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「甲羅組」の伝食 新倉庫開設でコスト削減、カニ価格が急騰、ワインなど商材も

2022年 3月 3日 13:00

 カニなどを販売する「越前かに職人甲羅組」の伝食では、仮想モール「楽天市場」の優秀店舗を表彰する「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)2021」において、5位に入賞した。

 同社はSOY2020においては10位に入賞しており、順位を大きく上げたことになる。田辺晃司社長は「売り上げ・販売数ともに大きく伸びており、主力商材であるカニの販売が好調だった。カニのオフシーズンにあたる時期も、ウナギやホタテといった海産物が売れたほか、水産品以外でも黒毛和牛など、新規で取り扱いを開始した商材についても、ギフト需要を取り込んで大きく伸びた」と振り返る。

 新規顧客数については一昨年の方が多く、昨年は前年比20~30%減だったという。売り上げが伸びた要因は、コロナ禍1年目の2020年に獲得した顧客がリピーターに転換し、単価も増えたことが大きい。商品の品質はサービスを高いレベルで維持している点が、高いリピート率の秘けつだという。

 ただ足元の業績に関しては、昨年12月にカニの大幅値上げを余儀なくされたこともあり「ここまでのトレンドに急ブレーキがかかった感がある。年初からの動きも鈍い」(田辺社長)。

 近年、カニの相場は値上がりを続けていたものの、安い仕入れルートを確保していたこともあり、同店では大きな値上げをしていなかった。ただ、12月に入ってからは「企業努力では吸収できないほど相場が高騰した」(同)。値上げ幅は平均で1・5倍、大きいサイズのカニは収穫量が少ないことから、約2倍まで値上がりしている。

 田辺社長は「楽天市場においても、今年はカニを販売する店舗が減るのではないか。ただ、当店はカニを無くすわけにはいかないので、高くても仕入れざるを得ない」とため息をつく。

 ズワイガニの仕入れ値は、コロナ禍以前は1キロ2000円程度だったが、21年初頭は同2500円に、春頃には同3000円を超えた。現在は同4000円代後半から5000円、大きいサイズは同5500円まで達しているという。

 相場高騰の原因は、近年アメリカや中国においてカニの需要が高まっており、日本の市場に回ってくるカニの量が減っていることだ。特にアメリカでは、新型コロナウイルス対策の給付金が支給され、「これがカニの消費にも回っているのではないか」(同)。そのため、今後は相場が下落する可能性はあるものの、コロナで物流が滞留していることもあり、今年の年末商戦は高騰した価格で仕入れたカニを販売せざるを得ない可能性が高い。

 田辺社長は「もう販売する店舗が減るのであれば、当店では量を仕入れて売ろうと考えている。価格は上がったとしても『やっぱり冬はカニを食べたい』という消費者は多いはず」と強気だ。

 その後押しとなるのが、新たな冷凍冷蔵対応の倉庫だ。今年9月には、33億円を投資した、ふるさと納税用の水産加工工場と物流センターが敦賀市内で稼働を開始する。物流センターに関しては、従来からキャパシティーが3倍以上になることもあり、5%程度の原価削減が見込めるという。

 冷凍倉庫対応は全国で不足していることから、自社で保有し、一括で管理できるのは大きなコストメリットにつながる。また、カニをなるべく安い価格で仕入れられるよう、仕入れ時期の見極めに注意を払うほか、「コロナ禍による、今までECを利用したことが無かった人の流入は一巡した感がある」(田辺社長)ことから、仮想モール内広告の出稿だけではなく、テレビCMの放映なども検討する。

 新物流センターには動画編集室なども設ける予定で、新たな人材を採用し、情報発信をしていく予定だ。「5GやAI、メタバースなど、ECのありかたはここ数年でがらっと変わるのではないか。私がECの世界に入ったのは2000年代前半なので、今までのやり方に固執してしまう部分があると思う。新たな情報発信の手段など、若い人たちにチャレンジしてもらいたい」(同)。

 2022年9月期の売上高は、前期比でトントンを目標とする。同社の場合、11~12月のカニ需要期で稼ぐスタイルだが、近年は和牛の販売を始めたほか、ナッツやサプリメントなどを販売する「祖の食庵」を立ち上げるなど、商材を拡充している。今後は食肉専門店やワイン専門店なども立ち上げを計画しており、今後は直貿や商社的な役割を果たす部門の立ち上げも考えているという。田辺社長は「食全般を扱う会社にしたい。食品のEC化率はまだまだ低く、伸びる余地は大きくあるだろう」と話す。現在の売上高は100億円程度だが、「新たな拠点を作ったからには最低300億円にはしたいし、ゆくゆくは500億円、1000億円規模まで成長させたい」と意気込む。

 
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