靴とファッションのネット販売を手がけるロコンドは5月12日、伊藤忠商事と「リーボック」の日本事業についてサブライセンス契約を締結したほか、今年10月にはロコンド66%、伊藤忠34%の出資比率で合弁会社を設立し、「リーボック」の日本事業を共同で展開する。合弁会社の資本金は未定だが、オンライン・オフライン含め、小売りベースで100億円規模の「リーボック」日本事業を引き継ぎ、ブランド価値の向上を図る。
今回、米オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG社)と伊藤忠が「リーボック」日本事業に関するマスターライセンス契約を締結。ロコンドは伊藤忠とサブライセンス契約を結び、「リーボック」の靴についてはオンライン、オフラインで独占的に販売できるようになる。
また、ロコンドの生産背景を活用して「リーボック」のブランド名を冠した靴のライセンス商品を生産できる権利も獲得した。
伊藤忠との合弁会社を10月1日にスタートし、現在、「リーボック」の日本事業を運営するアディダスジャパンから当該事業を継承する予定だ。合弁会社はロコンドグループの連結子会社となる。
これにより、ロコンドは自社でブランド運営を行うブランド事業が大幅に強化できるだけでなく、「リーボック」国内公式通販サイトの運営を含め、ロコンドグループで取り扱う「リーボック」商品の種類、在庫量が大幅に増えることで、主軸であるEC事業の取扱高拡大も図れる。
加えて、ブランド自社ECの構築・運営支援サービス「ボエム」や物流受託サービス「e―3PL」、店舗用のPOSシステム「ロコポス」といったロコンドが提供するBtoBサービスを「リーボック」に全面導入することで、プラットフォーム事業を強化できると判断した。
合弁会社が継承する「リーボック」日本事業は100億円規模で、半分程度がECチャネルの売り上げと見られることから、今回、靴のECノウハウに長けたロコンドに白羽の矢が立ったようだ。
合弁会社ではECチャネルに加え、「リーボック」の直営店と卸ビジネスも引き継ぐ。ロコンドではブランドのDX化とOMOを実現するプラットフォームサービスを数多く手がけており、それらを全面的に「リーボック」に活用。同ブランドの生産性と利益率を高めることで、さらなるECと実店舗の強化につなげたい考え。
なお、ロコンドは今回の契約締結に伴い、「リーボック」の影響を織り込んだ今期の連結業績予想と3カ年新中期計画を発表。2022年2月期の商品取扱高212億円に対し、23年2月期は255億円、24年2月期は325億円、最終年となる25年2月期には400億円とする"GMV(取扱高)倍増計画"を打ち出した。3年後の400億円のうち、リーボック事業で約80億円(20%前後)を占める見込みだ。
日本事業の5割がEC販路、「ロコンドとシナジー高い」
【ロコンドの田中社長に聞く リーボック販売権取得の背景】
ロコンドの田中裕輔社長(
写真)に、「リーボック」日本事業の継承について聞いた。
――大型案件を決めた。
「事業規模も大きいし、世の中へのインパクトも大きいと思う。『リーボック』は大好きなブランドだし、ポテンシャルも高いので、今回の話を頂いて本当にワクワクしている」
――ABG社と伊藤忠から今回のオファーが届いた。
「ABGさんが伊藤忠さんと『リーボック』日本事業のマスターライセンス契約を結び、今後のブランド運営のあり方を考えたときに、『リーボック』は日本事業の売り上げの約半分がECで、”靴×ECに強い”という観点で当社を選んでもらえた」
――これまで伊藤忠との取り引きは。
「伊藤忠さんがライセンスを持つ複数ブランドの自社ECを当社が運営支援したり、物流面を支援したりしている。そうした取り組みを評価してもらえたことも今回につながっていると思う」
――アディダスジャパンから実店舗も継承する。
「継承するのは直営9店舗になる。『リーボック』の実店舗はアディダスさんとの複合店舗が多い。そうした店舗は継承の対象外だ。当社は店舗運営の経験が豊富ではないので、9店舗くらいがちょうど良いと思う」
――現状の事業規模は。
「合弁会社が継承するのは小売り換算で100億円規模になる。そのうち、実店舗9店舗で10%前後、ECチャネルが50%程度、残りの約40%が卸となる」
――伊藤忠が5年後に小売り換算で200億円を掲げた。
「その中心は当社との合弁会社になるが、アパレル領域などで伊藤忠さんが外部企業とサブライセンス契約を結んで展開する部分も含まれている」
――ECチャネルの在庫配分も管理できる。
「『リーボック』の露出や認知の観点からあまり極端なことをするつもりはないが、合弁会社の社長は私が兼任する予定だ。『ロコンド』と当社が運営することになる『リーボック』の公式ECでしっかり売り上げを作っていきたいという気持ちはある」
――今回の件はメリットが多い。
「
当社ブランド事業への貢献はもちろん、『ロコンド』の売り上げも間違いなく伸びるし、当社のBtoBサービスを全面的に活用することでプラットフォーム事業の売り上げにも寄与するので、メリットしかない。10月には『リーボック』の自社EC構築と運営支援や物流の部分もすべて引き受けることになる」
「『リーボック』は自社EC比率も高く、プラットフォーム事業へのインパクトは大きい。『ロコンド』ではこれまで『リーボック』商品の在庫確保が十分ではなかった。倉庫業務も担うことで在庫量が一気に増える」
――物流拠点への影響は。
「ECだけでなく、卸や店舗用の在庫も当社の『ロコポート』で管理するので在庫量は一気に増えるが、倉庫の大幅な拡張を進めてきたことが奏功しそうだ」
――商品の仕入れについては。
「ABGさんは米国に『リーボック』のグローバルR&Dセンターを開設して商品開発を強化している。センターで生産された商品を合弁会社が日本に輸入して販売するのがメインだ。当社の生産背景を活用して『リーボック』の靴を開発する権利も得たが、具体的にはまだ動いていない」
――一旦、M&Aは落ち着くのか。
「2030年度に取扱高1000億円というロコンドグループの経営目標を達成するためにはブレーキを踏んではいられない」
今回、米オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG社)と伊藤忠が「リーボック」日本事業に関するマスターライセンス契約を締結。ロコンドは伊藤忠とサブライセンス契約を結び、「リーボック」の靴についてはオンライン、オフラインで独占的に販売できるようになる。
また、ロコンドの生産背景を活用して「リーボック」のブランド名を冠した靴のライセンス商品を生産できる権利も獲得した。
伊藤忠との合弁会社を10月1日にスタートし、現在、「リーボック」の日本事業を運営するアディダスジャパンから当該事業を継承する予定だ。合弁会社はロコンドグループの連結子会社となる。
これにより、ロコンドは自社でブランド運営を行うブランド事業が大幅に強化できるだけでなく、「リーボック」国内公式通販サイトの運営を含め、ロコンドグループで取り扱う「リーボック」商品の種類、在庫量が大幅に増えることで、主軸であるEC事業の取扱高拡大も図れる。
加えて、ブランド自社ECの構築・運営支援サービス「ボエム」や物流受託サービス「e―3PL」、店舗用のPOSシステム「ロコポス」といったロコンドが提供するBtoBサービスを「リーボック」に全面導入することで、プラットフォーム事業を強化できると判断した。
合弁会社が継承する「リーボック」日本事業は100億円規模で、半分程度がECチャネルの売り上げと見られることから、今回、靴のECノウハウに長けたロコンドに白羽の矢が立ったようだ。
合弁会社ではECチャネルに加え、「リーボック」の直営店と卸ビジネスも引き継ぐ。ロコンドではブランドのDX化とOMOを実現するプラットフォームサービスを数多く手がけており、それらを全面的に「リーボック」に活用。同ブランドの生産性と利益率を高めることで、さらなるECと実店舗の強化につなげたい考え。
なお、ロコンドは今回の契約締結に伴い、「リーボック」の影響を織り込んだ今期の連結業績予想と3カ年新中期計画を発表。2022年2月期の商品取扱高212億円に対し、23年2月期は255億円、24年2月期は325億円、最終年となる25年2月期には400億円とする"GMV(取扱高)倍増計画"を打ち出した。3年後の400億円のうち、リーボック事業で約80億円(20%前後)を占める見込みだ。
日本事業の5割がEC販路、「ロコンドとシナジー高い」
【ロコンドの田中社長に聞く リーボック販売権取得の背景】
ロコンドの田中裕輔社長(写真)に、「リーボック」日本事業の継承について聞いた。
――大型案件を決めた。
「事業規模も大きいし、世の中へのインパクトも大きいと思う。『リーボック』は大好きなブランドだし、ポテンシャルも高いので、今回の話を頂いて本当にワクワクしている」
――ABG社と伊藤忠から今回のオファーが届いた。
「ABGさんが伊藤忠さんと『リーボック』日本事業のマスターライセンス契約を結び、今後のブランド運営のあり方を考えたときに、『リーボック』は日本事業の売り上げの約半分がECで、”靴×ECに強い”という観点で当社を選んでもらえた」
――これまで伊藤忠との取り引きは。
「伊藤忠さんがライセンスを持つ複数ブランドの自社ECを当社が運営支援したり、物流面を支援したりしている。そうした取り組みを評価してもらえたことも今回につながっていると思う」
――アディダスジャパンから実店舗も継承する。
「継承するのは直営9店舗になる。『リーボック』の実店舗はアディダスさんとの複合店舗が多い。そうした店舗は継承の対象外だ。当社は店舗運営の経験が豊富ではないので、9店舗くらいがちょうど良いと思う」
――現状の事業規模は。
「合弁会社が継承するのは小売り換算で100億円規模になる。そのうち、実店舗9店舗で10%前後、ECチャネルが50%程度、残りの約40%が卸となる」
――伊藤忠が5年後に小売り換算で200億円を掲げた。
「その中心は当社との合弁会社になるが、アパレル領域などで伊藤忠さんが外部企業とサブライセンス契約を結んで展開する部分も含まれている」
――ECチャネルの在庫配分も管理できる。
「『リーボック』の露出や認知の観点からあまり極端なことをするつもりはないが、合弁会社の社長は私が兼任する予定だ。『ロコンド』と当社が運営することになる『リーボック』の公式ECでしっかり売り上げを作っていきたいという気持ちはある」
――今回の件はメリットが多い。
「当社ブランド事業への貢献はもちろん、『ロコンド』の売り上げも間違いなく伸びるし、当社のBtoBサービスを全面的に活用することでプラットフォーム事業の売り上げにも寄与するので、メリットしかない。10月には『リーボック』の自社EC構築と運営支援や物流の部分もすべて引き受けることになる」
「『リーボック』は自社EC比率も高く、プラットフォーム事業へのインパクトは大きい。『ロコンド』ではこれまで『リーボック』商品の在庫確保が十分ではなかった。倉庫業務も担うことで在庫量が一気に増える」
――物流拠点への影響は。
「ECだけでなく、卸や店舗用の在庫も当社の『ロコポート』で管理するので在庫量は一気に増えるが、倉庫の大幅な拡張を進めてきたことが奏功しそうだ」
――商品の仕入れについては。
「ABGさんは米国に『リーボック』のグローバルR&Dセンターを開設して商品開発を強化している。センターで生産された商品を合弁会社が日本に輸入して販売するのがメインだ。当社の生産背景を活用して『リーボック』の靴を開発する権利も得たが、具体的にはまだ動いていない」
――一旦、M&Aは落ち着くのか。
「2030年度に取扱高1000億円というロコンドグループの経営目標を達成するためにはブレーキを踏んではいられない」