健康情報、「積極発信」を宣言【山田養蜂場 措置命令の背景②】 表示規制を熟知、発信のルール設定
2022年11月14日 12:58
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「お客さまには、国によって保障された『知る権利』があります」。処分からさかのぼること10年、業界関係者の間で山田養蜂場のある宣言が話題になった。同社が会報誌「健やかに」の発行にあたり掲載したあいさつ文だ(=画像)。
これによると、同社は、これまで薬事法(現薬機法)に抵触することをおそれ、機能性の詳しい説明を避ける対応をしてきたという。だが、説明責任を果たせていないと悩んだ末、健康素材の情報を顧客の求めに応じて「積極的に発信していく」と方針転換したという。
薬事法の趣旨を踏まえ、発信する情報は、「消費者が正しい判断をするために必要な情報」、「自社の商品を対象にせず、一般的な健康素材の成分に関する情報」、「信頼できる様々な研究によって、科学的に根拠が明確にされたもの」を条件にするとしている。文面からは表示規制の現状を熟知した上で、景表法など規制法を避けて条件を設定し、判断したようすが窺える。
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掲載当時、山田養蜂場は日本通信販売協会サプリメント部会の副部会長だった。協会は広告表示や安全性のチェック体制など「サプリメントの取扱いに関するガイドライン」の順守状況を把握する目的でサプリメント登録制を開始。副部会長として山田英生社長も「規制撤廃など企業側の論理ではなく、消費者トラブルを起こす一部事業者を自主的に規制する」と、業界の健全発展にかける決意を表明している。
すでに機能性表示制度創設の機運も高まっていた。翌13年には、政府の規制改革会議が成長戦略に健食の「機能性表示容認」を盛り込み、規制緩和は一気に進む。15年に機能性表示食品制度が誕生した。
一方で、科学的根拠のない健康食品に対する規制は厳しくなった。昨年6月には、消費者庁が「コロナ予防」をうたう43事業者の49商品の表示を対象に健康増進法に基づく一斉監視・改善指導を実施。「ビタミンDでコロナ予防」など処分で指摘を受けたものと同様の表示も対象だった。
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「伝えたい思いが行き過ぎた」(山田養蜂場)。会報誌の文面からも顧客に寄り添おうとする思いは伝わってくる。ただ、根拠があいまいな健食が溢れ疑念を抱く消費者もまだ少なくない中、これから信頼を獲得しようという業界にあって、ひとりよがりの信念に基づく情報発信はその妨げになる。処分で指摘を受けた内容も自ら定めた情報発信の「条件」と整合性がとれるものではないだろう。同社が行政の指導に含まれるメッセージや、「条件」との不一致を知らなかったとは考えにくい。それだけではなく、同社にはより直接的に自らの表示を見直す機会もあった。