今期(2010年12月)の事業の状況と来期以降の戦略などについて、ジャパネットたかたの高田明社長に聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)
今期の業績見通しは。
「もともと今期の売上高は1600億円くらいいけばいいと思っていたが、その予想は上回りそうだ。ただ、まだどの程度までいくか分からない。(エコポイント特需で薄型テレビの)注文を多く頂いているが、モノがなく出荷ができずお客様にご迷惑をかけている状態だ。商品の発送が12月いっぱいまでに間に合えば(2010年12月期の)売上高は1800億円を超えるはずだが、(出荷が間に合うかどうかは)微妙なところだ。恐らく1750~1800億円程度で着地すると思う。売上高が伸びたのはありがたことだが、お客様には(商品の出荷が遅れ)ご迷惑をかけており、(エコポイント特需は)決してよいことばかりではないと思っている」
チャネル別の状況について伺いたい。
「『テレビショッピング』は通販枠の出稿量を増やしているわけではないので、(総売上高に占める)割合は昨年とあまり変わらない。『ペーパーメディア』はDMなどを中心に多少、伸びそうだ。『ネット販売』は伸びている。ネットの真水売上高(※他媒体に依存しないネット販売単独の売上高)も前年は400億円弱だったが、今期は550~560億円くらいになりそうで、総売上高の約3割に達しそうだ。なお、ネット経由すべての売上高合計は600億円を超えると思う」
経常利益はどのくらいになりそうか。
「これも商品の出荷状況次第だが、前年の経常利益(約104億円)よりも確実に1割以上は伸びると思う。恐らく120~130億円前後になると思う」
今期の増収増益の一因にはエコポイントを追い風とした薄型テレビの販売増があると思うが、ほかに要因はあるのか。
「テレビの影に隠れているが、掃除機や冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど、これまで売り上げがさほど大きくなかった商品をこの1年間で確実に増やし育てている。そうした商品の売り上げも上がってきている。例えばエアコン、冷蔵庫は昨年比で3倍くらい売れている。新しい商品の育成は今年の初めから意識的にやってきた。今期に入ってすぐ全社員に向けてメールを出した。家電エコポイントが終了し、地デジ移行に伴う買い替えも来年には落ち着く。これまでのようにテレビによって売り上げがけん引される状況ではなくなると。"テレビの次"にどんな商品を販売すればよいか考えよ、という内容だった」
社員からの返信はあったのか。
「結構あった。健康関連器具や太陽光パネルはどうかとか。面白いところでは電気自動車とか(笑)。今後、どのような商品を販売していくか、世の中の動きなどを見ながら、これは私がトップとして判断しながら、やっていきたいと思っている」
テレビ通販枠や新聞折込チラシなどの広告出稿量は昨年とほぼ同じ量とのことだが、「売り場」を増やさずに売上高を上げるのは難しいのではないか。
「媒体費を増やせば売上高は増えるが、それではとても利益を伸ばせない。また、当社はすでに社員が500人を超えており、人件費も上がっている。そのため受注の品質・効率、媒体の製作能力や品質を高めることで、経費を増やさずに売り上げを上げていかねばならない。今期(の増収増益見通しは)はこれらを進めてきた結果だ」
受注の品質や効率アップ、媒体の制作能力向上が今期の大幅な増収に寄与したとのことだが具体的には何をしたのか。
「昨年5月に福岡市内に新設したコールセンターを本体から独立させ、今年9月から『ジャパネットコミュニケーションズ』(※同社社長は高田明社長の長男の高田旭人氏)という別会社を作った。これまでオペレーター業務は業務委託だったが、より改善するには直接、オペレーターを雇用して1歩踏み出していく必要があると判断した」
媒体の制作能力向上とは。
「ハウスエージェンシーをこのほど分離し、『エスプリングアジャンス』(※同社社長は高田明社長の長女の高田春奈氏)という別会社を作った。ここは東京に事務所を構え、当社とは別の視点でジャパネットの媒体や営業戦略を考えており、この半年は相当、力になってきている。
また、当社の専門チャンネルを強化している。今年10月からチャンネル名を『ジャパネットチャンネルDX』に変え、同時に一部でハイビジョン放送も始めた。10月には毎週土曜日に24時間生放送を行った。11月に入っても6時間、深夜に3時間の生放送などを行ってきた。10、11月の2カ月間の売上高は昨対比で2倍近くまで伸びていると思う。24時間の生放送などを継続していく場合、商品はもちろん、『語り手』ももっと必要だ。語り手は今年新たに3人入れ、総勢8人だがまだ足りない。来年は50人くらい新入社員が入る予定なので、その中からまた語り手を増やしていきたいと思っている。専門チャンネルは自分たち独自のチャンネルなので、(地上波などとは)違った色で支持されるチャンネルにしていきたい。私は色がついてしまっているので、新しい若いスタッフが中心になり作っていける体制でしっかり広げていきたい」
今年7月に都内に事務所を開設し、その中に新しいスタジオを作った。それも媒体の制作能力向上のための一環か。
「同じような番組では飽きられてしまう。常に新しいものを加えていく必要がある。東京スタジオでは主にタレントさんなどに出演を依頼する際に使用しようと思う。佐世保スタジオまではなかなか来られない方も東京スタジオならば問題ない。すでに10月の生放送を東京スタジオでやり、私もそちらに行ってタレントさんを呼び、佐世保のスタジオと連動しながら番組を作った。面白い番組作りに役立てていきたい」
物流サービスの改革にも本腰を入れるようだ。
「先の専門チャンネルの強化、まだ伸びる余地が大きいカタログの強化。またメディアミックスの推進を図っていくためには物流インフラの強化が重要だ。今年の初めに課題で物流改革を掲げ『目指せ!アマゾン』と改善に着手したが、エコポイント(によるテレビの販売増)で頓挫してしまった。来期以降は春日井のある物流センターの改善のほか、自前の物流拠点の設置も視野に物流改善をより強化する」
来期の方向性は。エコポイント特需の反動があると思うが。
「影響はあるだろう。ただ、テレビの販売がゼロになるわけではない。仮に3割下がったらその分は別の商品で充てればよい。冷蔵庫、洗濯機、エアコン。まだまだ弱いところを拡大していけばよい。また、今までと全く発想を変えた商品が出てくるかもしれない」
投資計画は。
「去年も物流拠点やコールセンターの新設などかなりの投資をして今年は何もしないと思っていたが、東京事務所やスタジオを出した。また、社員寮として本社近くにワンルームマンションを一棟建設中だ。加えて東京、春日井、福岡と拠点が分散してきたため、テレビ電話会議システムを導入しテレビで会議できる仕組みを入れた。それぞれの拠点に合計15機ある。先ほどの物流拠点への投資も含めて2、3年先を予測しやらねばならないことは思い切ってやる」
年商2000億円が見えてきたが来期の売上高計画は。
「まだ考えていない。今年は出来すぎた。売上高は1500億円に戻ってもかまわない。売上高に固執すると改善はできなくなる。今年と同じように伸びる必要はない。中長期を見据えて売上よりインフラの改善を進めていきたい」
今期(2010年12月)の事業の状況と来期以降の戦略などについて、ジャパネットたかたの高田明社長に聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)
今期の業績見通しは。
「もともと今期の売上高は1600億円くらいいけばいいと思っていたが、その予想は上回りそうだ。ただ、まだどの程度までいくか分からない。(エコポイント特需で薄型テレビの)注文を多く頂いているが、モノがなく出荷ができずお客様にご迷惑をかけている状態だ。商品の発送が12月いっぱいまでに間に合えば(2010年12月期の)売上高は1800億円を超えるはずだが、(出荷が間に合うかどうかは)微妙なところだ。恐らく1750~1800億円程度で着地すると思う。売上高が伸びたのはありがたことだが、お客様には(商品の出荷が遅れ)ご迷惑をかけており、(エコポイント特需は)決してよいことばかりではないと思っている」
チャネル別の状況について伺いたい。
「『テレビショッピング』は通販枠の出稿量を増やしているわけではないので、(総売上高に占める)割合は昨年とあまり変わらない。『ペーパーメディア』はDMなどを中心に多少、伸びそうだ。『ネット販売』は伸びている。ネットの真水売上高(※他媒体に依存しないネット販売単独の売上高)も前年は400億円弱だったが、今期は550~560億円くらいになりそうで、総売上高の約3割に達しそうだ。なお、ネット経由すべての売上高合計は600億円を超えると思う」
経常利益はどのくらいになりそうか。
「これも商品の出荷状況次第だが、前年の経常利益(約104億円)よりも確実に1割以上は伸びると思う。恐らく120~130億円前後になると思う」
今期の増収増益の一因にはエコポイントを追い風とした薄型テレビの販売増があると思うが、ほかに要因はあるのか。
「テレビの影に隠れているが、掃除機や冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど、これまで売り上げがさほど大きくなかった商品をこの1年間で確実に増やし育てている。そうした商品の売り上げも上がってきている。例えばエアコン、冷蔵庫は昨年比で3倍くらい売れている。新しい商品の育成は今年の初めから意識的にやってきた。今期に入ってすぐ全社員に向けてメールを出した。家電エコポイントが終了し、地デジ移行に伴う買い替えも来年には落ち着く。これまでのようにテレビによって売り上げがけん引される状況ではなくなると。"テレビの次"にどんな商品を販売すればよいか考えよ、という内容だった」
社員からの返信はあったのか。
「結構あった。健康関連器具や太陽光パネルはどうかとか。面白いところでは電気自動車とか(笑)。今後、どのような商品を販売していくか、世の中の動きなどを見ながら、これは私がトップとして判断しながら、やっていきたいと思っている」
テレビ通販枠や新聞折込チラシなどの広告出稿量は昨年とほぼ同じ量とのことだが、「売り場」を増やさずに売上高を上げるのは難しいのではないか。
「媒体費を増やせば売上高は増えるが、それではとても利益を伸ばせない。また、当社はすでに社員が500人を超えており、人件費も上がっている。そのため受注の品質・効率、媒体の製作能力や品質を高めることで、経費を増やさずに売り上げを上げていかねばならない。今期(の増収増益見通しは)はこれらを進めてきた結果だ」
受注の品質や効率アップ、媒体の制作能力向上が今期の大幅な増収に寄与したとのことだが具体的には何をしたのか。
「昨年5月に福岡市内に新設したコールセンターを本体から独立させ、今年9月から『ジャパネットコミュニケーションズ』(※同社社長は高田明社長の長男の高田旭人氏)という別会社を作った。これまでオペレーター業務は業務委託だったが、より改善するには直接、オペレーターを雇用して1歩踏み出していく必要があると判断した」
媒体の制作能力向上とは。
「ハウスエージェンシーをこのほど分離し、『エスプリングアジャンス』(※同社社長は高田明社長の長女の高田春奈氏)という別会社を作った。ここは東京に事務所を構え、当社とは別の視点でジャパネットの媒体や営業戦略を考えており、この半年は相当、力になってきている。
また、当社の専門チャンネルを強化している。今年10月からチャンネル名を『ジャパネットチャンネルDX』に変え、同時に一部でハイビジョン放送も始めた。10月には毎週土曜日に24時間生放送を行った。11月に入っても6時間、深夜に3時間の生放送などを行ってきた。10、11月の2カ月間の売上高は昨対比で2倍近くまで伸びていると思う。24時間の生放送などを継続していく場合、商品はもちろん、『語り手』ももっと必要だ。語り手は今年新たに3人入れ、総勢8人だがまだ足りない。来年は50人くらい新入社員が入る予定なので、その中からまた語り手を増やしていきたいと思っている。専門チャンネルは自分たち独自のチャンネルなので、(地上波などとは)違った色で支持されるチャンネルにしていきたい。私は色がついてしまっているので、新しい若いスタッフが中心になり作っていける体制でしっかり広げていきたい」
今年7月に都内に事務所を開設し、その中に新しいスタジオを作った。それも媒体の制作能力向上のための一環か。
「同じような番組では飽きられてしまう。常に新しいものを加えていく必要がある。東京スタジオでは主にタレントさんなどに出演を依頼する際に使用しようと思う。佐世保スタジオまではなかなか来られない方も東京スタジオならば問題ない。すでに10月の生放送を東京スタジオでやり、私もそちらに行ってタレントさんを呼び、佐世保のスタジオと連動しながら番組を作った。面白い番組作りに役立てていきたい」
物流サービスの改革にも本腰を入れるようだ。
「先の専門チャンネルの強化、まだ伸びる余地が大きいカタログの強化。またメディアミックスの推進を図っていくためには物流インフラの強化が重要だ。今年の初めに課題で物流改革を掲げ『目指せ!アマゾン』と改善に着手したが、エコポイント(によるテレビの販売増)で頓挫してしまった。来期以降は春日井のある物流センターの改善のほか、自前の物流拠点の設置も視野に物流改善をより強化する」
来期の方向性は。エコポイント特需の反動があると思うが。
「影響はあるだろう。ただ、テレビの販売がゼロになるわけではない。仮に3割下がったらその分は別の商品で充てればよい。冷蔵庫、洗濯機、エアコン。まだまだ弱いところを拡大していけばよい。また、今までと全く発想を変えた商品が出てくるかもしれない」
投資計画は。
「去年も物流拠点やコールセンターの新設などかなりの投資をして今年は何もしないと思っていたが、東京事務所やスタジオを出した。また、社員寮として本社近くにワンルームマンションを一棟建設中だ。加えて東京、春日井、福岡と拠点が分散してきたため、テレビ電話会議システムを導入しテレビで会議できる仕組みを入れた。それぞれの拠点に合計15機ある。先ほどの物流拠点への投資も含めて2、3年先を予測しやらねばならないことは思い切ってやる」
年商2000億円が見えてきたが来期の売上高計画は。
「まだ考えていない。今年は出来すぎた。売上高は1500億円に戻ってもかまわない。売上高に固執すると改善はできなくなる。今年と同じように伸びる必要はない。中長期を見据えて売上よりインフラの改善を進めていきたい」