前回に続き、配送品質向上制度の詳細を楽天グループの海老名雅貴ヴァイスジェネラルマネージャー(=
写真)に聞いた。
◇
――土日が休業という店舗は少なくない。
「該当日に出荷実績のある店舗数を見ると、土日・大型連休は平日の半分程はあるので、思った以上に土日祝日も出荷しているという印象だ。ただ、今回の制度はそれなりに店舗のオペレーションへ負荷が発生するのは事実。現状の延長線上では対応が苦しくなるので、転機と捉え、外部委託や従業員の出社日を分散するなど、思い切った施策を取ってもらえれば」
「ある店舗は、今回の制度を機に事務所を閉めるとのことだった。出荷業務を全て外部委託すれば、オペレーション業務は自宅でできるので、事務所は必要なくなると。働き方を見直すきっかけになったとのことだった」
――とはいえ、今までのやり方を大きく変えるのは難しいという店舗もある。
「店舗と話していると、規模の小さな店舗は『これは大手向けの制度だ。われわれは少人数で運営しているので手が回らない』と言うし、一方で規模の大きな店舗は『うちは倉庫を構えており、平日だけ働く従業員を雇用している。中小はアセットライトなんだから、外部に委託するなどの選択肢がある』という。地方の店舗は『人員が足りない、人が雇いやすい都市部の店舗向けの制度だ』と言い、都市部の店舗は『都会は人件費が高い、地方の店舗なら土日でも安く雇えるだろう』と言う。『隣の芝生は青く見える』と言うが、皆さんそれぞれハードルがあるということだと思う」
「『早く送れという制度なのか』と店舗に良く言われるが、イエスでもありノーでもある。早く送って欲しい顧客と、遅くても構わない顧客、両方のニーズを満たせるようにしていきたい。ただ、オペレーションが大変なので『即配』にフォーカスが当たるのは仕方のない部分はある」
――「ラベル付与商品の検索優遇」へ不安を覚える店舗も多い。
「『競合のやり方がうまく行っていない』といった店舗の声は承知している。そういう良くないことがあるのなら、われわれとしてもラーニングしなければいけないという思いはある。ただ『検索順位にこれくらい反映される』という説明は店舗にできないので、『競合のようにはならない』としか言えない」
「聞き取りをした限りでは、『ユーザーが本当に欲しい商品が見つけにくくなり、流通に影響するのではないか』という点が店舗の懸念になっているようだ。もちろん、制度を導入することで流通額が減ることは望んでいないし、店舗にとってもマイナスとなる。そうならないようにしなければいけないという使命感を持っている。そのため”激しい”感じでの優遇はせず、恐らく徐々に変わっていくのではないか」
――ただ、ラベル取得のメリットも必要になる。
「バランスをどう取るかが重要になる。例えば翌日配達サービス『あす楽』対応商品は、売れているので検索順位上位に来る。購買の意思決定をするのは消費者なので、検索で大きな優遇をしなくても、長い目で見ると徐々に順位が上がってくるのではないか。それは『配送関連の情報が分かりやすい』『早く届く』といった消費者のニーズに応えられる商品だからだ」
――「対応できない曜日にはラベルを外せる」という仕組みは検討しなかったのか。
「店舗から要望があったので議題には上がったが、ユーザビリティーを考えて導入しなかった。なぜなら、前もって買い物カゴに入れておくユーザーは少なくないからだ。例えば『土日に届けてもらおう』と思い、カゴに入れておいた商品を金曜日に見たらラベルが無かった、となると非常に分かりづらい。『店舗が対応できる曜日だけラベルが出る』のではなく、『ラベルが付いた商品はすぐに出荷される』というコンセプトにするべきと考えた。ユーザーの理解と支持が得られないと、何だか良く分からない制度になってしまう」
――来年6月にはどの程度の商品にラベルが貼られると予想しているか。
「ある程度以上売れている商品のうち、半分強は対応してほしいと思っている。店舗へのアナウンスが終わり、『SKUプロジェクト』への対応も多くの店舗が完了したタイミングなので、店舗のアテンションはこれから高くなるのではないか」
「タウンミーティングなどで聞き取りをした感じでは、『売れ筋の一部商品のみラベルを取得したい』とう店舗が多いようだ。自社で出荷をしているEC企業の場合、人員を抱えていることもあり、3PL事業者に全て切り替えることはできない。とはいえラベルも欲しい、ということで『ひとまず売れ筋だけでも預けよう』いうことなのだろう」(おわり)
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――土日が休業という店舗は少なくない。
「該当日に出荷実績のある店舗数を見ると、土日・大型連休は平日の半分程はあるので、思った以上に土日祝日も出荷しているという印象だ。ただ、今回の制度はそれなりに店舗のオペレーションへ負荷が発生するのは事実。現状の延長線上では対応が苦しくなるので、転機と捉え、外部委託や従業員の出社日を分散するなど、思い切った施策を取ってもらえれば」
「ある店舗は、今回の制度を機に事務所を閉めるとのことだった。出荷業務を全て外部委託すれば、オペレーション業務は自宅でできるので、事務所は必要なくなると。働き方を見直すきっかけになったとのことだった」
――とはいえ、今までのやり方を大きく変えるのは難しいという店舗もある。
「店舗と話していると、規模の小さな店舗は『これは大手向けの制度だ。われわれは少人数で運営しているので手が回らない』と言うし、一方で規模の大きな店舗は『うちは倉庫を構えており、平日だけ働く従業員を雇用している。中小はアセットライトなんだから、外部に委託するなどの選択肢がある』という。地方の店舗は『人員が足りない、人が雇いやすい都市部の店舗向けの制度だ』と言い、都市部の店舗は『都会は人件費が高い、地方の店舗なら土日でも安く雇えるだろう』と言う。『隣の芝生は青く見える』と言うが、皆さんそれぞれハードルがあるということだと思う」
「『早く送れという制度なのか』と店舗に良く言われるが、イエスでもありノーでもある。早く送って欲しい顧客と、遅くても構わない顧客、両方のニーズを満たせるようにしていきたい。ただ、オペレーションが大変なので『即配』にフォーカスが当たるのは仕方のない部分はある」
――「ラベル付与商品の検索優遇」へ不安を覚える店舗も多い。
「『競合のやり方がうまく行っていない』といった店舗の声は承知している。そういう良くないことがあるのなら、われわれとしてもラーニングしなければいけないという思いはある。ただ『検索順位にこれくらい反映される』という説明は店舗にできないので、『競合のようにはならない』としか言えない」
「聞き取りをした限りでは、『ユーザーが本当に欲しい商品が見つけにくくなり、流通に影響するのではないか』という点が店舗の懸念になっているようだ。もちろん、制度を導入することで流通額が減ることは望んでいないし、店舗にとってもマイナスとなる。そうならないようにしなければいけないという使命感を持っている。そのため”激しい”感じでの優遇はせず、恐らく徐々に変わっていくのではないか」
――ただ、ラベル取得のメリットも必要になる。
「バランスをどう取るかが重要になる。例えば翌日配達サービス『あす楽』対応商品は、売れているので検索順位上位に来る。購買の意思決定をするのは消費者なので、検索で大きな優遇をしなくても、長い目で見ると徐々に順位が上がってくるのではないか。それは『配送関連の情報が分かりやすい』『早く届く』といった消費者のニーズに応えられる商品だからだ」
――「対応できない曜日にはラベルを外せる」という仕組みは検討しなかったのか。
「店舗から要望があったので議題には上がったが、ユーザビリティーを考えて導入しなかった。なぜなら、前もって買い物カゴに入れておくユーザーは少なくないからだ。例えば『土日に届けてもらおう』と思い、カゴに入れておいた商品を金曜日に見たらラベルが無かった、となると非常に分かりづらい。『店舗が対応できる曜日だけラベルが出る』のではなく、『ラベルが付いた商品はすぐに出荷される』というコンセプトにするべきと考えた。ユーザーの理解と支持が得られないと、何だか良く分からない制度になってしまう」
――来年6月にはどの程度の商品にラベルが貼られると予想しているか。
「ある程度以上売れている商品のうち、半分強は対応してほしいと思っている。店舗へのアナウンスが終わり、『SKUプロジェクト』への対応も多くの店舗が完了したタイミングなので、店舗のアテンションはこれから高くなるのではないか」
「タウンミーティングなどで聞き取りをした感じでは、『売れ筋の一部商品のみラベルを取得したい』とう店舗が多いようだ。自社で出荷をしているEC企業の場合、人員を抱えていることもあり、3PL事業者に全て切り替えることはできない。とはいえラベルも欲しい、ということで『ひとまず売れ筋だけでも預けよう』いうことなのだろう」(おわり)