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政府は09年8月11日、「消費者庁」を9月1日付けで発足することを閣議決定した。初代長官に「消費者庁・消費者設立準備室」の内田俊一消費者庁設立準備顧問(三井住友海上火災保険顧問)を起用。次官には内閣府の田中孝文国民生活局長が就く人事も承認した。これにより、福田政権からの宿題だった消費者庁が動き出すことになるが、消費生活センターなど基盤となる地方の体制整備が不十分な中、衆院選直後(8月30日投票)の設置で現場が混乱する恐れがある。さらに同庁の人事を巡り野党が反発している状況で、選挙結果次第では、波乱の展開となりそうだ。
「消費者庁」は、消費者行政の司令塔として設置されるもので、消費者行政の企画・立案のほか、他省庁からの移管・共管により所管する約30の消費者関連法の執行などを手掛ける。通信販売事業者にも関係する「特定商取引法」や「景品表示法」などを所管し、「消費者安全法」に基づき関係省庁に措置要求ができるなど強力な権限を持つ。このため、「消費者委員会」を内閣府本府に置き同庁の監視を行う形になる。「消費者庁」と「消費者委員会」をセットにすることは、与野党協議の上で決定したものだが、人事面で野党・民主党が反発していた。
まず、消費者庁初代長官になる内田氏については、建設省(現国土交通省)出身で内閣府事務次官の経歴を持つ、いわゆる官僚OB。各省庁と折衝し消費者行政を強力に推し進める上で、同氏の経験が活かせるというのが政府側の説明だが、民主党としては、自らが標ぼうする"政治主導"からかけ離れた"官僚主導の人事"というわけだ。
また、「消費者委員会」の委員長人事についても「消費者委員会設立準備参与」に任命されている弁護士や消費者団体関係者、民間企業経営者など十人がそのまま委員に就き、委員長には検事出身の住田裕子弁護士が就く見込みだが、民主党では見直しが必要とのスタンス。他に地方の弁護士会や消費者被害の救済団体などが、消費者庁長官および消費者委員会委員長には、消費者事件の経験が豊富な人材を充てるべきとする声明を出している。消費者行政で絶大な権限を持ち影響力も大きい組織であるだけに各方面が慎重な人事を求めているのが実情だ。
人事問題でしこりを残し、地方の体制が整わない中で同庁の発足だけを急げば、現場が混乱し、消費者や事業者が迷惑を被るのは必至。政府・自民党が選挙前に自ら敷いてきた路線固め、あるいは"実行力"のアピールを狙いに「消費者庁」発足を急いだのであれば、リスキーな判断だろう。一方の民主党では、衆院選で政権を奪取した場合、長官人事等の見直しを示唆している。通販事業者にも影響を及ぼす「消費者庁」発足後の展開は未だに混沌とした状況だ。