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景品表示法検討会 確約要件に「返金措置」、日弁連など要請、「なじまない」指摘も

2022年10月13日 12:00

 消費者庁の「景品表示法検討会」は、10月5日に行われた第7回会合で、関係団体、学識経験者からのヒアリングを終えた。確約制度、繰り返し違反の課徴金割増しなど制裁強化にほぼ反対意見はなく、導入される公算が高い。9~10月にかけて行われた3回に渡るヒアリングを経て、「返金措置」の導入など制度設計の要請が出そろった。
 
 第8回会合は、日本弁護士連合会(=日弁連)、佐藤吾郎岡山大学大学院教授、検討委員を務める白石忠志東京大学大学院教授からヒアリングを行った。

 日弁連は、確約の要件に返金措置を導入することを求めた。同様の意見は、前回までにヒアリングを行った複数の適格消費者団体関係者が揃って要請する。被害回復の観点から要請が根強い。

 課徴金制度において、自主返金制度(課徴金額の減額・免除)、違反行為の自主報告(課徴金を2分の1に減額)の活用が遅れていることが背景にある。自主返金は、課徴金制度導入から6年半で4件、自主報告も昨年は2件にとどまる。

 日弁連は「措置命令は行われるため事業者にとって活用のインセンティブが低い」(日弁連)と指摘。「調査以前」に限定した自主報告により、措置命令・課徴金命令を免責するよう制度の見直しを求めた。一方、自主報告の要件として、「違反行為の中止」「違反事実の公表」「返金措置」などを求める。

 確約も課徴金算定率の引き上げを求める一方、「返金計画の提出」を要件とするよう提案した。繰り返し違反への課徴金割増しなど執行力強化とセットで検討して返金を促す。

 調査前の自主報告については、「処分権限を発動しないため、現行法でも運用次第で可能では」と委員から指摘を受けた。

 返金の要件には、「小売は販売先を特定できるが、メーカーの場合はどうするか」、「『効果のない商品=不良品』など優良誤認はなじむが、有利誤認は全品半額との表示で全品でなかった場合も、顧客は一定の利益を確保しており、全額返金はバランスが悪い」などの指摘があった。白石教授もヒアリングで、「不当表示の態様はさまざまで確約制度で返金を義務とするのは難しい」と指摘した。

 佐藤教授は、確約の要件として「悪質性の程度(過去の違反、表示管理体制等)」、「返金措置」を要件とするよう求めた。また、事業者の活用を促す目的で「事業者名を公表しない制度の検討の余地がある」とした。

 委員からは、「返金を行う場合に公表を避けるのは難しい」、「公表の有無を行政裁量で判断すると、”公表するならば確約しない”という事業者がでて迅速な是正が進まない」と指摘を受けた。

 白石教授は、繰り返し違反の課徴金割増しについて、「前回違反者と同一視できることが前提だが、景表法はこれを困難にする悪質業者もいる」と指摘。法人の清算・設立を繰り返すケースを想定したとみられる。措置命令文で将来行為の抑止を図り、繰り返した場合に「命令違反」として罰則を科す方法論を提案した。ただ、命令と直接関係のない行為の抑止を図る解釈上の問題など一定のハードルがあるとした。

 今後の検討課題として、中川座長は、確約制度の適用対象や公表の有無、返金がなじまないモデルへの対処をあげた。



中川座長「年内に結論」、根拠情報の要求権限求める


適格団体の権限強化

 検討会は、中長期的な検討課題と想定していた適格消費者団体の権限強化について、年内に結論を得る。第8回会合で中川丈久座長が、「本年中に結論を得る課題にしてもよいと思う」と言及した。

 権限強化は、ヒアリングを行った複数の消費者団体から要請があった。消費者庁と適格消費者団体の連携強化に向け、「行政処分の作成資料の情報提供」、事業者への立証責任の転換を念頭に置いた「不実証広告規制(合理的根拠の要求権限)、もしくは類似の制度」などの導入を求める。

 日本弁護士連合会(=日弁連)は、景品表示法の「優良誤認」をめぐる訴訟手続きにおいて根拠精査や人員不足等の課題があると説明。被害回復に向けた集団訴訟権限を持つ特定適格消費者団体(特定適格)に行政処分の根拠情報など作成資料の提供を求める権限を要請した。事業者への合理的根拠の要求権限、資料を提出しない場合に「不当表示」とみなす不実証広告規制と同様の制度、事業者から提出を受けた資料の分析を国の研究機関に依頼できる権限も求める。

 適格団体による訴訟について規定する消費者裁判手続特例法は、今年3月の改正で特定適格が特定商取引法、預託法の処分に関連した行政資料の提供を受けられるようになった。

 訴外でも円滑な差止請求の運用に向け、適格消費者団体にも事業者に根拠資料を要求できる権限の付与を求める。同様の要求は、9月~10月のヒアリングで複数の消費者団体が求めた。

 ただ、今会合で、委員からは「民事の一方当事者であり、国が肩入れすることは難しい。財政基盤強化の仕組みを検討するほうがよいのでは」と指摘を受けた。日本通信販売協会もヒアリングで「民間団体であり、権利行使の乱発、守秘義務が担保されない」と反対しており、根拠要求権限の付与は高いハードルがある。権限強化の議論は、処分情報提供の可否を中心に議論されることになりそうだ。

 
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