通販支援事業を行うトライステージが3カ年の新たな中期経営計画(中計)を始動させた。新たなグループビジョンに「ダイレクトマーケティングからダイレクトデータマーケティングへ」を掲げ、従来までのクライアントである通販実施企業の新客獲得を中心とした支援事業から、顧客情報や広告情報など各種データを組み合わせ分析し、電話やDMなどを活用したCRM施策を含めて総合的かつ最適なマーケティング施策が行えるような仕組みを整え、「CPO(1受注獲得当たりのコスト)だけでなく、獲得した顧客のLTV(顧客生涯価値)が継続的に高くなるよう総合的に(クライアント企業を)支援できる体制にしていく」(妹尾社長)という。これまでのテレビやラジオなどのメディア枠の販売を含む通販支援事業に加えて、今後、構築する新たな仕組みを導入し、費用対効果の高いCRM領域の様々なマーケティング施策をクライアント企業に合わせて提案していくことで業績拡大し、特に収益の改善を図る考え。
同社の新中計で軸となる「ダイレクトデータマーケティング(DDM)」とは、クライアント企業が自社の通販システムや通販サイト、POSなどで収集する顧客情報や購入・購買履歴、アクセスログなどの「顧客情報」とトライステージが持つテレビ・ラジオなど放送局や各枠ごとの様々な情報や各ウェブサイトのレスポンスデータなどテレビ、ラジオ、ウェブの「広告情報」や協力コールセンターが持つ情報(購買履歴・コンタクト履歴)などをすべて合わせ、各クライアント企業ごとに個別にデータベースを構築してデータを分析、マーケティングオートメーション(MA)で費用対効果のよい新客獲得のためのテレビやラジオ、ウェブ広告展開の提案のほか、コールセンターをつかったアウトバウンドやチャット、ウェブサイトでのレコメンド、電子メールやダイレクトメール、SMSでのプッシュ通知など各種CRM施策についても各クライント企業にとって最適なマーケティング施策を提案するもの。
まずは今期から有力クライアントなど数社で導入し、一定の成果を出してその効果を証明したのちに同社が取り引きする100社弱のクライアント企業に同仕組みを提案し、3年目には本格化させていきたい意向。
これにより、ダイレクトマーケティング支援事業の中でも主力のTV事業や成長著しいDM事業の安定的な売り上げと収益力の改善を図り、一方で苦戦する海外事業の戦略見直しや子会社の日本ヘルスケアアドバイザーズが昨年3月から開始して「顧客数や受注数がのびてきており手ごたえを感じている」(同)という漢方薬の通販事業などもさらに強化し、新中計の最終年度となる2021年2月期決算に連結営業利益率を前期(2018年2月)比2・6ポイントアップの4・5%、連結売上高は同7・5%増の600億円を目指す。
なお、3月30日に発表した前期(2018年2月)決算は売上高が前年比17・9%増の557億7500万円、営業利益は同26・0%減の10億3200万円、経常利益は同33・5%減の9億800万円、当期純利益は同49・3%減の3億8500万円だった。主力の通販支援事業はクライアント企業の出稿需要を読み間違え、仕入れすぎたメディア枠の一部を値引き販売せざるを得なくなったことや成果報酬型取引の顧客企業の売上高が目標を下回ったため、赤字取引などが発生するなどで不振だったが、子会社のメールカスタマーセンターが手掛けるダイレクトメールの発送代行事業が好調で取扱通数および売り上げを伸ばしたことに加え、昨年3月に買収したネット広告事業を手掛けるアドフレックスの売り上げが寄与し、増収となったが、利益面ではメディア枠の値引き販売などによる通販支援事業の粗利率の低下や粗利の低いDM事業の売り上げシェア増加などで減益だった。
新中計の初年度となる今期(2019年2月)の業績はDDMの仕組みを構築し、展開をスタートさせる一方で、「中長期的な成長に向けた準備期間で少ししゃがむことになるが利益率を高め、1年をかけて筋肉質な体にしていく」(妹尾社長)とし、前期の利益率悪化の大きな一因ともなった一定の売上額を割り込んだ場合、同社がクライアントに相当額を補てんする形式の成果報酬型取引を通常取引に変更するようクライアント企業に働きかけていく考えで、それにより、当該企業の取引自体が売り上げベースで10~15億円程度、失注する可能性を考慮し、売上高は同1・8%減の547億8600万円、営業利益は同19・6%減の8億3000万円と減収減益を見込んでいる。