Labitが提供する、書籍のフリマアプリ「ブクマ!」が好調だ。昨年8月のサービス開始以降、利用を順調に拡大しており、2月には累計出品数が20万冊を突破。今後は積極的な広告展開によるユーザー数の急拡大を見込んでおり、新刊本の取り扱いも視野に入れる。
ブクマでは、書籍に割り振られているISBNバーコードをスマートフォンのカメラでかざすことで、本のタイトル・著者・出版社などのデータが自動で入力されるため、簡単に出品することができる。同社の鶴田浩之代表取締役(=画像)は「スマートフォンで本を買う時代になったのに、特化したサイトはまだない。一方で家庭に眠っている本は大量にあり、本に特化したCtoCサービスは需要があるのではないかと考えた」と話す。
ネット販売の世界で最も本を売っているのはアマゾンだ。中古書籍に関しても、マーケットプレイスでカバーしている。ただ、「手数料がかかるので個人が販売するのは意外と大変なほか、出品するまでの手間もかかる。販売点数が1万を超えるのであればアマゾンの方がいいだろうが、個人が不要な本を出品するならブクマの方が便利なはず」(鶴田氏)。ブクマは出品までの手間を省いたほか、現段階では販売手数料の無料キャンペーンを継続している。
鶴田氏は、実際に自身がブクマに本を出品し、傾向を探ったという。その結果「ユーザーは『新品価格より安い』という理由で買うことが多いようで、やや高めに設定した本でも売れるときは売れる。価格競争が起きにくいのがフリマの面白さではないか」と話す。
今後はテレビCMなど広告展開に力を入れることで、ユーザーの急拡大と出品点数の急増を狙う。これまでは本に関する書き込みをした人などに絞ったSNS広告を展開、成果を挙げている。2017年度末までに出品点数1000万冊となる見込みで、流通額については18年度に140億円を目指している。今後は新刊本の取り扱いも検討する。その際は、ドロップシッピング形式となる見込みだ。
ただ、新刊本の場合、配送などの面で利便性が高く、他の商品と同時に購入できるアマゾンが圧倒的な売り上げを誇っているほか、ポイントによる囲い込みをしている楽天の「楽天ブックス」などにも強みがある。新刊本は値引きができず、どこで買っても同じ商品だ。ブクマに勝算はあるのか。
鶴田氏は「スマホアプリに親しむ若い世代の場合、アマゾンと本が結びついていない人が意外と多いのではないかと思っている。能動的に情報を収集するユーザーが10%いるとしても、それ以外の数千万人のユーザーに対して『本を買うならブクマ』とブランディングできれば勝ち目はある。例えばテレビCMを放映するにしても『古本のフリマアプリ』ではなく『スマホで本を買うなら』というやり方もあるのでは。しっかりと検証していきたい」と話す。
今後は新刊本を取り扱うことで、CtoCとネット販売を融合したアプリに進化させる狙いだ。「本を売った金で興味のある新刊本を買うというサイクルを生み出すのが狙い。本棚が空かないと次の本は買わないという人が多いのではないか」(同)。本の売り上げを現金化せずに新しい本が買える利便性を主婦層などにアピールしていく。アプリのトップページもパーソナライズ化し、趣味に合致した本をレコメンドする仕組みを取り入れる。
また中古書籍についても、取扱点数増加を目指して、古書店に対しネット販売の販路としてのブクマ活用提案を行う、
送料は出品者負担で、クリックポストの利用が多い。新刊本を扱う場合は、同社が負担する形で送料無料を打ち出す予定だ。ポイントでのインセンティブを前提としたレビューの導入も計画している。
鶴田氏は「電子書籍が普及しても紙の本が消えることはないし、完全に乗り換えるユーザーは出品者となりうる。新刊・中古・電子書籍を問わず、読書文化を啓発していきたい」と意欲的に語る。