男性用育毛剤市場は、転換期を迎えている。市場は、圧倒的な広告露出、割引施策でファーマフーズがすそ野を拡大した。だが、市場をけん引した同社の成長も陰りが見える。ウェブを主戦場とする企業の多くもLTV重視に舵をきる。
市場環境の変化は、いくつか要因がある。一つは、テレビ、ウェブなど全方位で展開するファーマフーズの存在だ。「初回定期半額(税込2750円)」という利益を度外視した強力なオファーがEC市場にも影響を与えた。昨年以降、EC化率98%を占め、同市場をけん引するソーシャルテックもこれに追随。育毛剤とサプリメントをセットにした「新ウルトラ定期便」(税込1万5800円)を初回定期1980円(税込み)で展開。新規獲得は、低価格オファーの競争に陥った。
広告のトレンドも変化した。かつてアフィリエイト広告は、記事広告やランキング等の比較サイトの検索上位表示により企業のランディングページに誘導する”SEO媒体”が主流だった。「商品理解も深く、高いLTVも望めた」(販売事業者)。
だが、19年以降は、グーグルによる検索アルゴリズムの改定が頻繁になる。広告審査も厳しくなり、検索上位をアフィリエイトサイトがコントロールできなくなった。
一時は、ユーチューブの長尺動画の活用も進んだが、制作費がかさみ、投資回収が遅いことから多くのアフィリエイターは、広告審査の緩い「ショート系動画」の活用が主流になる。ただ、「衝動買いが増え、記事等を読み込んで買う層に比べLTVも低い」(同)ことがネックになった。
◇
影響は、徐々に表れる。ファーマフーズは21年当時、急速なシェア拡大を「すでに天井を破っている状態」と表現していたが、279億円(育毛剤単体、22年7月期)をピークに育毛剤の売り上げは減収に転じている。定期顧客も21年の約56万人をピークに減少に転じ、前期は43万人。成長力は、オーラルケアやダイエットサプリ、まつ毛美容液など育成ブランドが補う。
ソーシャルテックも新規獲得は、獲得が容易な単品オファー(同980円)に集中した。広告トレンドが、バナーなど”ad媒体”にシフトする中、「LTV確保」、「安売りの打開」という課題が浮上した。
◇
各社、医薬部外品を扱うが有効成分の効果で差別化を図ることには限界がある。こうした中、権威づけやアンバサダーの起用などブランディング施策をはじめ、アフィリエイターの獲得をサポートする要素を提供できる商品の差別化、ロイヤリティの向上が重要になっている。
ソーシャルテックでは、昨年1月以降、独自成分(ジンゲルシックス、クロナルガンマ)の配合をベースにした成分啓発、ナノバブル発生の新容器の採用(今年11月のリニューアル)など、薬機法に対応した中で差別化を図ることができる商品設計を強化している。
今年に入りアウトバウンドの専任部署も設置。既存顧客を対象にニーズに合わせた3カ月分のおまとめ便(従来は2カ月)、セット定期、月2本の利用ユーザーのオファー、同梱物の見直しでLTVのテスト検証、投資効率の改善を図る。来年以降は、リテールやモール、海外展開など販路開拓も強化。24年3月期は、70億円前後の売り上げを目指す。
多面的なブランディング施策の展開で存在感を増しているが「RIDEN」を展開する美元だ。「ウェブのアフィリエイトは、ファーマフーズ、ソーシャルテック、美元の3社に絞られてきている印象」(広告代理店)。ソーシャルテックは、ルー大柴をアンバサダーに起用(21年)してブランディングを行うが、中心層は30代後半から40代前半。美元は、著名ユーチューバーとのコラボレーションにより、「若干若めの世代にうまくリーチできている」(同)とみる。
ビタブリッドジャパンは、21年に発売した育毛サプリ「ボリューモア」など商品ラインアップを拡充してクロスセル提案を強化する。ただ、「今年も社内で定めるKPIの達成は厳しい状況」(同社)。ダイレクトマーケティング事業の総売上高(23年2月期で約146億円、グループのダイレクトテックを含む)に占めるヘアケア関連の割合は8%程度にとどまる。
21年末、5つの有効成分・育毛関連の効果表示13種すべてを網羅した「モウダス」で市場に参入した北の達人コーポレーションも総売上高に占めるヘアケア関連の売上構成比は「個別商品の売り上げは非開示だが5%未満で前年から変わらない」(同社)としており、大きく成長していない。
市場環境の変化は、いくつか要因がある。一つは、テレビ、ウェブなど全方位で展開するファーマフーズの存在だ。「初回定期半額(税込2750円)」という利益を度外視した強力なオファーがEC市場にも影響を与えた。昨年以降、EC化率98%を占め、同市場をけん引するソーシャルテックもこれに追随。育毛剤とサプリメントをセットにした「新ウルトラ定期便」(税込1万5800円)を初回定期1980円(税込み)で展開。新規獲得は、低価格オファーの競争に陥った。
広告のトレンドも変化した。かつてアフィリエイト広告は、記事広告やランキング等の比較サイトの検索上位表示により企業のランディングページに誘導する”SEO媒体”が主流だった。「商品理解も深く、高いLTVも望めた」(販売事業者)。
だが、19年以降は、グーグルによる検索アルゴリズムの改定が頻繁になる。広告審査も厳しくなり、検索上位をアフィリエイトサイトがコントロールできなくなった。
一時は、ユーチューブの長尺動画の活用も進んだが、制作費がかさみ、投資回収が遅いことから多くのアフィリエイターは、広告審査の緩い「ショート系動画」の活用が主流になる。ただ、「衝動買いが増え、記事等を読み込んで買う層に比べLTVも低い」(同)ことがネックになった。
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影響は、徐々に表れる。ファーマフーズは21年当時、急速なシェア拡大を「すでに天井を破っている状態」と表現していたが、279億円(育毛剤単体、22年7月期)をピークに育毛剤の売り上げは減収に転じている。定期顧客も21年の約56万人をピークに減少に転じ、前期は43万人。成長力は、オーラルケアやダイエットサプリ、まつ毛美容液など育成ブランドが補う。
ソーシャルテックも新規獲得は、獲得が容易な単品オファー(同980円)に集中した。広告トレンドが、バナーなど”ad媒体”にシフトする中、「LTV確保」、「安売りの打開」という課題が浮上した。
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各社、医薬部外品を扱うが有効成分の効果で差別化を図ることには限界がある。こうした中、権威づけやアンバサダーの起用などブランディング施策をはじめ、アフィリエイターの獲得をサポートする要素を提供できる商品の差別化、ロイヤリティの向上が重要になっている。
ソーシャルテックでは、昨年1月以降、独自成分(ジンゲルシックス、クロナルガンマ)の配合をベースにした成分啓発、ナノバブル発生の新容器の採用(今年11月のリニューアル)など、薬機法に対応した中で差別化を図ることができる商品設計を強化している。
今年に入りアウトバウンドの専任部署も設置。既存顧客を対象にニーズに合わせた3カ月分のおまとめ便(従来は2カ月)、セット定期、月2本の利用ユーザーのオファー、同梱物の見直しでLTVのテスト検証、投資効率の改善を図る。来年以降は、リテールやモール、海外展開など販路開拓も強化。24年3月期は、70億円前後の売り上げを目指す。
多面的なブランディング施策の展開で存在感を増しているが「RIDEN」を展開する美元だ。「ウェブのアフィリエイトは、ファーマフーズ、ソーシャルテック、美元の3社に絞られてきている印象」(広告代理店)。ソーシャルテックは、ルー大柴をアンバサダーに起用(21年)してブランディングを行うが、中心層は30代後半から40代前半。美元は、著名ユーチューバーとのコラボレーションにより、「若干若めの世代にうまくリーチできている」(同)とみる。
ビタブリッドジャパンは、21年に発売した育毛サプリ「ボリューモア」など商品ラインアップを拡充してクロスセル提案を強化する。ただ、「今年も社内で定めるKPIの達成は厳しい状況」(同社)。ダイレクトマーケティング事業の総売上高(23年2月期で約146億円、グループのダイレクトテックを含む)に占めるヘアケア関連の割合は8%程度にとどまる。
21年末、5つの有効成分・育毛関連の効果表示13種すべてを網羅した「モウダス」で市場に参入した北の達人コーポレーションも総売上高に占めるヘアケア関連の売上構成比は「個別商品の売り上げは非開示だが5%未満で前年から変わらない」(同社)としており、大きく成長していない。