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消費者庁 「送料無料」の法規制見送り、適正運賃収受の妨げ「確認できず」

2023年12月22日 12:00

 消費者庁は、「送料無料」表示について、法規制による見直しを見送る。事業者に表示の理由や負担の仕組みに関する説明の自主的な対応を要請した。表示が適正運賃収受の妨げとなっているかには、「配送コストが送料に転嫁されていないことまで確認できなかった」(消費者庁)と結論づけた。

 
 6月から9回に渡り意見交換会で運送業界や荷主である事業者団体、消費者団体からヒアリングを行ってきた。12月19日に結論を公表した。

 「送料無料」など、商品価格以外の追加負担を求めない旨を表示する場合、消費者に誤解が生じないよう負担の仕組みや理由の説明を求める。「〇〇キャンペーン期間中のため」など販売促進の一環であることや、「配送業者に契約に基づき適正な運賃を支払っている」などを一例に示す。また、「送料無料」に代わる負担の仕組みの例示は「送料当社負担」、「〇〇円(送料込み)」を示した。

 法的措置は取らず、表示の有無や表示方法は問わない。要請は、意見交換会参加の事業者4団体(日本通信販売協会、新経済連盟、アジアインターネット日本連盟、セーファーインターネット協会)に依頼。ほかの流通関連団体への依頼は、周知状況を見て判断する。

 自主的対応とした理由は、「消費者の一定の支持があり、苦情相談もない。1円であればよいのかなど規制の難しさもある。経済活動の自由を総合的に考慮して判断した」(消費者政策課)とする。

 見直しの検討は、「運賃が送料に適正に転嫁されるべき」との観点から行われた。これに対する評価は、「事業における吸収、どの程度の転嫁が適切か、配送実費を技術的に示す難しさもある」とした。

 消費者庁は今後の対応状況を「注視する」としている。ただ、具体的な方策は、「検討中」。実効性の確保は、「意見交換会を通じ、説明責任の共有はできた。事業者団体も協力姿勢を示している。規制措置で意見の分断を招くのでなく、一丸となって取り組むのが望ましいと考えた。通販など事業者団体の対応に期待し、消費者の物流負荷に関する認識が深まることを期待している」とした。

 要請に、日本通信販売協会は、「消費者庁の考え方を会員事業者に周知し、自主的な取り組みの働きかけに努める」とコメント。表示是正を強く要望した全日本トラック協会(全ト協)は、「これまでドライバーの意見を聞いてもらう機会がなかった。負担を見える化し、取り組みのフォローも行うとしている。見直しに向けた前進と一定の評価をした。協会としても取り組みを注視する。ドライバーの苦労のもと物が届いているという理解が社会に広がればと思う」とした。

 表示の是正は、今年6月に閣議決定された「物流革新に向けた政策パッケージ」に、適正運賃収受の観点から「見直す」と盛り込まれた。背後には、全ト協と連携して政治活動を行う全日本トラック事業連盟の要請もあったとみられる。連盟は結論に「要望のとりまとめは全ト協が行っているのでそちらに聞いてほしいが、受け止めは同じ。こちらは政治でお金のかかるところをやっているので」とコメントした。
 
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