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質評価の妥当性に疑問【「論文評価委」の短慮③】 研究者、購読会員、行政関係者も呆れ

2023年 5月25日 12:00

 「機能性表示食品『届出論文』評価委員会」は、論文の「科学的な質」を評価することで、届出の質向上を図ることを目的にする。しかし、科学的な質の絶対的評価など行えるのか。

 「研究結果に求める根拠の強さにはアカデミアでもばらつきがある。線引きはできない」。評価委の評価基準について、ある企業の研究職にある人物はそう指摘する。

 分かりやすい例が、認知機能の機能性評価だ。「記憶力の維持」と表示するが、細かく見ると「言葉、物のイメージ、位置情報を思い出す力」「言葉や数字、図形などを覚え、思い出すこと」など内容は微妙に異なる。

 このようになるのは、脳機能において、10ほどの指標を並行して評価するためだ。結果として、「物のイメージは効果が期待できるが、図形の覚えは変化がみられない」「図形は覚えているが、位置情報に関する記憶に変化はない」といった結果が生じうる。有効的な結果に基づき届出は行われている。ただ、一部に否定的な結果が含まれる場合、総合的に見て「記憶力の維持」に有効的と言えるのか、という問題が生じる。これが質に関する「多重性」の問題の一つだ。被験者の数、論文1報のシステマティックレビューなど同様に質に関わる問題はある。

 本来、評価指標を絞り、十分な被験者数を確保すれば確度は高まる。国が審査する医薬品はより厳格な評価が求められている。ただ、制度は「届出制」であり、食品は事業者裁量がベース。コストの問題もあり、「医薬品ほどパーフェクトではない」(同)。

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 質に対する評価も、アカデミアで割れる。「効いている傾向をよしとする見方もあるし、明確な見極めが必要とする研究者もいる」(同)。

 どの程度の質を求めるか、所管する消費者庁も示してはいない。「『行政科学』などと言われるが、そもそも基準をつくるのは科学ではない。だから行政としてどう見るか、という行政科学や業界としてどこまで求めるかのルールが必要というのはある」(別の企業関係者)。評価委はこれをわずか3人の委員で、独自に行うというのだ。

 5月19日には、第1回の会合を開催。早くも特定の論文について、「有効性を示すものとは言えない」と評価した。以前から狙いを定める論文があり、効果的に影響力を発揮するため、「委員会評価」↓「メディア公開」というスキームを構築したのだろう。ただ、「著名な専門家を多く集め、業界として取り組むのであれば分かるが、求める質に違いがある中で、少ない人数で評価した結果の妥当性の問題もある」(同)、「非公開で議論する意味が分からない」(冒頭の関係者)との指摘もある。

 現在、届出されているものには、その質に疑義が生じうるものはある。ただ、基準をどこに置くかは繊細で、難しい問題だ。「深刻な疑義は公表するというが、あくまで評価委の基準。絶対的評価ではない。優れたものを評価するというなら分からなくもないが、メディアを通じて公開する可能性に触れること自体、当該企業への圧力」(WNGの購読会員)、「メディアが自分の責任で言うのは好きにすればよいが、評価委を背景に企業に問うのは問題」(別の購読会員)との声もある。

 行政関係者は、スキームに対し「購読会員のみへの公開など特定出版社への利益相反問題と、医学会の関連ガイドライン作成などの対応を全く無視した愚弄したもの」(行政関係者)と呆れる。(つづく)

 
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