カバーなど布系の軽寝具を扱っていたが、主力商品としてはやはり枕だった。経営状態を見た時に枕以外の品番は売り上げ効率が非常に悪く、収益を圧迫していたので、そこから枕に特化した会社になっていった。
会社の販売をより上げようと思った時、今の時代はECのような非対面でも流通させていかないと企業として成長しないということもあり、まずは会社のホームページでECを始めた」
――実店舗とECで品ぞろえに違いは。
「実店舗に来ないと計測ができないため、来店しなくても買えるものということで、通販向け商品をいくつか作ってスタートした。ただそれだけでは、飛躍的に売り上げを高めることは難しい。広告宣伝も打ちながら地道に少しずつ伸ばしていき、今は(EC化率が)約13%まで成長したが、実店舗で扱っているような主力の枕商品まではまだうまくリーチできていない。
ECと実店舗で同じ商品を販売できるところまで持って行かないと、当社の本当の強みは発揮できない。そこで、数年前からリアルとデジタルの融合を進めている。通販で買いたい人は実店舗で体験してもらってECに戻って買うことができるなど、ECと実店舗を行き来してもらえるように促している。結果、22年からは実店舗と同じ商品がECでも少しずつ売れるようになってきた」
――通販での売れ筋は。
「今はホテル向けに開発したホテルピロー(1万円台前半)が売れているが、じわじわ2万円台の商品も売れ出している。例えば、実店舗では通常の枕よりも高さが低く、肩にフィットする形状の『ソフィットピロー』がある。これは枕を使わない人や、使うと違和感があるという人に向けた薄型の枕となる。若い女性などに多いが、これがEC上で売れるようになった」
――商品の差別化のポイントとは。
「大きな特徴としては中材を5分割にした構造(頸部支持構造)を採用していること。それぞれのユニットに分かれていて、後頭部に当たる箇所が一番低くなっており、頸椎に当たる部分がやや高く、この頸部に当たるところの高さを身体に合わせて選んでいる。また、横を向いて寝る時に肩と頬の間の隙間を高くしないと頭が落ちてしまうので、それを支えるために両端は高くしている。それぞれのユニットの中に入っている素材はいくつかあり、感触を試してもらい、最適な提案を行っている」
――内容的に説明が必要な商品となるが。
「ECでは素材や構造の説明について、活字の上では表現できているが、やはり、店に来て体感してもらわないと中々伝わらない面もある。そのため、最寄りの店で体感だけでもしてもらってということを勧めている。今は来店前にネットで下調べをしたり、店で品番を控えて自宅でネットから買うことは一般的になっている。実店舗で買う人もネットで買う人もそれぞれいるので、とにかくタッチポイントを徹底的に増やすことを意識的に行っている。そうしたことをやりつつブランド認知を上げていき、選んでもらえる機会を増やしていく」(つづく)