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TBSラジオ 無断でCM内容差し替え、営業担当者が独断で、生CMなど2社の広告を

2024年 9月12日 12:00

 TBSラジオは9月4日、2年間にわたって同局の番組で放送された生CMの内容を広告主らに無断で差し替えていたと発表した。生CMの内容について考査から修正を求められ、営業担当者が独断で表現を変更、広告主らに確認しないまま放送していたという。

 同社は6月にも、同じ営業担当者によってCM素材の無断差し替えが行われたことを公表しており、今回の生CMの無断差し替えはこの件に関する調査で新たに発覚した。

 なお、広告主の意向で無断差し替えが行われたCMの内容および本数は非公表とする。CM内容の無断差し替えは、広告主が放送してほしい内容のCMを流すことの対価として媒体社に金銭を支払うというビジネスモデルの前提を崩す、放送局との信頼関係を根底から揺るがすもの。

 まして在京主要局である同社の失態はラジオ広告全体に対する広告主の信頼の毀損にもつながり得る。ラジオ広告を活用する通販事業者へも波紋が広がりそうだ。

 TBSラジオによると同局の営業担当者が無断で内容の差し替えを行ったCMは2社の広告主のもの。2022年11月から今年6月にかけて放送した番組に出演するパーソナリティやアナウンサーなどが番組内で原稿を直接読み上げる形式の「生CM」と呼ばれる広告を出稿する際に、その表現がTBSラジオ社内の考査から内容の修正を促されたことで営業担当者が無断で修正を加え、広告主や広告代理店に報告しないまま放送を行ったという。

 CM内容の無断変更については広告会社から「内容が異なるCMが放送されている」との指摘を受け、TBSラジオが調査して今年6月19日付で22年4月から今年6月中旬までに広告主から納品されたCM素材のうち、一部で表現がTBSラジオ社内の考査から「放送には検討を要する」と内容の修正を促されたことで営業担当者が「考査が通らず放送できないと困る」とすでに考査を通過している同広告主の別のCM素材に広告主らに無断で差し替えて放送、同担当者は広告主の指定通りのCMが放送されたとする書類、放送確認書の偽造もしていたと公表していた。

 この件を受けて、同社のコンプライアンス室による社内調査およびTBSホールディングスが実施した第三者委員会による調査で生CMの無断差し替えが新たに発覚したものという。

 一連の問題で発覚した無断差し替えが行われたCMの広告主のうち、1社は6月公表のCM素材と今回の生CMの無断差し替え、もう1社は生CMの無断差し替えの被害にあったという。広告主の社名およびCMの内容、無断差し替えが行われたCMの本数などは「広告主の意向」(同社)で明らかにしていない。

 同社によるとCMの無断差し替えは当該営業担当者の独断で行われたもので上長からの指示など組織的関与は確認されなかったという。また、他の営業担当者による同様の不正も確認できなかったという。当該営業担当者によるCMの無断差し替えは「本来、営業担当者は考査と広告会社の間を調整して進めていくことになるが、当該担当者はその作業を面倒と感じていたよう。また、考査がその結果、通らなくなった場合、広告主からの信頼が失われるという思いがあり、『困るので黙ってやってしまった』としている」(同社)とする。

 また、一営業担当者が独断でCMの差し替えや書類の偽造などを行うことができた背景について「管理が行き届いていなかった。どうしても属人的な部分があり、不正に関与できる余地が残っていた」(同)とする。

 TBSラジオでは「問題が発覚した6月から様々な対応を開始した。すでに具体的な施策は取引先各社などには説明しているが、今回の問題は営業担当者が1人で抱えて本来は関わらなくてよいところに関わっていたということが大きく、それは(広告関連業務が)属人的になってしまっていたところも大きい。営業担当者による不正の余地をなくすために、CM進行表、放送確認書の業務に営業担当者を関与させない体制を作って再発防止を徹底していく」としている。

 今回のCM無断差し替え問題を受けて、当該営業担当者は「社内規定に基づいて懲戒処分を実施した」(同社)ほか、TBSラジオのトップである三村孝成氏が9月30日付で取締役会長を辞任、林慎太郎社長は10月1日付で代表権を返上する。なお、新たにグループのBS‐TBSの向山明生専務が10月1日付で代表権を持つ会長に就任するとしている。

 TBSラジオによる今回のCMの無断差し替え問題はラジオ通販実施事業者や広告代理店らにも大きなショックを与えたよう。

 「考査を通った後に内容が勝手に修正されるなど考えられないこと。全国のラジオ局に多くの本数を出稿しているため、実際に1本1本オンエア内容を確認することは難しく、レスポンスで成果を見ているが内容が知らぬ間に変わっているのであればその前提は崩れてしまう。非常に憤りを覚える」(通販A社)、「内容が勝手に修正されることなど考えもしないため、特にパーソナリティが読みあげる生CMはオンエアでの確認が難しく、多くの広告主は(原稿内容が変わっていても)気がつきにくいのではないか。実際に、生CMの原稿書き換えに関しては(TBSの)調査まで発覚しなかったわけで悪質。他の局は大丈夫かと思ってしまう」(通販B社)、「20年以上前だが複数のテレビ局で広告料は受け取りながら、広告主のCMを放送しなかった『CM未放送問題』ということが起こったが、本質的にはこれに類するもの。TBSラジオの責任は重い」(広告代理店C社)、「恐らく広告主は他局で同じ広告素材を使って出稿しており、ノルマに追われているはずの営業担当者も考査が通らなかったとは言えず、無断で差し替えを行ってしまったのだろうと推測される。気持ちはわからなくはないが、無断でのCM差し替えは広告主と放送局の信頼関係を揺るがす重大な問題で看過できない」(広告代理店D社)など声が今回のCM無断差し替え問題について通販事業者や広告代理店らから聞かれた。

 揺らいだ広告主の信頼をどう回復させていけるか。ラジオ広告全体のイメージ回復も含めてTBSラジオの今後の取り組みが注視されそうだ。

 
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