スクロールは茨城県つくばみらい市に、物流センター「スクロールロジスティクスセンターみらい(SLCみらい)」(
写真㊤)を建設し、5月20日から稼働を開始した。地上5階建てで延べ床面積は約3万平方メートル。保管効率を高めた「ストックエリア」のほか、当日配送に対応した「クロスドックエリア」、受注問い合わせ処理やコールセンター機能を持たせた「インテリジェントエリア」を設けているほか、データ管理・分析、画像分析による最適導線などのマーケティング機能、化粧品製造、ささげ(撮影、採寸、原稿作成)機能などを備えた。
関東地方では初の物流センターとなる「SLCみらい」。既存の浜松市・大阪市のセンターとあわせて、関東圏にも物流センターを設けることで、全国3大拠点の物流ネットワークを構築することになる。
ソリューション事業を手掛ける子会社である、スクロール360取締役営業部長でSLCみらい推進室長の鈴木康晴氏(
写真㊦右側)は「2年くらいで満床にしていきたい」と意欲的に語る。ムトウマーケティングサポート時代から長い間物流代行を手掛けてきた同社だが、これまでは主に浜松市内の物流センターから出荷していた。2018年にはミネルヴァ・ホールディングス(現ナチュラム)を買収したことで、大阪市内にも物流センターを保有する形となっている。
鈴木氏は「以前から『関東に物流センターはないのか』という問い合わせはいただいていた」と明かす。浜松市は本州のほぼ中央に位置することから、消費者が多く住んでいる関東地方や関西地方に出荷するには利便性が高い。しかし、2011年の東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)対策として、在庫を各地の物流センターに分散して置きたいというニーズが強まってきたという。
もう1つ、関東地方への開業を後押ししたのが、昨今の宅配運賃値上げだ。「以前は物流費に占める運賃の割合は40%程度だったが、どんどん上がっている。ネット販売企業の間で運賃を最適化する動きが広がっている」(鈴木取締役)。
例えばメインの物流センターを九州に構えている化粧品・健康食品通販企業の場合、メインの商品とトライアル商品を大消費地である関東の物流センターに置くことができれば、運賃は劇的に下がる。さらに、関東地方のバラエティーショップなどに商品を多く卸しているネット販売企業からの要望もあったという。
これまでも小規模な物流センターを関東地方に賃貸で構えていたが、こうした動きを受けて本格的な物流センターを作ることになった。関東へのセンター開設を決めたのは2017年のこと。
問題は自社物件か賃貸かという部分だが「これまで自社のアセットを活用してきたので、今回も思う通りの物流センターを作りたいと考えて、センターを建設することにした」(同)。つくばみらい市は常磐道と圏央道が交差する地点に近いため利便性が高く、鉄道ではつくばエクスプレスの駅があり、労働人口も増えている。大消費地である東京からもあまり遠くなく、東京に本社を構える企業が物流センターを見学したい場合でも、さほど時間をかけずに訪れることができるというメリットもある。
付帯業務も対応
同社のソリューションサービスの強みについて、鈴木取締役は「企業からのニーズはその会社によるので、切り口はさまざま。今回のセンターに関しては、拠点を分散したい会社には向いているし、サテライトとして関東地方に荷物を置きたい会社にもちょうどいいのではないか。当社の場合は、リピート通販のノウハウが溜まっているのが大きな特徴なので、それ部分を重視して声をかけてもらうことが多い。また、通販だけではなく、関東地方に多くの実店舗を有している企業にとっても使いやすいのではないか。新センターとしては、これまでのリピート通販向けノウハウを引き継ぎながら、さらに進化させたいと思っている。自動化などの最新技術を導入するとともに、人の手を介さなければならないアナログな部分も強みとして活かしていきたい」と話す。
同社グループには、アウトドア商品のネット販売を手掛けるナチュラムもあるので、ロングテール系商材にもノウハウがある。こうした企業が使うことを想定して、バックオフィス業務であるささげや受注処理、問い合わせ処理といった付帯業務などもセンター内で受けることもできる。「物流センターというだけではなく、通販業務を総合的に扱うフルフィルメントセンターにしていきたい。また、これまではコンサルティング業務はあまり手掛けていなかったが、今後はやっていきたい」(同)。
リピート通販企業にとっての大きな課題は、ライフ・タイム・バリュー(LTV)の最大化だが、LTV関連の数値はどの企業でも基幹システムに入っている。こうしたデータの分析とマーケティングオートメーション(MA)ツール開発を進めている。これらのツールと、物流を中心としたフルフィルメントをつなげることでサービス展開していきたい考えだ。
鈴木取締役は「ロジスティクスとマーケティングを紐付けるための取り組みを進めることで、次世代CRM物流を展開し、クライアントの成長に寄与したい」と構想を語る。スクロールグループのもしもでは近年、アフィリエイト事業に注力しており、ベンダーとアフィリエイターやブロガーをマッチングさせるプラットフォームを展開している。ITに強い、もしものノウハウも取り入れることで、データ関連事業を強化していく。
さらに鈴木取締役は「スクロールグループには、この10年でさまざまな企業が傘下に入った。ネット販売企業もあればリピート通販企業もあり、グループ会社の荷物を請け負うことで当社もさまざまなノウハウを得ることができた。通販のダイバーシティー企業になってきたのではないか」と語る。
自動化も推進
ロボットを使った自動化なども進めていく。スクロール360フルフィルメント部ロジサポート第2課長の栗林輝広氏(
写真㊦左側)は「新しいことに挑戦したいとは思っているが、ロボットでどこまで作業効率を上げられるのか、不透明な部分も多いし、ある意味実験用の『モルモット』になる部分もある。ある程度こなれた技術をうまく使っていくのは重要ではないか」と話す。
例えば自動のシュリンク包装機などは、さまざまなメーカーが参入したことで価格が下がり、技術的にはやや「枯れてきた」感があるという。これまで手で梱包していたものを機械に切り替えることで人件費削減につなげる。また、新しいマテハンについても導入を検討する。SLCみらいは稼働からまだ2カ月程度しか経過しておらず、全体の10%程度しか使っていない状況だ。荷物の増加にあわせて、自動化も進めていく。
これまで、浜松市の物流センターは人の手を介する部分が多かった。「高年齢の顧客が多いクライアントが目立ち、シュリンクでの梱包を嫌がるクライアントもあり、導入を見送っていた。ただ、直近ではコロナ禍があり、将来的には少子高齢化がどんどん進んで労働人口が減るのは確実なので、自動化へのシフトは進めていきたい」(栗林課長)。
2021年3月をめどに、クライアントの商材や特性にあわせた機械を導入する。「ある一定の売り上げ規模があれば、そのクライアント専用のラインが作れる。『クライアントが当社の仕組みに合わせる』のではなく、『当社がクライアントに合わせる』段階なので、商談はしやすい状況だ」(鈴木取締役)。
一方で、規模の小さい企業向けにはパッケージサービスを用意する。これまで同社では個別クライアントにあわせて料金設定を決めていたが、今後は規模の大きいクライアントは個別対応、小規模事業者向けには専用の料金体系を用意していきたい考えだ。
近年は、アマゾンの「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」や楽天の「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」のように、プラットフォーマーが物流代行に力を入れている。鈴木取締役は「パッケージサービスについても、FBAやRSLよりも幅広いオプションを揃えたサービスにしていく。当社の場合、楽天市場で購入された商品であれば専用の箱で出荷するし、自社サイト向けも、自社サイト専用の箱で出荷できる。当社はマーケットプレイスではないので、自社が運営するマーケットの繁栄を考える必要がない。クライアントが成長するのであれば、販路はどこでも構わない」と強みを語る。
今後はスピード配送への対応も検討する。栗林課長は「人が確保しやすい日中に準備をして、夜間に梱包をすることも検討したい。ただ、当社の場合は定期販売を手掛けるクライアントが多いこともあり、スピード配送にどこまで需要があるかが問題になってくる」と話す。
関東地方では初の物流センターとなる「SLCみらい」。既存の浜松市・大阪市のセンターとあわせて、関東圏にも物流センターを設けることで、全国3大拠点の物流ネットワークを構築することになる。
ソリューション事業を手掛ける子会社である、スクロール360取締役営業部長でSLCみらい推進室長の鈴木康晴氏(写真㊦右側)は「2年くらいで満床にしていきたい」と意欲的に語る。ムトウマーケティングサポート時代から長い間物流代行を手掛けてきた同社だが、これまでは主に浜松市内の物流センターから出荷していた。2018年にはミネルヴァ・ホールディングス(現ナチュラム)を買収したことで、大阪市内にも物流センターを保有する形となっている。
鈴木氏は「以前から『関東に物流センターはないのか』という問い合わせはいただいていた」と明かす。浜松市は本州のほぼ中央に位置することから、消費者が多く住んでいる関東地方や関西地方に出荷するには利便性が高い。しかし、2011年の東日本大震災以降、BCP(事業継続計画)対策として、在庫を各地の物流センターに分散して置きたいというニーズが強まってきたという。
もう1つ、関東地方への開業を後押ししたのが、昨今の宅配運賃値上げだ。「以前は物流費に占める運賃の割合は40%程度だったが、どんどん上がっている。ネット販売企業の間で運賃を最適化する動きが広がっている」(鈴木取締役)。
例えばメインの物流センターを九州に構えている化粧品・健康食品通販企業の場合、メインの商品とトライアル商品を大消費地である関東の物流センターに置くことができれば、運賃は劇的に下がる。さらに、関東地方のバラエティーショップなどに商品を多く卸しているネット販売企業からの要望もあったという。
これまでも小規模な物流センターを関東地方に賃貸で構えていたが、こうした動きを受けて本格的な物流センターを作ることになった。関東へのセンター開設を決めたのは2017年のこと。
問題は自社物件か賃貸かという部分だが「これまで自社のアセットを活用してきたので、今回も思う通りの物流センターを作りたいと考えて、センターを建設することにした」(同)。つくばみらい市は常磐道と圏央道が交差する地点に近いため利便性が高く、鉄道ではつくばエクスプレスの駅があり、労働人口も増えている。大消費地である東京からもあまり遠くなく、東京に本社を構える企業が物流センターを見学したい場合でも、さほど時間をかけずに訪れることができるというメリットもある。
付帯業務も対応
同社のソリューションサービスの強みについて、鈴木取締役は「企業からのニーズはその会社によるので、切り口はさまざま。今回のセンターに関しては、拠点を分散したい会社には向いているし、サテライトとして関東地方に荷物を置きたい会社にもちょうどいいのではないか。当社の場合は、リピート通販のノウハウが溜まっているのが大きな特徴なので、それ部分を重視して声をかけてもらうことが多い。また、通販だけではなく、関東地方に多くの実店舗を有している企業にとっても使いやすいのではないか。新センターとしては、これまでのリピート通販向けノウハウを引き継ぎながら、さらに進化させたいと思っている。自動化などの最新技術を導入するとともに、人の手を介さなければならないアナログな部分も強みとして活かしていきたい」と話す。
同社グループには、アウトドア商品のネット販売を手掛けるナチュラムもあるので、ロングテール系商材にもノウハウがある。こうした企業が使うことを想定して、バックオフィス業務であるささげや受注処理、問い合わせ処理といった付帯業務などもセンター内で受けることもできる。「物流センターというだけではなく、通販業務を総合的に扱うフルフィルメントセンターにしていきたい。また、これまではコンサルティング業務はあまり手掛けていなかったが、今後はやっていきたい」(同)。
リピート通販企業にとっての大きな課題は、ライフ・タイム・バリュー(LTV)の最大化だが、LTV関連の数値はどの企業でも基幹システムに入っている。こうしたデータの分析とマーケティングオートメーション(MA)ツール開発を進めている。これらのツールと、物流を中心としたフルフィルメントをつなげることでサービス展開していきたい考えだ。
鈴木取締役は「ロジスティクスとマーケティングを紐付けるための取り組みを進めることで、次世代CRM物流を展開し、クライアントの成長に寄与したい」と構想を語る。スクロールグループのもしもでは近年、アフィリエイト事業に注力しており、ベンダーとアフィリエイターやブロガーをマッチングさせるプラットフォームを展開している。ITに強い、もしものノウハウも取り入れることで、データ関連事業を強化していく。
さらに鈴木取締役は「スクロールグループには、この10年でさまざまな企業が傘下に入った。ネット販売企業もあればリピート通販企業もあり、グループ会社の荷物を請け負うことで当社もさまざまなノウハウを得ることができた。通販のダイバーシティー企業になってきたのではないか」と語る。
自動化も推進
ロボットを使った自動化なども進めていく。スクロール360フルフィルメント部ロジサポート第2課長の栗林輝広氏(写真㊦左側)は「新しいことに挑戦したいとは思っているが、ロボットでどこまで作業効率を上げられるのか、不透明な部分も多いし、ある意味実験用の『モルモット』になる部分もある。ある程度こなれた技術をうまく使っていくのは重要ではないか」と話す。
例えば自動のシュリンク包装機などは、さまざまなメーカーが参入したことで価格が下がり、技術的にはやや「枯れてきた」感があるという。これまで手で梱包していたものを機械に切り替えることで人件費削減につなげる。また、新しいマテハンについても導入を検討する。SLCみらいは稼働からまだ2カ月程度しか経過しておらず、全体の10%程度しか使っていない状況だ。荷物の増加にあわせて、自動化も進めていく。
これまで、浜松市の物流センターは人の手を介する部分が多かった。「高年齢の顧客が多いクライアントが目立ち、シュリンクでの梱包を嫌がるクライアントもあり、導入を見送っていた。ただ、直近ではコロナ禍があり、将来的には少子高齢化がどんどん進んで労働人口が減るのは確実なので、自動化へのシフトは進めていきたい」(栗林課長)。
2021年3月をめどに、クライアントの商材や特性にあわせた機械を導入する。「ある一定の売り上げ規模があれば、そのクライアント専用のラインが作れる。『クライアントが当社の仕組みに合わせる』のではなく、『当社がクライアントに合わせる』段階なので、商談はしやすい状況だ」(鈴木取締役)。
一方で、規模の小さい企業向けにはパッケージサービスを用意する。これまで同社では個別クライアントにあわせて料金設定を決めていたが、今後は規模の大きいクライアントは個別対応、小規模事業者向けには専用の料金体系を用意していきたい考えだ。
近年は、アマゾンの「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」や楽天の「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」のように、プラットフォーマーが物流代行に力を入れている。鈴木取締役は「パッケージサービスについても、FBAやRSLよりも幅広いオプションを揃えたサービスにしていく。当社の場合、楽天市場で購入された商品であれば専用の箱で出荷するし、自社サイト向けも、自社サイト専用の箱で出荷できる。当社はマーケットプレイスではないので、自社が運営するマーケットの繁栄を考える必要がない。クライアントが成長するのであれば、販路はどこでも構わない」と強みを語る。
今後はスピード配送への対応も検討する。栗林課長は「人が確保しやすい日中に準備をして、夜間に梱包をすることも検討したい。ただ、当社の場合は定期販売を手掛けるクライアントが多いこともあり、スピード配送にどこまで需要があるかが問題になってくる」と話す。