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【三陽商会 EC事業の成長戦略は?㊤】 顧客統合が百貨店にも拡大、自社ECで他社商材販売へ

2018年 4月 5日 10:02

 三陽商会は、EC事業を成長戦略の柱のひとつとして、商材や顧客接点の強化・拡充などに努め、2018年12月期のEC売上高は前期の約50億円から65億円に引き上げる。

 前期のECについては、自社EC売上高が37億円、他社モール経由が13億円で、それぞれ前年から20%弱伸びたほか、自社ECの割合が74%と他のアパレルに比べて高い比率で推移している。

 主力の自社ECは実店舗と連動した会員獲得が奏功し、前期末時点で会員数が50万人を突破した。同社は16年9月に店頭とECで顧客情報およびポイントの統合を始動し、主力の売り場である百貨店でも対象店舗を広げ、昨年12月に三越伊勢丹グループでも三陽商会の会員制度「サンヨーメンバーシップ」が利用可能になり、ほぼ全店に導入。同社ブランドと親和性の高い層に通販サイト「サンヨー・アイストア」としてもリーチできるようになり、新客獲得を下支えした。

 加えて、自社ECだけで実施していたポイントキャンペーンなどの販促が実店舗との共通施策として実施できるため、両チャネルで相互送客が進んできているようだ。

 また、自社ECの欠品時に店舗在庫を引き当てて販売する「お取り寄せ購入」サービスがEC売り上げに貢献している。店頭販売員へのEC啓発活動や評価制度の浸透もあり、自社EC売上高に占める同サービスの割合は10%前後で推移。自社ECの拡大に伴って金額も増えている。

 他社モールについては、影響力のある「ゾゾタウン」が実施する施策に左右される部分も大きいが、ブランドクーポンやタイムセールなどの販促施策をうまく活用したことで、売り上げを伸ばしたブランドも出てきている。

 今期は、自社ECで扱う商材の拡充に着手する方針で、EC専用ブランドの販売や、「サンヨー・アイストア」で他社商材を販売するモールビジネス化などに取り組む。

 同社はブランドの多くが百貨店を主販路とし、EC市場では高価格帯の商品が大半を占めるため、既存ブランドだけではEC利用者のニーズに応えきれないと判断した。また、構造改革に伴って複数ブランドを廃止しており、品ぞろえを厚くするためにもEC専用ブランド「ル ジュール」を昨年9月にスタートした。

 同ブランドは16年に休止した婦人服ブランドをEC専用に転換したもので、大きな投資をしなくても迅速に立ち上げられる利点があった。

 ターゲット層は従来と同じ20代半ばから30代の働く女性に設定する一方、EC専用ブランドとしてウェブビジネス部が主導権を持ち、データなどを活用しながら商品を企画するほか、EC利用者が買いやすい価格に抑えて展開する。

 自社ECでは商品の原価率をある程度高めても利益が得られるため、オリジナル商品だけでなく、ターゲット層が好む商品の買い付けも行っており、「ル ジュール」ではバッグやアクセサリー、アロマディフューザーなどの雑貨も提案する。

 自社ECのモールビジネス化についても既存客との親和性をベースに品ぞろえを広げ、売り場の魅力を高める狙いで、新たな商品・サービスを提供できるプラットフォームを構築する。第1弾としては昨年12月に時計のセレクトショップ「ノルディックフィーリング」の商品を期間限定でテスト販売し、クリスマスのギフト需要に時計がマッチしたこともあって予想以上に売れたという。

 今期は、アンケートなどで得た自社会員の購入意欲が高い商材をテスト販売したり、三陽商会が展開する「マッキントッシュフィロソフィー」や「ポール・スチュアート」といった人気ブランドでは衣料品以外のサブライセンス商品もあるため、こうした商品の販売も視野にある。 (つづく)

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