震災を機に需要が高まっているボトルウォーター。水に対して消費者がより敏感になってきているこのタイミングで、新規顧客の開拓に注力する動きが生じている。一方、一度入会した顧客向けに、水と親和性の高い商材を扱って通販を仕掛ける取り組みなども出てきており、一過性の「特需」で終わらせないよう試行錯誤を行っているようだ。
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「クリクラ」を展開するナックでは顧客数と製造量が順調な伸びを示している。6月末時点で契約顧客数は40万軒を超え、前年同期比では10万軒の増加となる。製造量でも、ニーズが高まる7、8月に2カ月連続でガロンボトル(約12キロリットル)製造本数が140万本を突破した。同社の調査によると、この数字は製造量換算で業界最多になるという。
「震災で消費者の意識が変わってきた」(クリクラ事業本部)と指摘するように、拡大の背景には安全な水への関心が高まったことが影響しているとみている。
加えて、同社では加盟店を増やしており、直営店と加盟店がともに受け持ちエリアの顧客開拓に注力したことも好調の要因のようだ。
同社の新規開拓策はドア・ツー・ドアの訪問営業が中心。ガロンボトル1本(約2週間分)を無料サンプルとして提供し、「便利さを体験してもらう」(クリクラ事業本部)。この訪問営業で全体の5~6割にあたる新規を獲得するという。
同社によると、こうした1軒ずつ地道に訪問して顧客を開拓するやり方はダスキンの加盟店として事業拡大を遂げる中で培った社風でありDNAという。それを加盟店とも共有し、各エリアをケアしてサンプル提供につなげているわけだ。同社ではボトルウォーターが普及しつつあるこの時期に、一気に拡大を遂げる方針だ。
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一方、顧客の増加により通販に着手するケースもある。「クリティア」を手がけるウォーターダイレクトでは順調に顧客を獲得。今年3月末時点で会員数は関東圏を中心に13万世帯だったが、10月20日時点で17~18万軒となっている。
顧客拡大を受け、同社では9月1日から会員向けに「クリティアプラス」(A4版・8ページ)という季刊の冊子を創刊。ボトルウォーターに同梱して配布し、冊子を通じて通販を開始した。
通販で取り扱う商品はOEMで開発した「クリティアはちみつ青汁」「クリティアコラーゲン」のほか有機米など合計4アイテムで、見開き2ページを使って訴求している。商材の選定については「水との親和性が高い商品を扱っている」(管理部)とし、今後も健康志向の高い顧客へ向け商品数を拡充していく方針だ。
また、新たに付加価値を出す施策としてサーバーのカラーバリエーションを増やした。これまでは白一色の展開だったが、10月から黒とピンクを追加投入。同社によると、黒のデザインに人気があり全体では白と黒が半分ずつのシェアで、ピンクが残り1割程度という。来春にはデザイン性を重視した新型サーバーを投入する予定だ。
震災以後の水を巡る状況について「(ボトルウォーターが)一般家庭にも浸透してきた」(管理部)と指摘する同社だが、この状況を追い風に販促の機会を増やしている。
同社の顧客の流入経路として圧倒的に多いのがGMSや家電量販店などでのデモ販売だが、その頻度が震災後は倍以上の月に1200回(1日1店舗を1回と計算)になっている。会場となる店舗側にとっても客寄せになるため、デモ販売を打診してくるケースも少なくないという。
ただ、急激に水需要が高まったとはいえ、こうした状況は一時的な「特需」であることは否めない。そこで気になるのが新規で取り込んだ顧客の"離脱"だが、同社によると全体の離脱率は1%以下ということで、新規だけではさらに低いとしている。会員になると1年間は解約手数料として5250円が発生するという"縛り"があるとはいえ、離脱率は低いと言える。
背景にはボトルウォーターが「生活に組み込まれるとやめづらい」(管理部)という側面があるようだ。同時に同社では水の味にも自信を持つ。「クリティア」は富士山麓から採水して非加熱でボトル詰めしているのが特徴だが、こうした水の風味も顧客が繰り返し利用する理由の1つとしている。
皮肉にも震災を契機に注目が高まったボトルウォーターだが、新規獲得にとどまらず既存顧客へのケアや付加価値の提供により、各社ともさらなる拡大を目指している。
(おわり)
「クリクラ」を展開するナックでは顧客数と製造量が順調な伸びを示している。6月末時点で契約顧客数は40万軒を超え、前年同期比では10万軒の増加となる。製造量でも、ニーズが高まる7、8月に2カ月連続でガロンボトル(約12キロリットル)製造本数が140万本を突破した。同社の調査によると、この数字は製造量換算で業界最多になるという。
「震災で消費者の意識が変わってきた」(クリクラ事業本部)と指摘するように、拡大の背景には安全な水への関心が高まったことが影響しているとみている。
加えて、同社では加盟店を増やしており、直営店と加盟店がともに受け持ちエリアの顧客開拓に注力したことも好調の要因のようだ。
同社の新規開拓策はドア・ツー・ドアの訪問営業が中心。ガロンボトル1本(約2週間分)を無料サンプルとして提供し、「便利さを体験してもらう」(クリクラ事業本部)。この訪問営業で全体の5~6割にあたる新規を獲得するという。
同社によると、こうした1軒ずつ地道に訪問して顧客を開拓するやり方はダスキンの加盟店として事業拡大を遂げる中で培った社風でありDNAという。それを加盟店とも共有し、各エリアをケアしてサンプル提供につなげているわけだ。同社ではボトルウォーターが普及しつつあるこの時期に、一気に拡大を遂げる方針だ。
一方、顧客の増加により通販に着手するケースもある。「クリティア」を手がけるウォーターダイレクトでは順調に顧客を獲得。今年3月末時点で会員数は関東圏を中心に13万世帯だったが、10月20日時点で17~18万軒となっている。
顧客拡大を受け、同社では9月1日から会員向けに「クリティアプラス」(A4版・8ページ)という季刊の冊子を創刊。ボトルウォーターに同梱して配布し、冊子を通じて通販を開始した。
通販で取り扱う商品はOEMで開発した「クリティアはちみつ青汁」「クリティアコラーゲン」のほか有機米など合計4アイテムで、見開き2ページを使って訴求している。商材の選定については「水との親和性が高い商品を扱っている」(管理部)とし、今後も健康志向の高い顧客へ向け商品数を拡充していく方針だ。
また、新たに付加価値を出す施策としてサーバーのカラーバリエーションを増やした。これまでは白一色の展開だったが、10月から黒とピンクを追加投入。同社によると、黒のデザインに人気があり全体では白と黒が半分ずつのシェアで、ピンクが残り1割程度という。来春にはデザイン性を重視した新型サーバーを投入する予定だ。
震災以後の水を巡る状況について「(ボトルウォーターが)一般家庭にも浸透してきた」(管理部)と指摘する同社だが、この状況を追い風に販促の機会を増やしている。
同社の顧客の流入経路として圧倒的に多いのがGMSや家電量販店などでのデモ販売だが、その頻度が震災後は倍以上の月に1200回(1日1店舗を1回と計算)になっている。会場となる店舗側にとっても客寄せになるため、デモ販売を打診してくるケースも少なくないという。
ただ、急激に水需要が高まったとはいえ、こうした状況は一時的な「特需」であることは否めない。そこで気になるのが新規で取り込んだ顧客の"離脱"だが、同社によると全体の離脱率は1%以下ということで、新規だけではさらに低いとしている。会員になると1年間は解約手数料として5250円が発生するという"縛り"があるとはいえ、離脱率は低いと言える。
背景にはボトルウォーターが「生活に組み込まれるとやめづらい」(管理部)という側面があるようだ。同時に同社では水の味にも自信を持つ。「クリティア」は富士山麓から採水して非加熱でボトル詰めしているのが特徴だが、こうした水の風味も顧客が繰り返し利用する理由の1つとしている。
皮肉にも震災を契機に注目が高まったボトルウォーターだが、新規獲得にとどまらず既存顧客へのケアや付加価値の提供により、各社ともさらなる拡大を目指している。