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アスクル 損傷した物流拠点を売却、新築後に借り受け再稼働

2017年11月16日 11:29

 アスクルは11月20日、2月の火災で損傷し、現状、未稼働状態である埼玉・三芳町の大型拠点「アスクルロジパーク(ALP)首都圏」を東急不動産に売却する。現状有姿で98億円で売却し、全棟を解体し新築した上で、再びアスクルが借り受け、使用する。火災を機に「持たざる経営」に回帰する。

 「ALP首都圏」(所在地・埼玉県入間郡三芳町上富1163、敷地面積・約5万5062平方メートル)は火災で上部は焼失したものの、基礎部分や1階はほぼダメージを受けておらず、当初は自力で焼失部分を修繕して再稼働させる計画もあったが、火災の影響が将来的にどのような形で建物に出てくるのかわからないこと、また、最新防災設備導入や従来の拠点とは異なる施設設計として、例えば渋滞の一因となっていた「車両の出入り口の変更」など近隣住民から寄せられた従来の物流拠点への改善要望などを取り入れやすくできるなどのメリットを勘案して、自力での再建よりも不動産の専門事業者に売却し、新築された物流拠点を借り受ける形を採ることしたという。

 2013年7月に稼働させた「ALP首都圏」は「賃貸よりもランニングコストが格段に安くなる」(同社=当時)として約150億円で購入したアスクル初の自社所有の物流センターで、その後、福岡に新設した物流拠点「ALP福岡」(所在地・福岡市東区みなと香椎2‐2‐1、敷地面積・約2万4905平方メートル)も自社所有の形態を採るなどコスト面などでメリットの高い"自社所有化"を進めていたが、「ALP首都圏」の火災発生で「自社で物流拠点を保有しているリスク」を改めて検討。また、物流技術の進歩の速さやアスクルが進めている大手メーカーなどを対象とした物流業務の代行事業などを今後、さらに強化・推進していくためには"迅速さ"が重要で「今後、一切、自社所有の拠点を持たないというわけではないが、現時点では自社所有よりも所有形態を変えた方がメリットが高い」(同社)と判断し、現状、アスクルが稼働させている全国の物流拠点のうち、賃貸ではなく、自社で所有している「ALP首都圏」および「ALP福岡」を売却することにしたという。

 2つの物流拠点の売却は、東急不動産が出資する「三芳町プロパティーズ特定目的会社」および「香椎浜プロパティーズ特定目的会社」に「ALP首都圏」および「ALP福岡」それぞれを11月20日付で譲渡する形と採る。売却額は「ALP首都圏」が98億円、「ALP福岡」が106億円。なお、それぞれの拠点の帳簿価額は134億円と61億円となっている。

 2つの物流拠点の売却にあわせて連結子会社であるエコ配の完全出資子会社で7月に設置した物流施設のアセットマネジメント事業を行う専門会社、ecoプロパティーズ(本社・東京都港区、片地格人社長)の業務をスタートさせ、「ALP首都圏」の再生業務や管理、「ALP福岡」の管理などのアセットマネジメント業務を行う。同業務を行う専門会社をグループ内に持つことで、今回の2物件の売却についてもアスクルが支払う手数料などについて一部はグループ内で吸収できるメリットがあるほか、今後も物流拠点を借り受ける際に、極力、ecoプロパティーズを絡ませることで「賃貸料をただ払うだけでなく、利益が少しでも還元される仕組みを作った。もちろん、アスクルの物流施設ためでなく、他の施設のアセットマネジメント業務を積極的に行っていく予定で、ecoプロパティーズ単体でも収益拡大を図っていく予定」(同社)としている。

 なお、アスクルでは2つの物流施設の売却により、11月9日付で今期(2018年5月)の利益予想を上方修正した。「ALP福岡」の売却益44億円のほか、「ALP首都圏」においては、36億円の売却損となるが、火災損失引当金戻入額68億円を計上されること。また、ecoプロパティーズの稼働で新たな収益が見込めることなどから営業利益は前回予想を3億円上回る38億円、経常利益は同5億円上回る35億円、当期純利益は同25億円上回る40億円とした。売上高は3650億円と前回予想のままとしている。


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