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コンテンツ商品が堅調【ビーノスの直井CEOに聞く 越境ECの市場動向と展望㊦】 ブランド価値を伝える視点で

2023年11月 2日 12:00

 前号に続き、越境EC支援サービスを手がけるビーノスの直井聖太社長兼グループCEOに、世界情勢が大きく変化を見せる中での近年の越境ECの市場動向や今後の展望などについて聞いた。

                                                                        ◇

 ――物流事情や各国の規制内容などが変化する中、日本企業が取り組むべきことは。

 「今までは日本の人気ブランドを、海外の消費者が自分たちで知って買ってもらうことができていた。これからは日本企業から発信することが大事であり、インバウンドも絡めてブランドを認知してもらう取り組みが鍵になる」

 ――今、海外で支持される日本商品は。

 「よく売れるという点ではやはりホビー関連商材となる。それ以外では、昨年に当社が米国でキャラクターコスメを展開したところ、評判が良くてこの市場は成長するということを再認識できた。例えば、日本で人気のあったゲームキャラクターをブランディングに起用したコスメなどは意外と米国でも支持を得ることができた。現地のリアルの小売店からもっと販売してほしいという話も出たくらいだ。

 また、こういったキャラクター商品は日本でのインバウンド人気もある。キャラクターのリップクリームなどを日本のリアルで土産物として購入している外国人観光客も少なくない。越境EC、現地のリアル店舗、日本でのインバウンド需要などを組み合わせながら顧客と接点を持っていくことを行っている」


 ――キャラクターコンテンツ商品以外のところでは。

 「一例として、当社でも支援をしている靴下のタビオさんとの取り組みがある。こちらはデザインや素材にこだわった単価の高い商品も取り扱っていて、海外でのプロモーションを支援した際にはその月の注文件数が3倍になったこともあった。きちんとした商品を作っていけば、まだまだマーケティングをしていく余地は十分あるというのが我々の感覚。また、以前に聞いたスタートアップ企業の話だが、北陸で昔ながらの日本食器を製造している職人の企業では、職人が作るストーリーをきちんと外国人目線で記事として落とし込んで販売したところ、一つのブランドとしての価値が伝わり、米国向けに成長しているところもあった。工芸品なので、決して単価も安いものではないが、一生懸命時間をかけて作っていることが伝わっているのだと思う」

 ――一方、売り上げで伸び悩んでいる企業の例としては。

 「やはりプロモーションなり、マーケティング活動なりを何かしら行わないと、自社商品が今持っている認知の範囲の中での売り上げにしかならないということはある。もちろん運良く何かのきっかけで注目されて、急激に売り上げが伸びるケースもあるので可能性がないわけではないが。とにかく、ここ数年で感じてるのは、日本企業による海外でのプロモーションが圧倒的に少ない。トライアンドエラーが少ないということ。この何年間かは日本企業も保守的になっていたり、自信を失っていることもあるのかもしれない」

 ――今年10月時点で1ドル150円に近い為替となっているがその影響については。

 「越境ECにとって、追い風になっている部分は多少あると思う。1人当たりで購入する金額というのは日本円にすると増えているかもしれない」

 ――原発の処理水を巡り、中国政府が日本の海産物などの輸入規制を強化した。

 「当社でも2次流通でお酒などを扱っており、中国向けにも販売していたがそれがストップとなった。海産物だけではなくて食品全般が販売できなくなったので、市場が大きいことは事実だがリスクが大きいのも事実。当社も一時期は流通額で中国が50%に近いくらいの構成比となっていたが、年々減らしてきているということもあり、今では5%を切っているような状況。どちらかと言えば、今はもう影響を受けた後の段階にいる」

 ――越境ECで中国との取り引きが縮小することについては。

 「一つ言うと、日本の商品が中国にとってそこまでの魅力が無くなってきている面はある。10年くらい前は中国商品よりも日本商品の品質が高く見られて評価されていたが、今は中国の人たちも自国の商品が一番好きになっている状態。中国の電気自動車などが世界で伸びている例も大きい。自国のメーカーに対する消費者の信頼が増したという側面はあるし、実際に品質は向上している。

 その上で、今回のような政治リスクもあるため、日本企業がわざわざ中国に入っていく余地は難しい面もある。もちろん、我々はまだ中国向けに活動は行っていて、別に閉鎖しているわけではないが、以前のようにそこだけに過度にフォーカスするようなことはしていない。すでに我々の販売国のうち、米国が約30%を占めている」


 ――今後の越境EC市場の可能性は。

 「間違いなく伸びていくと思う。当然、マクロの目線で見た時に、今後の世界経済の10年後を断言することは(紛争や政情不安など)不確定要素もあって難しい。

 ただし、そうした不確定要素を抜きにして考えると、日本が差別化した商品であったり、ブランド化した商品を売っていく市場は間違いなく広がっている。そこをチャンスと見て飛び込むのか、日本の国内で止まっているのかということは、今、皆さんに決断してもらうタイミングが来ているのかもしれない。やはり、どうしても国内はなかなか伸びにくい状況となっているわけなので。

 日本はASEANの各国や欧米との関係性が悪いわけではないので、市場はそれぞれある。そうした国々は経済も上り調子にあるため、そこに対して果敢に攻めて行くかどうかを考えるかということだと思う」(おわり)


 
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