ネットレンタルの分野で、じわじわと拡大しているのが「アパレル」だ。数年前から複数のサービスが立ち上がり、主に女性ユーザー向けに商品を提供。ストライプインターナショナルが展開する「メチャカリ」のほかにベンチャーのサービスも徐々に拡大を遂げている。ただ、撤退する企業も出るなどサービスを取り巻く環境はめまぐるしく動いている。
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2015年1月に始まったのが、エアークローゼットが運営するレディースアパレルレンタルサービス「エアークローゼット」。毎回3着を専用の箱に入れて送るというもので、月額6800円で月1回だけの「ライトプラン」と、同9800円で借り放題の「レギュラープラン」の2種類を用意している。
同社の天沼聰社長はサービス開始時を振り返って「そもそもファッションのレンタルをしたいと思って立ち上げたわけではない」と述べる。天沼社長は当初、日々の生活の中で感動や洋服との出会い体験をたくさん作ろうと考えたという。「場所を選ばずに出会ってもらいたかったので、店舗ではなくオンラインになった」(天沼社長)というわけだ。
「エアクロ」の特徴の1つがパーソナルスタイリング。同社には200人以上のスタイリストが在籍しており、ユーザー一人ひとりに対してそれぞれに合う着こなしを考案する。ユーザーが普段は選ばないようなブランドや色に出会ってもらうのが狙いだ。
同社では最近、ファッション以外の商材の開拓も進めている。その1つがエアウィーヴのマットレス。自宅で数日間試し、商品を体験して気に入ったら購入してもらう。マットレスは8月と10月に2度レンタルを実施したが、どちらも初日で予定数量に達した。そのほかにもダイソンのヘアードライヤーをレンタルし、2週間自宅で利用できるようにしたこともある。
マットレスもドライヤーも店頭で見るのと生活の中で体験するのとではユーザーの納得度は異なる。マットレスの寝心地や寝覚めの感覚、ドライヤーの髪の乾き具合などは実際に使ってみないとわからない。エアクロではレンタルサービスの特性を生かし、「試したい」というニーズに応えている。どちらの商品もレンタルだけでなく購入まで可能にしており、実際に商品を借りたユーザーが購入にまで到るケースは多いようだ。
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女性向けにアパレルのレンタルを行うのは「エアクロ」以外にもある。ただ、事業を継続するのは決して容易ではない。その証拠に、月額制のファッションレンタルサービス「エディストクローゼット」を運営していたenish(エニッシュ)が、12月1日付で同事業を譲渡している。
「エディスト」は「エアクロ」から1年後の16年1月にスタートしている。4アイテムを1セットにして月に1度届ける仕組み。貸し出す服はすべて自社企画によるオリジナルを売りにしていた。
ゲーム事業を柱とするエニッシュでは「エディスト」を認知させるには一定の投資が必要だったものの「経営資源の選択と集中の観点から」(同社)、同事業の売却を決めたという。譲渡先はオンライン予約サービスのアドベンチャーで、譲渡価格は3700万円。サービス名称は変えずにアドベンチャーが事業を続けていくようだ。
このようにサービスが立ち上がり浸透していく中で、事業から撤退するケースも生じている。
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参入企業の優勝劣敗を経ながら、ネットレンタルは徐々に広がりつつある。しかし、レンタルの拡大は通販企業にとって顧客を奪われることにつながらないのだろうか。これに対してエアクロの天沼社長は「出会いや体験のきっかけを増やすチャネルを『エアクロ』と捉えてもらえると、わかりやすい」と語る。
つまり「購入とレンタルのどちらかではなく、レンタルも販売チャネルの1つであり、顧客接点の1つ」(天沼社長)というのだ。
ということは、実店舗で商品に触れてみたりSNSで有名人の着こなしをチェックするのと同じように、今後はレンタルサービスで一度借りてみるというのが、購入前の行動として定着していくのだろうか。
もし仮にレンタルが1つの販売チャネルとして確立する日が来れば、通販との親和性も高いものになるのかもしれない。(
おわり)
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2015年1月に始まったのが、エアークローゼットが運営するレディースアパレルレンタルサービス「エアークローゼット」。毎回3着を専用の箱に入れて送るというもので、月額6800円で月1回だけの「ライトプラン」と、同9800円で借り放題の「レギュラープラン」の2種類を用意している。
同社の天沼聰社長はサービス開始時を振り返って「そもそもファッションのレンタルをしたいと思って立ち上げたわけではない」と述べる。天沼社長は当初、日々の生活の中で感動や洋服との出会い体験をたくさん作ろうと考えたという。「場所を選ばずに出会ってもらいたかったので、店舗ではなくオンラインになった」(天沼社長)というわけだ。
「エアクロ」の特徴の1つがパーソナルスタイリング。同社には200人以上のスタイリストが在籍しており、ユーザー一人ひとりに対してそれぞれに合う着こなしを考案する。ユーザーが普段は選ばないようなブランドや色に出会ってもらうのが狙いだ。
同社では最近、ファッション以外の商材の開拓も進めている。その1つがエアウィーヴのマットレス。自宅で数日間試し、商品を体験して気に入ったら購入してもらう。マットレスは8月と10月に2度レンタルを実施したが、どちらも初日で予定数量に達した。そのほかにもダイソンのヘアードライヤーをレンタルし、2週間自宅で利用できるようにしたこともある。
マットレスもドライヤーも店頭で見るのと生活の中で体験するのとではユーザーの納得度は異なる。マットレスの寝心地や寝覚めの感覚、ドライヤーの髪の乾き具合などは実際に使ってみないとわからない。エアクロではレンタルサービスの特性を生かし、「試したい」というニーズに応えている。どちらの商品もレンタルだけでなく購入まで可能にしており、実際に商品を借りたユーザーが購入にまで到るケースは多いようだ。
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女性向けにアパレルのレンタルを行うのは「エアクロ」以外にもある。ただ、事業を継続するのは決して容易ではない。その証拠に、月額制のファッションレンタルサービス「エディストクローゼット」を運営していたenish(エニッシュ)が、12月1日付で同事業を譲渡している。
「エディスト」は「エアクロ」から1年後の16年1月にスタートしている。4アイテムを1セットにして月に1度届ける仕組み。貸し出す服はすべて自社企画によるオリジナルを売りにしていた。
ゲーム事業を柱とするエニッシュでは「エディスト」を認知させるには一定の投資が必要だったものの「経営資源の選択と集中の観点から」(同社)、同事業の売却を決めたという。譲渡先はオンライン予約サービスのアドベンチャーで、譲渡価格は3700万円。サービス名称は変えずにアドベンチャーが事業を続けていくようだ。
このようにサービスが立ち上がり浸透していく中で、事業から撤退するケースも生じている。
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参入企業の優勝劣敗を経ながら、ネットレンタルは徐々に広がりつつある。しかし、レンタルの拡大は通販企業にとって顧客を奪われることにつながらないのだろうか。これに対してエアクロの天沼社長は「出会いや体験のきっかけを増やすチャネルを『エアクロ』と捉えてもらえると、わかりやすい」と語る。
つまり「購入とレンタルのどちらかではなく、レンタルも販売チャネルの1つであり、顧客接点の1つ」(天沼社長)というのだ。
ということは、実店舗で商品に触れてみたりSNSで有名人の着こなしをチェックするのと同じように、今後はレンタルサービスで一度借りてみるというのが、購入前の行動として定着していくのだろうか。
もし仮にレンタルが1つの販売チャネルとして確立する日が来れば、通販との親和性も高いものになるのかもしれない。(おわり)