山田養蜂場が景品表示法の措置命令を受けた。消費者庁は新型コロナウイルスの感染拡大以後、対策をうたう商品に繰り返し注意喚起してきた。初歩的な誤りに業界関係者からも厳しい指摘が相次ぐ。命令に至る背景には何があったのか。
「やりすぎだ」。健康食品の表示に関わるものであれば、コロナ予防の表示リスクは「誰もがNGと認識できる」と業界関係者も呆れる。
消費者庁が新型コロナウイルスの対策をうたう商品を重点的に監視する中にあって、同社は「感染と重症化、どちらも予防したい…お客さまの声に応えて」、「ビタミンDと亜鉛はともに新型コロナウイルス感染時の重症化を防ぐ可能性が研究報告されている」と、コロナに関連づけて自社商品をPRしている。「明確に『予防』と言ってしまっている。一番注目されているところでやってしまった」、「脇が甘いとしか言いようがない」と、業界内部からも擁護の声は聞こえない。
◇
山田養蜂場は、消費者庁の求めに応じ、根拠資料を提出している。処分対象になった「1stプロテクト」等に含まれるプロポリスエキスについて、飲用した新型コロナ患者の入院日数が約3日減少したとするものや、PCR検査陽性者が陰性者に比べ、血中のビタミンD濃度や亜鉛濃度が低かったとするもの、ローヤルゼリーが免疫機能を活性化するというものだ。いずれも可能性だが、商品情報とともに顧客向けDMで紹介されている。薬機法にも抵触する可能性がある。
広告の経緯について、「コロナ禍でお客様から不安の声が多く届いていた。年配客も多く、エビデンスを探し役立つものを開発していた。お伝えしたい思いが行き過ぎた」(同社)とするが、業界は機能性表示食品制度の導入からすでに7年が経過する。機能に関する根拠の評価の指標は示されており、妥当性は十分評価できたはずだ。加えて、同社は日本通信販売協会が08年、通販大手8社を構成メンバーに発足したサプリメント部会で、12年から部会長の重責も担っていた。本来、事業者に範を示すべき立場でもあった。
◇
当該表示のリスクは自覚なく出されたのか。「違反の認識がないため出てしまったということになる。気を付けていたが、結果として不十分だった」(同社)という。ただ、処分対象の商品について行われた別の広告と見比べると、巧妙に使い分けているようにも見える。
「1stプロテクト」「2ndプロテクト」について、違反の指摘を受けていないLINE広告(=
画像)では、「負けない身体づくりに!」、「万全の対策ができる」など具体性のない文言が並ぶ。
一方、違反認定を受けたDMでは、新型コロナの脅威を煽った上で、同様の文言が「『免疫力』をサポートし、負けない身体づくりを!」「コロナ時代を生き抜く対策を万全に」などと異なるトーンで訴求されている。
広告は、制作部門が販売企画関連の部門や自社研究所に確認して作成していた。社内に品質保証や法務関連の部署もあるが、内容の確認は部署内にとどまり、部外者の確認を経ることがなかったという。
今後は外部の専門家など第三者によるチェック体制を強化。「広告は媒体考査があるが、プレスリリースはチェックが甘い部分があった」(同)としてすべての表示物を対象に責任者の承認を得なければ配信できないよう変更するという。考査のないDMもチェックが甘かったとみられる。
ただ、処分は必然といえる。山田養蜂場には、今回の事態を前に立ち止まり、表示を見直す機会があったからだ。背景には、長年に渡りその不見識を正すことなく、助長してきた行政の不作為の問題もある。
「やりすぎだ」。健康食品の表示に関わるものであれば、コロナ予防の表示リスクは「誰もがNGと認識できる」と業界関係者も呆れる。
消費者庁が新型コロナウイルスの対策をうたう商品を重点的に監視する中にあって、同社は「感染と重症化、どちらも予防したい…お客さまの声に応えて」、「ビタミンDと亜鉛はともに新型コロナウイルス感染時の重症化を防ぐ可能性が研究報告されている」と、コロナに関連づけて自社商品をPRしている。「明確に『予防』と言ってしまっている。一番注目されているところでやってしまった」、「脇が甘いとしか言いようがない」と、業界内部からも擁護の声は聞こえない。
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山田養蜂場は、消費者庁の求めに応じ、根拠資料を提出している。処分対象になった「1stプロテクト」等に含まれるプロポリスエキスについて、飲用した新型コロナ患者の入院日数が約3日減少したとするものや、PCR検査陽性者が陰性者に比べ、血中のビタミンD濃度や亜鉛濃度が低かったとするもの、ローヤルゼリーが免疫機能を活性化するというものだ。いずれも可能性だが、商品情報とともに顧客向けDMで紹介されている。薬機法にも抵触する可能性がある。
広告の経緯について、「コロナ禍でお客様から不安の声が多く届いていた。年配客も多く、エビデンスを探し役立つものを開発していた。お伝えしたい思いが行き過ぎた」(同社)とするが、業界は機能性表示食品制度の導入からすでに7年が経過する。機能に関する根拠の評価の指標は示されており、妥当性は十分評価できたはずだ。加えて、同社は日本通信販売協会が08年、通販大手8社を構成メンバーに発足したサプリメント部会で、12年から部会長の重責も担っていた。本来、事業者に範を示すべき立場でもあった。
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当該表示のリスクは自覚なく出されたのか。「違反の認識がないため出てしまったということになる。気を付けていたが、結果として不十分だった」(同社)という。ただ、処分対象の商品について行われた別の広告と見比べると、巧妙に使い分けているようにも見える。
「1stプロテクト」「2ndプロテクト」について、違反の指摘を受けていないLINE広告(=画像)では、「負けない身体づくりに!」、「万全の対策ができる」など具体性のない文言が並ぶ。
一方、違反認定を受けたDMでは、新型コロナの脅威を煽った上で、同様の文言が「『免疫力』をサポートし、負けない身体づくりを!」「コロナ時代を生き抜く対策を万全に」などと異なるトーンで訴求されている。
広告は、制作部門が販売企画関連の部門や自社研究所に確認して作成していた。社内に品質保証や法務関連の部署もあるが、内容の確認は部署内にとどまり、部外者の確認を経ることがなかったという。
今後は外部の専門家など第三者によるチェック体制を強化。「広告は媒体考査があるが、プレスリリースはチェックが甘い部分があった」(同)としてすべての表示物を対象に責任者の承認を得なければ配信できないよう変更するという。考査のないDMもチェックが甘かったとみられる。
ただ、処分は必然といえる。山田養蜂場には、今回の事態を前に立ち止まり、表示を見直す機会があったからだ。背景には、長年に渡りその不見識を正すことなく、助長してきた行政の不作為の問題もある。