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東京高裁 医薬品ネット販売規制訴訟、ネット・対面の優劣議論に疑問符、

2010年12月 9日 10:27

 省令により1・2類一般用医薬品のネット販売を禁止するのは違憲などとして、ケンコーコムとウェルネットが国を相手取り起した行政訴訟の流れが変わりつつある。12月2日に開かれた控訴審第2回口頭弁論で東京高等裁判所の都築弘裁判長が、審理の進め方について規制前後の実態を重視する方針を打ち出したためだ。1審ではネット販売と対面販売の優劣が焦点となり、控訴人のケンコーコム側が全面敗訴となったが、高裁が従来認められていた医薬品ネット販売規制の必要性や合理性を重視する意向を示したことは、控訴人側に優利に働く可能性もある。



 ケンコーコムなど控訴人側が控訴審で求めているのは原判決(1審判決)の取り消しのほか、医薬品ネット販売を行うことができる権利(地位)の確認、昨年2月に公布された薬事法施行規則等の一部を改正する省令の医薬品ネット販売規制に関わる条項の無効確認と同規定取り消しなど。
 
 第2回口頭弁論は、都築弁護士と控訴人、被控訴人がディスカッション的なやり取りをするという「非常に珍しい」(控訴人訴訟代理人・関葉子弁護士)形で審理が進められた。その中で裁判所側がまず、関心を示したのが違憲審査基準の問題で、控訴人が主張する憲法22条違反について、職業選択の自由の侵害、営業の自由の侵害のどちらに当たると捉えているのかを確認した。
 
 これはそれぞれの事案によって違憲審査基準が異なることを踏まえたものだが、控訴人側は、医薬品販売の殆どをネットに頼っている事業者がある一方で、配置販売業等のような許可制による職業選択の自由がないと指摘。さらに従来認められていたネット販売の禁止は営業権に関わるとして、両者に該当する可能性があるとした。
 
 さらに今回の医薬品ネット販売規制が一般用医薬品の副作用事故という有害性をなくすための消極的規制に当たるとした上で、「有害性が立証されていないにもかかわらず、規制をするのはおかしい」(控訴人訴訟代理人・阿部泰隆弁護士)と指摘。これまでネット販売で特段の問題が起きていないこと、副作用事故の発生率が1000万件に3件程度であることを挙げ、「規制をするに足りる水準ではない」(同)とした。
 
 これに対し被控訴人の国側は、もともと改正「薬事法」はネット販売を想定したものではないとした上で、ネット販売だけではなく店舗販売も選択できるため、職業選択の自由の侵害には当たらないと反論。営業権の問題についても、副作用事故の防止という国民の利益を前提に考えるべきとし、副作用被害の抑止の合理的な手段が対面販売になると主張した。
 
 一方、都築裁判長は一連のやり取りを受ける形で、ネット販売と対面販売の優劣が1審の争点となったことに触れ、「(論点は)規制の必要性・合理性にあるのではないか」と指摘。実際の副作用被害の発生状況や情報提供方法など、規制導入前後の実態や問題点を重視する考えを提示した。
 
 これは、従来認められていたネット販売の規制による控訴人側の営業面の影響を勘案したものだが、控訴人側にとってはさらに追い風になる方針と言える。1審での控訴人側の規制導入の背景となる立法事実や合理性の問題点指摘に対し、国側は論点をはぐらかし続けてきたが、控訴審ではこれまでのような国側の論点の"はぐらかし"が通用しなくなるためだ。
 
 控訴人側も高裁が打ち出した方針を前向きに捉えており、ケンコーコムの後藤社長は会見で、裁判所が論点は何なのかを理解しようとしたことを評価。「議論が噛み合った形でしっかりとした結審を出して欲しい」とした。
 
 次回の口頭弁論は、来年2月17日を予定。医薬品ネット販売規制を巡る訴訟は、来年5月末の経過措置期間切れまで半年を切った段階で、ひとつの転換点を迎えたと言えそうだ。

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