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コーナン商事 「送料無料」が成長後押し【楽天市場25周年記念 「店舗が語る成長の秘けつ」】 「スター商品」次々生まれる

2022年 6月16日 11:00

 ホームセンター大手のコーナン商事が楽天グループの運営する仮想モール「楽天市場」に出店したのは2017年。自社通販サイトは10年前から運営しているものの、思うように売り上げは伸びていなかったという。

 村上文彦取締役上席執行役員(=写真㊤)「今後、小売り企業として生き残っていくためには、ECと実店舗の融合を進めなければいけないという危機感があったものの、社内の意識改革が進んでいなかった。ECを伸ばすには、まず仮想モールの集客力を活用し、ネットで知名度を上げていくのが先決ではないかと考えた」

 コーナン商事では2019年4月、「ホームセンターコーナン」など、全店で楽天の共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」を利用可能にした。圧倒的な会員数とポイント発行量があり、ECを頻繁に使う若年層の取り込みができる点を重視しての提携だ。実際に、これまでコーナンの店舗を利用していなかった若年層の来店が増えているという。

 村上取締役「ホームセンターは全般的に顧客の年齢層が高く、当社としても若年層の取り込みが課題となっていた。楽天と手を結んでECとリアルの融合を進めるのが一番良いと判断した」

 楽天市場での売り上げは順調に伸びており、2019年から見て前年比約2・5倍、2倍、1・5倍というペースで年々売り上げは増えている。楽天市場全体においても、コロナ禍を受けて在宅率の上がった2020年夏頃から、出店するホームセンター各社の売り上げが伸び始めたという。コーナンの場合、伸びを後押ししたのが、送料無料となる購入額を税込み3980円で統一する施策「送料無料ライン」の導入だ。当初は施策を導入しない方針だった同社だが、担当ECコンサルタントである、楽天グループホームライフ事業課関西エリア第一グループの岩本英典氏による「必ず実績が上がるから」という根気強い提案を受け、導入を決めたのだという。

 コーナン商事EC営業部の仲西正敏氏(=写真㊦)「『39ショップ』(送料無料ラインを導入した店舗)については、注文単価が下がれば赤字になる可能性があるので、経営的にどうなのかとすごく悩んだ。値付けや品揃えに関して岩本さんからアドバイスを受けることでうまくコントロールできた」

 楽天グループの岩本英典氏「大手企業だからこそ、どうしても導入してもらいたかった。コーナンさんの場合、自社サイトにはたくさんの商品を登録しているが、楽天市場の商品はかなり絞っている。その中で『ECで売れる商品』をもっと楽天市場に並べるべき、とアドバイスした。もちろん、コーナンさんが商品知識や売れ筋のノウハウを豊富にお持ちなのは分かっているが『楽天市場で何が売れるか』は当社にしか無いデータ。『この商品をこの価格でこの個数並べてください』とアドバイスし、それに対してスピード感を持って取り組んでいただけたことで、売り上げが急増した。また、コーナンさんは在庫を切らしてしまうことが目立っていた。在庫が無いとモール内検索に出て来ないため、大きなアクセスロスが発生してしまう。『この商品の在庫は絶対に切らさないでください』といった話をして、それに対してすぐに動いてもらえた。39ショップを導入してからの売り上げの伸びは、他のホームセンター大手と比較しても群を抜いていたのではないか」

 これまで、送料無料ラインは1万円だったが、沖縄・離島を除いて3980円にラインを下げた。注文数が大きく増える一方、単価に関してはあまり下がらなかったという。

 岩本氏「同梱率が上がったことが大きい。多くのユーザーは3980円に合わせようとして注文するのではなく、『せっかくだからまとめて買おう』となるようだ。例えば300円程度のペットフードなども、他の商品と合わせて購入してくれる。ユーザーにとって買いやすい店になったので、取り扱いアイテムの選択肢も非常に広がった」

 また、岩本氏はコーナンの店舗を実際に訪れ、楽天市場に登録されていないプライベートブランド(PB)商品を確かめたという。その上で「このPBは楽天で売れているので、コンテンツをもっとリッチにすべき」とアドバイス。それにより、例えばPBの「アイアンラック」は、店舗でも販売はしているものの、ECの方が売れる「ネットに強い商品」となった。

 岩本氏「楽天市場内では、ラック専門店の人気商品に負けないくらいの売れ筋となっているが、コーナンさんにとってはたくさんある中の1商品なので、何もしなければ埋もれてしまいかねない。ネットの在庫を切らさないようにしてもらえたことでここまで伸びた。また『ペットシーツ』も非常に売れているが、これは他店を参考にして、商品もページもEC用に作り直した。コーナンさんのご努力もあり、楽天市場内での『スター商品』が次々に生まれた」
 仲西氏「さまざまな仮想モールに出店しているが、こういうアドバイスがもらえるのは楽天さんならでは。楽天市場はユーザーの反応も早いので、チャレンジしやすいという側面もある」

 岩本氏「コーナンさんは価格競争力のある型番商品の仕入れ力があり、さらにはレビューが少ないと売れにくいPB商品に関しても、掲載から数カ月たてば高い評価のレビューがたくさん貯まる商品力を持っている。これがここ数年大きく伸びた要因ではないか」

 楽天市場の大きな伸びを受けて、コーナン商事ではECに対する社内の見方も大きく変わってきた。

 村上取締役「ひと昔前だと在庫は実店舗が優先されていた。ただアイアンラックのようにECが一番売っている商品が出てきたことで、『ECにも在庫を回して、どんどん伸ばしていかなければいけない』という流れが生まれた。これは岩本さんのおかげだと思う(笑)」

 コーナン商事の2022年2月期売上高は4257億円。EC売上高は非開示だが、全社売上高の10%まで増やすことを目標としている。

 村上取締役「実店舗との相互送客に注力するとともに、仮想モールの集客力を活かしながらネットでの知名度を上げていきたい。中でも楽天市場は会員数が圧倒的なので頼りにしている。また、楽天さんとはECCとの信頼関係があることも大きい。岩本さんには『この商品をこの価格で出せばこれくらい売れる』とか『価格をもう少し上げても売り上げは落ちない』とか、正確な情報をいつももらっている」
 
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