「アマゾンが買い取った"古本"の行方は?」――。アマゾンジャパンは6月3日から、中古書籍を買い取る「Amazon本買取サービス」を始めた。中古品の買い取り自体はすでにゲームソフトやDVD、CDを対象に実施しており、決して目新しい動きではない。ただ、これまでの中古品の買い取りサービスとの大きな違いは、はじめから買い取りを"アマゾン自身"が行うこと。そして買取対象の商材がアマゾンで主力商材である"書籍"であることだ。
開始した「Amazon本買取サービス」で買い取り対象となる和書・洋書は合計100万タイトル。専用ページであらかじめ本の状態やカバー・特典など付属物の有無などによって「非常に良い」「良い」「可」の3パターンの買取価格を提示し、1点から買い取る。過度の日焼けやページの欠落、水濡れ跡やしみがあるものなどは買い取らない。
買取希望者は本の状態と希望の集荷日時を選択。印刷した買取申込書と公的な身分証明書の写し(初回取引時のみ)とともに中古品を宅配業者(佐川急便)に引き渡す仕組み。古本の集荷および配送はアマゾン側の負担で利用者から配送費は徴収しない。買取拠点で本を受領後、原則24時間以内に査定し、査定に応じた金額を「Amazonギフト券」で利用者に支払う。なお、法人および18歳未満、高校生からの買い取りは応じない。
アマゾンは中古品の買い取りを2012年5月からゲームソフトを皮切りにスタート、2013年1月からはDVDとブルーレイディスクを、同7月からはCDを買取対象商品として中古品の買い取りジャンルを拡充してきた。今回開始した本の買い取りのスキームはすでに買取を開始している他商材と同様で、単に買取の対象商材を増やしただけに映る。
その通りであるが、他商材の買い取りとの決定的な違いがある。それはスタートから"アマゾン自身"が買い取っていることだ。実はアマゾンの中古品買い取りサービスはこれまで書籍やCD、DVDなどの買取サイト「買取王子」などを運営するティーバイティーと連携して実施してきた。
要はアマゾン側は言わば"名前貸し"で、中古品専門業者が実質的な買取業務を行ってきた。アマゾン側としても労力をかけずに専門業者から買い取りに関する一定の収入が得られること。そしてアマゾンのサイト内で中古品の買い取りを行ない、さらにその代金をアマゾンのサイト内でしか使用できない「Amazonギフト券」に限定することで「アマゾンでの次の商品の購入」につなげられることもあり、連携先のティーバイティーとも蜜月の関係が続いていたようで前述の通り、次々に同社を介して買取対象商材を拡大してきた。「(ティーバイティーは)アマゾンさんにすっかり取り込まれ、がっちり組んでやっているという印象だった」(某大手中古品買取事業者の担当者)。
しかし、その蜜月も長くは続かなかったようだ。詳細は不明だが、アマゾンは昨年6月に中古品の買い取り体制を変更。これまでのようなティーバイティーとの連携をやめ、自社(アマゾンドットコムインターナショナルセールス)による買い取りに切り替えた。今回の中古本の買い取りについてもアマゾンが自社で行なうようだ。
中古品買い取りを自社に切り替えた理由について「自社に切り替えたことは確かだが(理由は)外部には公表していない」(アマゾン広報)とする。また、ティーバイティー側でも「我々の事情というよりはアマゾンさん側の意向」(ティーバイティー担当者)とし詳細は不明だ。また、アマゾンによると古物取り扱いに関する免許を取得して自らから中古品買取業務を行っているとしているが、中古品の買い取り業務に関する詳細は明らかにしていない。
そして気になるのがアマゾンが買い取った中古品の行方だ。これまではアマゾン上で買い取った中古品は専門業者が自社の販売ルートに流せたが、アマゾンによる直接買い取りの場合はどうなっていくのか。
日本の最大手のネット販売事業者であるアマゾンジャパンのユーザー数は膨大。しかも今回、買い取りを開始した書籍は同社が日本参入当初から取り扱いを開始し、現在も主力商材の1つだ。「本の購入」に慣れているユーザーは「本の売却」に関してもさして抵抗なくアマゾンでそのまま売却するユーザーも多そう。しかも「買取ページ」のトップではこれまでアマゾンで購入した商品について、自動的に買い取り価格などを表示する仕掛け(=画像)も行っており、集まる古本の数も膨大となりそうだ。
アマゾンジャパンに今回の古本も含め、買い取った中古品のその後の販売ルートについて尋ねたところ、「お答えできない」(アマゾン広報)としている。仮にアマゾンが自社サイト内で古本の販売を始めた場合、今後、規模拡大が期待できそうな有望なビジネスとなりそうだが、アマゾンのサイト内には出品機能「マーケットプレイス」により、多くの専門業者などが古本を販売しており、反発も予想され、おいそれと古本販売には着手できない事情もありそう。
とは言え、日々、増えていくはずの中古品の再販売はいずれにせよ必要となるはずで、直販にせよ、連携する業者経由にせよ、どこかで販売していることは間違いない。アマゾンはかつて同社倉庫内で一部を破損した商品や返品商品などを「マーケットプレイス」で、「アマゾン」という名称ではなく、「マーケットプレイス」の出品者への配慮もあったのか、「ウェアハウス・ディールズ・ジェーピー」という名称でひっそりと販売してきた(※一昨年8月からは「Amazonアウトレットストア」と改称して展開中=
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中古品に関しても同じような形となっていくのか否かは不明だが、いずれにせよ、アマゾンに集まる膨大な中古品の行方が気になるところだ。