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オルビスの「ルシェルシェ」、"世界観"で売る、「オルビス」の「制約」捉われず企画

2016年 6月 9日 10:38

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通販化粧品ブランドは自らに課すコンセプトの鋭い切り口が訴求力を生む。一方でその制約ゆえに、ブランドの広がりには限界もある。オルビスは2006年、「ORBIS(オルビス)」とは別にサブブランドを立ち上げた。「機能・悩み訴求」に寄りがちな通販ブランドとは一線を画し、「世界観」で顧客にアプローチする。

 ブランドは「Rechercher(ルシェルシェ)」。06年に「オルビスラボ」の名称で立ち上げ、昨年10月、大幅にリニューアルした。前期(15年12月期)の売り上げは約10億円に達している。

 「オルビス」の顧客は、オイルカットや無香料などのコンセプトに共感して商品を買う。ただ、ボディケア、ヘアケアなどすべての商品で同じコンセプトを求める顧客は少ないのが現実。実際、顧客の消費行動をみると、多くの会社で複数のブランドを使い分けていることはよくある。そうであれば、オイルカットなど厳しい制約に捉われないサブブランドを立ち上げ、同じオルビスから選んでもらう、というのが狙いだ。

 実験的要素も強い。「オイルカット」の一言でコンセプトが伝わる「オルビス」のような分かりやすさはなく、嗜好性が強い。11年、"癒し"をキーワードに立ち上げた「ルシェルシェ」は、ピンクを基調にしたガーリー感の強い商品が中心だった。想定と異なる50代女性の支持を集めたが、より感度が高く、30~40代の働く女性に焦点をあてたブランドにするため、昨年10月に誕生したのが新生「ルシェルシェ」になる。

 新ブランドは、アフリカに植生するバオバブや、サボテンから抽出した保湿成分など、自然の力をイメージさせる"エナジー系素材"を積極的に配合。通販では、「オールインワンゲル」など商品の機能や悩み解決のアプローチが訴求力を生むが、「ルシェルシェ」はブランドコンセプトや世界観への共感が購入の動機となることをめざす。

 通販カタログでも誌面では紹介せず、リーフレットを同封。広告も商品スペックや文字の大きさなど訴求力を意識する通販の定石ではなく、写真とテキストのみで必要以上に語らず世界観を演出する。

 「ルシェルシェ」の展開には対顧客とは異なる側面もある。展開するプロジェクトチームは、顧客対応や物流、商品開発など各部署の兼任者12人で組織。商品企画からコミュニケーションツールの制作まで一貫して行う。商品開発やプロモーション、販売チャネルなどの機能別組織で陥りがちな思考の分断を防ぎ、ブランドマネージャー制に近い環境をつくることで人材育成にも活かしている。
 かつてオルビスはラゼルという会社を立ち上げ敏感肌向けスキンケアを展開。一からのブランド育成を図ったが売上高は数億円規模に留まり、苦戦した過去がある。その教訓を活かし「ルシェルシェ」は既存インフラを使いつつ展開。今のところ購入の大半は既存客だが、最近ではLINEへの広告出稿など新規獲得のテストを始めるなど軌道に乗り始めている。

 一方の「オルビス」は、商品の機能性など分かりやすい価値だけでなく、より情緒的な価値を重視。「ライフスタイルブランド」への進化を目指している。目指すところは「ルシェルシェ」同様にブランドが持つ世界観での結びつき。新生「ルシェルシェ」の成否は、オルビスの今度を占うものでもある。

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