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楽天の「ネーションズ」、月商1億円目指す新企画開始 組織作りなど伝授

2023年 1月12日 10:30

 楽天グループでは、名店舗が講師となり、他の出店店舗にネット販売に関するノウハウを伝授する企画「NATIONS(ネーションズ)」において、参加店舗が月商1億円を目指すプログラムを開始した。昨年12月22日には、勉強会を都内の楽天本社で実施。11店舗が参加した。

 






 ネーションズは2016年4月にスタートした企画で、昨年12月までのチャレンジ店舗(生徒)の数は累計で5868店、リーダー店舗(講師)も同202店にのぼる。当初は月商100~600万円の店舗を対象に、月商2倍を目指すコースのみだったが、今回始めた「スーパーアドバンス」も含めて、店舗の月商に応じた6プログラムを展開している。

 新プログラムは、月商1500~3000万円の店舗が対象で、上限は20店舗。事前に書類選考と面接を行い、応募した店舗の中から11店舗を選んだ。講座回数は全12回で、「ZOOM」によるオンライン講座とオフラインでの講座をハイブリッドし、半年間に渡って実施。また、店舗同士のコミュニケーションを非公開の「Facebook」グループ上で行う。

 プログラムで目標とする月商は1・3倍で、目標達成時に前年との差額の5%が課金されるほか、別途毎月5万円を支払う。プログラムでは、自社における会社の構成や業務フロー、組織を見直し、会社や組織を再構築・強化しながら、3~5年後に月商1億円の達成を目指す。

 他のプログラムは主にEC担当者が参加しているが、本プログラムの場合、チャレンジ店舗からの参加者は、社長などの経営層に限定。リーダー店舗は、「DIYFACTORY」を運営する、大都の山田岳人社長が務める。また、ズーティーの浅野かおり取締役、澤井珈琲の澤井理憲常務取締役、ベルヴィの宮崎義則社長が講義を行う。

 大都の山田岳人社長は「月商1億円という金額は、個人商店で超えられる壁ではなく、きちんと企業にしていかなければ超えるのが難しい。資金調達や組織作り、人事の評価制度なども整備しなければいけない。MBAのようなビジネススクールにしていきたい。チャレンジ店舗にはしっかりと企業を経営してもらい、次のステージに進んでもらえれば」と講師を務めるにあたり抱負を述べた。

 また、山田社長は「店舗が店舗を教える」というネーションズの意義について、「私も楽天でECを始めた頃は、先輩店舗にいろいろと教えてもらった。次は今困っている店舗に教える、いわば『ペイフォワード』の精神が楽天らしさだと思う。実際に、チャレンジ店舗からリーダー店舗になった店舗もある。アマゾンはスーパーだが、楽天市場は商店街。出店店舗それぞれが頑張って、商店街全体が盛り上げていくことが大事だ」とした。

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 プログラムに参加する「うちのこエレクトリック」のアクセスラインは、自動給餌器などのペット用家電を専門に扱っている。吉田久雄社長は「売り上げが頭打ちになっており、これ以上伸ばすのは単独では難しいと感じていた」と参加した理由を説明する。同社の年商は約4億3000万円で、社員は13名。月商1億円という目標を達成するのは、売り上げを倍以上に増やす必要があるが、「これまでは組織づくりも手探りだったので、ノウハウを得られるこうした勉強会は非常にありがたい」という。

 同社の主力商品は、スマートフォンから遠隔操作が可能な自動給餌器。現状の課題は人事や資金調達などという。吉田社長は「これまでは『強い商品を作る』ことに夢中で、いわば『点』でしか考えていなかった。今後はたくさん作った点を『線』にして、さらには『面』にしていきたい。そのためには組織を強くしていかなければいけないと思っている。講義の内容を素直に受け止め、自分の枠にとらわれることなくこなしていきたい」と話す。

 「BABYGOODS FACTORY」を運営するパピーは赤ちゃんの歩行を補助する器具など、幼児向け玩具・遊具を製造するメーカー。楽天市場には2015年に出店、18年にネーションズへ参加したことをきっかけにECを軌道に乗せた。その後、ネーションズではリーダー店舗も務めた。

 ただ、犬飼翔太社長は「ここ1~2年は企業文化を築くことを目標にしていたが、それがうまくいかず、売り上げも伸び悩んでいた」と悩みを明かす。同社は2020年頃まで家族経営だったが、業容拡大に伴い従業員を雇ったことで、齟齬(そご)が出てきたという。「働いているのが家族だけなら、繁忙期は夜中まで仕事しても問題はないが、従業員を抱えると無茶なことはできない。また、従業員のモチベーションを保ってもらうのも難しい。スーパーアドバンスに参加すれば、現状の壁を超えられるのではないか」(犬飼社長)。

 すでにフェイスブック上ではやり取りをしており、「日報の提出が毎日の楽しみになっている。参加者からの熱量の高いコメントが嬉しいし、ステージの近い店舗と悩みを話し合えるのは勉強になる」。

 現在の月商は約2000万円で、従業員はパートを含めて7名。2027年12月には月商1億円をクリアしたい考えだ。同社はプライベートブランドの玩具を揃えていることが強みだが、中国からの仕入れのため、円安の直撃という逆風下にある。犬飼社長は「ジャック(編注‥山田氏の愛称)からは『社長が楽しくしていないと従業員も楽しくなれない』と指摘され、はっと気付かされた。数字を追うあまり、社内で厳しい態度を取っていることがあったからだ。妻からも『1カ月で変わったね』言われた。助言してくれる仲間がいるというのは本当に大事だと痛感している」と語る。
 
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