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「水素分子」で初の届出、機能性評価法に議論も

2023年 4月 6日 10:00

 「水素」を含む食品の健康効果が再び議論を呼びそうだ。三菱ケミカル子会社の新菱は、水素分子を機能性関与成分に機能性表示食品の届出を行った。公表は2月。6月に発売を予定している。

 届出商品は、「高濃度水素ゼリー」。ストレスを抱える女性の睡眠の質(睡眠時間延長感)を高める機能を表示。機能性の評価は、システマティックレビュー(SR)で行われている。

 新菱は、「高濃度水素ゼリー」を19年10月に発売。美容・健康に関心の高い20代以降の女性をターゲットに展開してきた。百貨店の期間限定店舗の展開も行っており、最近は60代以降の顧客も増えている。通販事業、商品単体の売り上げは、開示していない。

 機能性表示食品の活用を受け、今後はウェブや限定ショップに加え、テレビ通販、公式SNSの活用によりブランディングを強化する。

 海外展開も視野に入れる。「内容や条件により(OEMや原料供給も)対応可能」(同)としており市場への浸透を図る。

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 「水素」による届出は初めてだ。制度は、事業者の自己責任による届出制。一定の安全性、機能性評価の基準を満たせば活用できる建付けだ。

 新菱は、九州大学と共同でヒト臨床試験を行い、その機能を確認している。届出は、SRで実施。公表に2年を要した。ただ、水素は、その健康効果が議論を呼ぶいわくつきの素材でもある。今回の届出も、評価に採用した試験の”多重性”の問題を指摘する声がある。多重性とは、「数を打てば当たる」ではないが、試験実施にあたり、複数の評価項目を設定することにより生じる問題だ。

 試験は、睡眠感、心理的ストレス、気分など感情の状態の3指標を評価されたが、論文化は睡眠感のみ。また、睡眠に関する評価では、「起床時眠気」「入眠と睡眠維持」「夢み」「疲労回復」「睡眠時間」などの5つの因子で計16のスコアを調べたが、5つのうち1項目のみ有意差が得られた。「都合のより結果のみ取り上げるのは多重性の問題がある。『長く寝た感じ』は改善されているが多重性の問題は否定されていない。1報のみのSRも議論はある」(行政関係者)との指摘がある。

 被験者は、摂取群、非摂取群で計29人。「数が少なく、選定方法にも疑問がある。臨床試験評価による届出が困難と判断して、SRによる届出に切り替えたのでは」(企業関係者)、「SRであれば評価可能な制度上の問題もある」(別の企業関係者)という意見も聞かれる。

 新菱は、多重性の問題に「ノーコメント」。届出は、当初からSRで行ったとしている。

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 「水素」をめぐっては、以前からその健康効果の是非が取沙汰されている。

 16年には、水素水の効果について「ニセ科学」と否定する記事の内容をめぐり、学識経験者らの間で議論が行った。同年12月には、国民生活センターが、健康な人を対象に水素の有効性を確認した知見は少ないとして水素溶存をうたう商品や、水素水生成器の商品テストを実施。消費者への注意喚起と、事業者に表示改善を求めた。

 新菱は、ロコモ対策やアスリート向け、ペット用など、さまざまな水素ゼリーを展開する。今後、これら商品での制度活用は「未定」(同)とする。新たな届出に対する市場の評価が注目される。

 
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