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通販は前年比120%で推移【有力企業の通販戦略 JR東日本商事㊤】 鉄道グッズと地産品がけん引

2023年 1月12日 10:30

 JR東日本商事では、通販事業において独自性の高い商品に絞り込んだMD戦略を図り、売上高を伸ばしている。近年はリアル拠点を通じたOMO施策にも力を入れるなど、鉄道関連事業ならではの強みを生かした戦略展開を図っている。

 同社では、小売り部門で直営店や卸販売と並び、JR東日本が運営する仮想モール「JRE MALL」においてカテゴリーごとに特化した専門店をいくつか出店した形でのECを行っている。

 今期に関しては、11月末時点で通販事業全体の売上高が対前年比120%で推移している。好調の背景にはこれまでカテゴリーを広く取っていた品ぞろえを、鉄道グッズや地産品といった同社の強みを発揮しやすい分野に絞り込んだことがある。

 とりわけ、実店舗とECの共通で「トレニアート」の屋号で展開している鉄道グッズ販売に関しては、鉄道開業150周年などを迎えたこともあって関連消費が拡大した。これまでECでは実店舗の販売商品を取り扱うという流れがあったが、今期については周年記念に合わせたオリジナル商品をEC向けに次々と投入している。

 現状、駅ナカなどを中心とした実店舗で取り扱う商品の場合、その場で手に取りやすい価格帯のステーショナリーや日用品、消耗品類の開発比率が高いが、ECでは高額商品や重量のある大型商材、受注生産商品などネットで購入する理由があるものがMDの中心となりつつある。

 具体的には、東北新幹線の開業40周年を記念した「純金小判」(税込25万円)をはじめ、品川駅の駅構内(横須賀線ホーム)に22年5月まで実際に使用されていた分岐器のレールから製造された受注生産型の「レールブックエンド」(同4万円)がある。ブックエンド(画像)は2キログラム近い重量があるため、大型時刻表もしっかりと立てることができる。両商品とも現在までに想定以上の販売を記録している。

 また、1980年代に登場して当時大ヒットモデルとなった時計ブランドのシチズン「アナデジテンプ」から、150周年記念の限定モデルが登場。新橋~横浜間の鉄道開業時にイギリスから輸入された蒸気機関車をモチーフにデザインした1号機関車モデル(同3万8500円)のほか、16年から営業運転を開始した山手線E235系をモチーフにしたモデル(同3万6300円)、1979年のデビューから、約30年に渡って中央線を走った201系をモチーフにしたモデル(同)の合計3種類も取り扱い、11月末までに合計で500個近くを売り上げている。そのほかにもJR東日本の社員が車両や鉄道関連現場を撮影した写真を使ったオリジナルカレンダーなども前年に引き続き売り上げを伸ばしている。

 「実店舗での売り方を意識したものから少し発想を変えて、鉄道コンテンツにどのような価値を感じているか、本来の鉄道グッズの魅力を考えながら商品開発をしていった」(コンシューマ商品本部の笹川俊成取締役本部長)と説明。時間をかけて商品選びができるECにおいては、その場で手に取りやすい実用的な小物だけではなく、嗜好性の高い商材もマッチするという視点が奏功した。

 現在、出店先モールの「JRE MALL」でもJRグループ外の出店店舗数が増えており、取扱カテゴリーが拡大してきたことから、同社として専門性を発揮できる分野に注力することが売り場での差別化につながっているようだ。

おせち販売が前年比増

 なお、下半期に関しては、主力商品の一つでもあるおせちについて、11月末時点までの受注実績が前年を上回っているという。とりわけオリジナル商品が好調だったようで、中でもマスコットキャラクターの「Suicaのペンギン 和洋オードブル」(2段重・2~3人前で同2万3600円)が新商品としてヒット。重箱は、Suicaのペンギンと子ペンギンがデザインされており、食事後も小物入れとして使用できる。また、Suicaペンギンがデザインされた箸袋や焼き印された蒲鉾などもあり、和洋32品目の食材で構成されていることからも、幅広い年代の支持を得ることができた。

 2021年は、コロナ禍で飲食店やホテルなどリアルにメイン販路を持つ企業がおせち市場に参入するケースが増えたことから苦戦も見られたが、今期は競合環境が落ち着きを見せており、同社のおせち売り上げも回復している。

 同じく主力商品のボジョレーについても、リアルを含めて販売しているが、近年は現地からの輸送費や資材といった仕入れコストが上昇。しかしながら、値上げ幅を抑えながら販売を行ったことで一定の売り上げを確保することができたようだ。(つづく)

 
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