ニュースの断層、どうなる?プライムの行方、新たな城で"再スタート"か?
「田端さんが自ら"トップセールス"に動いているらしい。どうやら複数社に連絡がいっているようだ」。今を遡ること数ヶ月前あたりから、複数の関係筋から漏れ伝わってきていた「噂」が現実のものになった。
噂。それは今回、ジパング・ホールディングスが9月28日付で発表したテレビ通販事業を主力とする物販部門を切り離して、11月にも広告代理店に3億円で売却するという件に絡んだもの。要は以前から「ジパングHDが通販事業を売却したがっているらしい」という噂が出ていた訳だ。
ジパングHDと言えば、今年1月に老舗テレビ通販企業として知られる「プライム」が金鉱山採掘の「ジパング」を吸収合併する形で誕生した企業。「通販と金探鉱」という業種の異なる事業を手がける異色の企業は、誕生当初からある意味で注目を集めていた。両社の合併によるメリットや相乗効果がまったく見えないためだ。
実際のところ、両社の合併の目的は相乗効果云々ではなく、長らく債務超過状態から脱却できずに苦しい経営を強いられてきたプライムと、すでに店頭公開を果たしているプライムとの合併でコストをかけず、「上場」して金探鉱事業拡大に必要な資金を投資家から集めたいジパングの思惑が合致したもの、と見る業界関係者も多かった。
今年1月の誕生から約10カ月で主力事業の1つである通販事業を切り離し、金探鉱事業に経営資源を集中させるというジパングHD。同社の代表取締役社長でプライム創業者の田端一宏氏も11月に予定する物販事業の売却と同時に同社社長を退く予定。言ってみれば、ジパングHDは「プライムと合併する前の『旧ジパング』に戻った」わけだ。
「プライム」として見れば、「ジパング」に"上場"(※現在、ジパングHDは裏口上場を防ぐ「決まり」に該当しており、上場再審査を受けている)という"旨み"だけを取られて、会社から叩き出された構図に見える。つまり、「ジパング」の上場に利用されただけ。では、旧プライム陣は「ジパング」に恨み骨髄か、というと実はそうでもないという憶測もある。
その根拠が冒頭の業界の噂だ。それが本当だとすれば、田端氏を中心とした旧プライム陣営は、むしろジパングHDから出たがっていた、と見られるからだ。「ジパング」が「プライム」を上場に利用したように、「プライム」もまったく毛色の異なる「ジパング」と初めから長く一緒にやっていきたいというよりも、「上場」という見返りに膨らんだ赤字を解消してくれる割り切った関係と見ていたのではないか。
かつてプライムは腹筋運動器具「アブトロニック」で空前のブームを作り、テレビ通販企業の代名詞的な存在となった。また、そのプライムを率いていた田端社長は「時の人」となり、田端氏の経営手腕やヒット商品の種を見つける確かな視点を評価する業界関係者は多かった。その後はヒット商品に恵まれず、次第に業績が悪化。債務超過状態に陥っていくわけだが、今でもプライムが持つテレビ通販ノウハウや田端氏のテレビ通販事業の手腕を評価する関係者は多く、実際、一時代を築いた力は本物であろう。
今回の一連の動きで、「プライム」は多くのものを失ったように見えるが、その一方で会社を潰すなどテレビ通販を行う上で重要な「信頼」は失うことなく、新しい試みを行うのに邪魔となっていた「赤字」と目先の業績の増減で罵声を浴びせる「うるさい株主」と決別することに成功した。
今後、ジパングHDの物販事業は旧プライム時代に取引のあった中堅広告代理業のアドツープラドの関連会社で同社社長の岡澤隆氏が社長を務めるADエージェンシーが継承する予定。ADエージェンシーでは本紙の取材に対して、現在、詳細を詰めている最中で人事を含めて具体的なことはお話できない、としている。ただ、冒頭の噂が事実ならば、岡澤社長の下に田端氏が説明をしに行った可能性は高く、同社を「新たな城」として、田端氏を含む身軽になった旧プライム陣営が新たにテレビ通販事業に挑むと考えるのが自然だろう。
無論、詳細が分からないため、憶測の域は出ないが、仮にこの憶測が事実だとすれば、是非ともプライムおよび田端氏の再起を祈りたい。かつてのテレビ通販の雄が再び、返り咲くことができるか。期待したい。
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噂。それは今回、ジパング・ホールディングスが9月28日付で発表したテレビ通販事業を主力とする物販部門を切り離して、11月にも広告代理店に3億円で売却するという件に絡んだもの。要は以前から「ジパングHDが通販事業を売却したがっているらしい」という噂が出ていた訳だ。
ジパングHDと言えば、今年1月に老舗テレビ通販企業として知られる「プライム」が金鉱山採掘の「ジパング」を吸収合併する形で誕生した企業。「通販と金探鉱」という業種の異なる事業を手がける異色の企業は、誕生当初からある意味で注目を集めていた。両社の合併によるメリットや相乗効果がまったく見えないためだ。
実際のところ、両社の合併の目的は相乗効果云々ではなく、長らく債務超過状態から脱却できずに苦しい経営を強いられてきたプライムと、すでに店頭公開を果たしているプライムとの合併でコストをかけず、「上場」して金探鉱事業拡大に必要な資金を投資家から集めたいジパングの思惑が合致したもの、と見る業界関係者も多かった。
今年1月の誕生から約10カ月で主力事業の1つである通販事業を切り離し、金探鉱事業に経営資源を集中させるというジパングHD。同社の代表取締役社長でプライム創業者の田端一宏氏も11月に予定する物販事業の売却と同時に同社社長を退く予定。言ってみれば、ジパングHDは「プライムと合併する前の『旧ジパング』に戻った」わけだ。
「プライム」として見れば、「ジパング」に"上場"(※現在、ジパングHDは裏口上場を防ぐ「決まり」に該当しており、上場再審査を受けている)という"旨み"だけを取られて、会社から叩き出された構図に見える。つまり、「ジパング」の上場に利用されただけ。では、旧プライム陣は「ジパング」に恨み骨髄か、というと実はそうでもないという憶測もある。
その根拠が冒頭の業界の噂だ。それが本当だとすれば、田端氏を中心とした旧プライム陣営は、むしろジパングHDから出たがっていた、と見られるからだ。「ジパング」が「プライム」を上場に利用したように、「プライム」もまったく毛色の異なる「ジパング」と初めから長く一緒にやっていきたいというよりも、「上場」という見返りに膨らんだ赤字を解消してくれる割り切った関係と見ていたのではないか。
かつてプライムは腹筋運動器具「アブトロニック」で空前のブームを作り、テレビ通販企業の代名詞的な存在となった。また、そのプライムを率いていた田端社長は「時の人」となり、田端氏の経営手腕やヒット商品の種を見つける確かな視点を評価する業界関係者は多かった。その後はヒット商品に恵まれず、次第に業績が悪化。債務超過状態に陥っていくわけだが、今でもプライムが持つテレビ通販ノウハウや田端氏のテレビ通販事業の手腕を評価する関係者は多く、実際、一時代を築いた力は本物であろう。
今回の一連の動きで、「プライム」は多くのものを失ったように見えるが、その一方で会社を潰すなどテレビ通販を行う上で重要な「信頼」は失うことなく、新しい試みを行うのに邪魔となっていた「赤字」と目先の業績の増減で罵声を浴びせる「うるさい株主」と決別することに成功した。
今後、ジパングHDの物販事業は旧プライム時代に取引のあった中堅広告代理業のアドツープラドの関連会社で同社社長の岡澤隆氏が社長を務めるADエージェンシーが継承する予定。ADエージェンシーでは本紙の取材に対して、現在、詳細を詰めている最中で人事を含めて具体的なことはお話できない、としている。ただ、冒頭の噂が事実ならば、岡澤社長の下に田端氏が説明をしに行った可能性は高く、同社を「新たな城」として、田端氏を含む身軽になった旧プライム陣営が新たにテレビ通販事業に挑むと考えるのが自然だろう。
無論、詳細が分からないため、憶測の域は出ないが、仮にこの憶測が事実だとすれば、是非ともプライムおよび田端氏の再起を祈りたい。かつてのテレビ通販の雄が再び、返り咲くことができるか。期待したい。