キューサイは、青汁原料に使うケールの魅力発信に向け、新事業を立ち上げる。生鮮ケールについて初めて一般流通による販売を行うほか、離乳食・幼児食への活用を通じて子育て世代など20~40代の顧客層の獲得を進める。多様なライフスタイルに応じてケールの提供価値を幅広い層に提供し、前向きに年を重ねる「ウェルエイジング」を支援する(
写真はキューサイの神戸聡社長㊧とアンバサダーに就任した俳優の池内博之さん)。
キューサイは、来年40周年を迎える。コロナ禍で内食比率や健康意識が高まり、食材へのこだわりも強まる中、農薬・化学肥料を使わず自社農場で栽培するケールの魅力を多様な形で提供する。新事業は、「摂り方」「顧客層」「体験価値」の3軸の拡大で進める。
「摂り方の拡大」では、初めてケール葉の一般流通を始める。12月2日から、生鮮ケール(1キログラム、税込2160円)を自社通販のほか、オンラインマルシェを運営するポケットマルシェの通販サイトで販売する。販売時期は、ケールの栄養価が高まる12~3月下旬、4~5月下旬の旬の時期を予定する。
ポケットマルシェは、農家や漁師から旬の食材を直接購入できるプラットフォーム。登録農家・漁師は約6200人。コロナ禍で関心が高まり、ユーザー数は約8倍、注文数はピーク時に約20倍になり、約41万人の消費者が利用するなど急成長する。
「顧客層の拡大」は、離乳食や幼児食へのケールの活用を通じて目指す。農薬不使用の野菜や有機野菜を使った無添加離乳食・幼児食を展開するベベジャポンとコラボレーション商品を開発。12月3日から、同社のサイト等でケール粉末を使った離乳食(20グラム×4袋、税込620円~)や生鮮ケールを使った離乳食を発売する。
現在の顧客基盤は、青汁や健康食品、化粧品の利用者を中心に60代以降が大半を占める。子供の成長過程や乳幼児期、妊娠期等にも適した栄養成分を豊富に含むケールを使った新商品の展開で、子育て世代にアプローチする。
「体験機会の拡大」は、アンバサダーを通じた魅力発信により行う。12月5日を期限に「ケールアンバサダー」の募集を行っており、毎月、ケール商品を提供するほか、収穫期は生鮮ケールを提供。レシピや投稿画像を公式SNSや企業サイト、CMで紹介していく。また、イベントへの優先招待や農場・工場見学なども予定する。
第1期の活動期間は、来年1~4月の約4カ月間。以降も継続的にアンバサダーを募集していく。
著名人を起用した「スペシャルケールアンバサダー」も展開する。第1弾は、農業にも取り組む俳優の池内博之さんを起用。今後、レシピ部門、ビューティー部門など各部門で起用を進め、ケールの魅力を発信していく。
キューサイは19年、「青汁事業」から「ケール事業」への転換を発表。青汁にとどまらないケールの魅力発信を通じて健康・QOLの向上を目指し、商品ラインアップや事業戦略の見直しを進めてきた。
多様な体験機会を提供、信頼感高め全体の底上げ図る
<キューサイの神戸社長に聞く 40周年新事業の狙い>
キューサイの神戸聡社長に「ケール」を軸とした事業転換の進捗、新事業立ち上げの狙いを聞いた。
――ここ数年で青汁の法人向け展開、コラボレーションなど体験機会の拡大に向けた取り組みを行ってきた。顧客基盤の変化は。
「国内のケールの認知は徐々に高まっているがこれから。(若年層が)業績に大きなインパクトを与える段階にはまだない。認知率とともに喫食率の指標も重視している。課題でもあり、新事業の中で生鮮ケールの提供に取り組む」
――これまでの取り組みはどう評価している。
「サペレ(五感を通じて食材に親しみを持たせる食育の新たな手法)のイベントはとくに反響が強かった。野菜嫌いの子供の増加、共働き世帯の増加といった世情の中で、母親と子供が野菜を通じてコミュニケーションの機会を持てたことに喜びの声をいただけた。粉末ケールの料理への活用などは提案してきたが、青汁という形ではなく、野菜として摂ってもらうことに対するSNSの反響は広がっている」
――多様な体験機会の提供で顧客の声に変化はある。
「SNSの発信を起点に購入してくださる方もいる。数値の評価は難しいが、業績への反映は着実に出てきている」
――新事業で取り組むアンバサダーの募集の進捗は。
「第1期は40人を募集する。開始2日で想定を超える800人の応募がきている」
――取り組みの狙いは。
「購入のきっかけとしてSNS等を通じたくちコミの影響が大きくなっている背景もあるが、自分達で作っている商品が安心・安全で誇れるものであり、くちコミの中で紹介いただいても世の中に迷惑をかけるようなものではないと考えている」
――他社とのコラボレーションも積極的に行う。競争環境が激化する中で必要性も強まっているか。
「そう感じる。新事業もそうだが、きちんとファンを持たれているところであれば、適切な専門家が商品を勧めていただける。連携先がどのようなファンを持つ企業であるかが重要と考えている」
――来年40周年を迎える。改めてキューサイの強みは何か。
「顧客の声に耳を傾けることは一貫して大切にしてきた。商品だけのつながりではなく、ファンになってもらうことが大切だと考えている。アンバサダーの取り組みもその一環だが、その源泉は顧客の声に耳を傾けること」
「青汁で健康になったという感謝の声をいただく中で、関節に不安があり元気に動き回れない、といった声を起点に『ひざサポートコラーゲン』を開発した。歩けるようになったが外出の際にきれいな素肌でいたい、といった悩みを受けて、関節ケアで蓄積したコラーゲンの知見を活用して『コラリッチ』が生まれた。すべて顧客の声がベースだと考えている」
――ユーグレナの傘下に入った。社内の変化やプラス影響は。
「すでに製販分野で事業シナジーも生まれている。それだけではなく、人材交流の中で外部の視点を知る機会になっている。ユーグレナ社は『サステナビリティ・ファースト』という理念の中で社会に貢献していく会社を目指している。キューサイの中でもそうした文化が醸成されつつある。独自に『ウェルエイジング支援』を掲げているが、より明確に意識するようになった」
――現状の課題は。
「キューサイが青汁だけの会社ではなく、ウェルエイジング支援の会社であるということをもっと早く広げていく必要がある。キューサイに対する信頼感が高まれば、自ずとほかの商品を含めた全体の底上げにつながる」
――ウェルエイジング支援に向けた取り組みは。
「製品ラインアップの見直しも今後取り組む。コロナ禍で睡眠の質の低下、関節の悩みを持つ層も増えた。不安の中で少し後ろ向きになりがちな方が前向きに過ごせるようになることを基準に商品開発にあたりたい」
――新型コロナの業績への影響は。
「コロナの影響によるプラスマイナスはない。今期は増収の見込み。従業員の頑張りを受けた結果だと考えている」
――海外展開は。
「もう少しベースの体力をつけて検討していきたい」
キューサイは、来年40周年を迎える。コロナ禍で内食比率や健康意識が高まり、食材へのこだわりも強まる中、農薬・化学肥料を使わず自社農場で栽培するケールの魅力を多様な形で提供する。新事業は、「摂り方」「顧客層」「体験価値」の3軸の拡大で進める。
「摂り方の拡大」では、初めてケール葉の一般流通を始める。12月2日から、生鮮ケール(1キログラム、税込2160円)を自社通販のほか、オンラインマルシェを運営するポケットマルシェの通販サイトで販売する。販売時期は、ケールの栄養価が高まる12~3月下旬、4~5月下旬の旬の時期を予定する。
ポケットマルシェは、農家や漁師から旬の食材を直接購入できるプラットフォーム。登録農家・漁師は約6200人。コロナ禍で関心が高まり、ユーザー数は約8倍、注文数はピーク時に約20倍になり、約41万人の消費者が利用するなど急成長する。
「顧客層の拡大」は、離乳食や幼児食へのケールの活用を通じて目指す。農薬不使用の野菜や有機野菜を使った無添加離乳食・幼児食を展開するベベジャポンとコラボレーション商品を開発。12月3日から、同社のサイト等でケール粉末を使った離乳食(20グラム×4袋、税込620円~)や生鮮ケールを使った離乳食を発売する。
現在の顧客基盤は、青汁や健康食品、化粧品の利用者を中心に60代以降が大半を占める。子供の成長過程や乳幼児期、妊娠期等にも適した栄養成分を豊富に含むケールを使った新商品の展開で、子育て世代にアプローチする。
「体験機会の拡大」は、アンバサダーを通じた魅力発信により行う。12月5日を期限に「ケールアンバサダー」の募集を行っており、毎月、ケール商品を提供するほか、収穫期は生鮮ケールを提供。レシピや投稿画像を公式SNSや企業サイト、CMで紹介していく。また、イベントへの優先招待や農場・工場見学なども予定する。
第1期の活動期間は、来年1~4月の約4カ月間。以降も継続的にアンバサダーを募集していく。
著名人を起用した「スペシャルケールアンバサダー」も展開する。第1弾は、農業にも取り組む俳優の池内博之さんを起用。今後、レシピ部門、ビューティー部門など各部門で起用を進め、ケールの魅力を発信していく。
キューサイは19年、「青汁事業」から「ケール事業」への転換を発表。青汁にとどまらないケールの魅力発信を通じて健康・QOLの向上を目指し、商品ラインアップや事業戦略の見直しを進めてきた。
多様な体験機会を提供、信頼感高め全体の底上げ図る
<キューサイの神戸社長に聞く 40周年新事業の狙い>
キューサイの神戸聡社長に「ケール」を軸とした事業転換の進捗、新事業立ち上げの狙いを聞いた。
――ここ数年で青汁の法人向け展開、コラボレーションなど体験機会の拡大に向けた取り組みを行ってきた。顧客基盤の変化は。
「国内のケールの認知は徐々に高まっているがこれから。(若年層が)業績に大きなインパクトを与える段階にはまだない。認知率とともに喫食率の指標も重視している。課題でもあり、新事業の中で生鮮ケールの提供に取り組む」
――これまでの取り組みはどう評価している。
「サペレ(五感を通じて食材に親しみを持たせる食育の新たな手法)のイベントはとくに反響が強かった。野菜嫌いの子供の増加、共働き世帯の増加といった世情の中で、母親と子供が野菜を通じてコミュニケーションの機会を持てたことに喜びの声をいただけた。粉末ケールの料理への活用などは提案してきたが、青汁という形ではなく、野菜として摂ってもらうことに対するSNSの反響は広がっている」
――多様な体験機会の提供で顧客の声に変化はある。
「SNSの発信を起点に購入してくださる方もいる。数値の評価は難しいが、業績への反映は着実に出てきている」
――新事業で取り組むアンバサダーの募集の進捗は。
「第1期は40人を募集する。開始2日で想定を超える800人の応募がきている」
――取り組みの狙いは。
「購入のきっかけとしてSNS等を通じたくちコミの影響が大きくなっている背景もあるが、自分達で作っている商品が安心・安全で誇れるものであり、くちコミの中で紹介いただいても世の中に迷惑をかけるようなものではないと考えている」
――他社とのコラボレーションも積極的に行う。競争環境が激化する中で必要性も強まっているか。
「そう感じる。新事業もそうだが、きちんとファンを持たれているところであれば、適切な専門家が商品を勧めていただける。連携先がどのようなファンを持つ企業であるかが重要と考えている」
――来年40周年を迎える。改めてキューサイの強みは何か。
「顧客の声に耳を傾けることは一貫して大切にしてきた。商品だけのつながりではなく、ファンになってもらうことが大切だと考えている。アンバサダーの取り組みもその一環だが、その源泉は顧客の声に耳を傾けること」
「青汁で健康になったという感謝の声をいただく中で、関節に不安があり元気に動き回れない、といった声を起点に『ひざサポートコラーゲン』を開発した。歩けるようになったが外出の際にきれいな素肌でいたい、といった悩みを受けて、関節ケアで蓄積したコラーゲンの知見を活用して『コラリッチ』が生まれた。すべて顧客の声がベースだと考えている」
――ユーグレナの傘下に入った。社内の変化やプラス影響は。
「すでに製販分野で事業シナジーも生まれている。それだけではなく、人材交流の中で外部の視点を知る機会になっている。ユーグレナ社は『サステナビリティ・ファースト』という理念の中で社会に貢献していく会社を目指している。キューサイの中でもそうした文化が醸成されつつある。独自に『ウェルエイジング支援』を掲げているが、より明確に意識するようになった」
――現状の課題は。
「キューサイが青汁だけの会社ではなく、ウェルエイジング支援の会社であるということをもっと早く広げていく必要がある。キューサイに対する信頼感が高まれば、自ずとほかの商品を含めた全体の底上げにつながる」
――ウェルエイジング支援に向けた取り組みは。
「製品ラインアップの見直しも今後取り組む。コロナ禍で睡眠の質の低下、関節の悩みを持つ層も増えた。不安の中で少し後ろ向きになりがちな方が前向きに過ごせるようになることを基準に商品開発にあたりたい」
――新型コロナの業績への影響は。
「コロナの影響によるプラスマイナスはない。今期は増収の見込み。従業員の頑張りを受けた結果だと考えている」
――海外展開は。
「もう少しベースの体力をつけて検討していきたい」