大丸松坂屋百貨店は、大丸東京店で展開するショールーミングスペース「明日見世(asumise)」(=
画像(上))で、新たな顧客層との接点作りや新規取引先の開拓などで成果が出ている。
「明日見世」では、売り手と買い手の間に生じる心理的なハードルをなくし、”アンバサダー”と呼ばれる百貨店のスタッフが出店ブランドとその商品の背景にあるストーリーを伝えることで、来店客やブランド側の満足度を高めることを目指している。気になる商品は店頭に設置されたQRコードを読み込むことで出店ブランドの通販サイトから購入してもらう仕組みだ。
ブランドは区画ごとに出店でき、スタッフの手配や面倒な在庫管理も発生しないため、リアル出店に消極的なD2Cブランドも気軽に好立地の百貨店内で顧客接点を持つことができる。
「明日見世」は昨年10月6日に始動し、間もなく1周年を迎える。大丸松坂屋百貨店では3カ月ごとにテーマと出店ブランドを変えて展開しており、1テーマにつき約20ブランドが出店。百貨店初出店のブランドも含めて従来は取り引きのなかったブランドの開拓に成功している。
一度出店したブランドが違うテーマで再出店することもあるほか、「明日見世」出店後に、百貨店内で開催するポップアップストアの出店につながるケースや、同社運営のファッションサブスクサービス「アナザーアドレス」での取り扱いにつながるなど、ブランド側の次のステップにも貢献しているようだ。
今年1月からは、NTTドコモと共同でAI顔認証ソフトウェアによるデータ分析の実証実験を「明日見世」内で実施。区画ごとに専用のカメラを設置しており、来店客がメガネやマスクなどを着用していても、映像から性別と年齢を推定できるほか、滞在時間なども分かるという。
大丸東京店の顧客層は40~50代が多いが、同システムにより、「明日見世」は20~30代の来店客が7割を超えているという。加えて、顧客アンケートから大丸松坂屋のカードやアプリの非会員が約7割と多いことも分かっており、新規顧客層の獲得につながっている。
同システムで得たデータを活用し、3カ月間の各会期中に商品展開場所の入れ替えを行う際の参考にするなど、店舗レイアウトや店舗運営の改善による顧客満足度の向上を図るとともに、アンバサダーが来店客から聞き取った声を踏まえた出店ブランドへのフィードバック情報を充実させている。
イベント開催で売上貢献も
また、出店ブランドから好評なのが、「明日見世」のVMDだ。大丸松坂屋百貨店では出店ブランドと消費者の”出会い”を重視しており、商品の展示の仕方にもこだわる。
例えば、化粧品や雑貨などの展示用に用意しているアクリルボードを切り抜いて商品を設置。来店客が手に取った後、元の場所に戻してもらいやすくする工夫で、展示スペースがいつでもきれいに見えるようにしている(
画像(下))。
「明日見世」開設から1周年を迎え、足もとの課題は出店ブランドの売り上げへの貢献という。3カ月という出店期間の中で各ブランドの認知を高め、売り上げにつなげるのは簡単ではないようだ。
ショールーミングストアの形態に馴染みのない来店客からは「その場で買いたい」というニーズも引き続き高い。「『明日見世』は売ることを主目的としない体験型店舗で、そのコンセプトは維持していく」(廣澤健太・明日見世プロジェクトリーダー)とした上で、ブランドの売り上げ貢献への道も探っている。
「明日見世」の中央に配置しているコミュニケーションスペースを活用して週末にイベントを開催。出店ブランドの創業者などによるワークショップの後、その場で商品を購入し持ち帰れる機会を6月から設けている。
コロナ禍ということもあって1日に数回のワークショップを開催し密にならないよう心がけており、ワークショップ参加者の購入率が50%を超えるなど一定の成果が出ている。
また、「明日見世」では、店頭に立つアンバサダーが事前の勉強会で各ブランドの商品に対する思いなどを把握し、ECチャネルでは伝わりづらい部分を丁寧に発信できる強みがあるものの、「明日見世」のサイトではブランドや商品のストーリーを伝え切れていないことから、オンライン上での情報発信強化による顧客接点作りにも取り組みたい考え。
現状、「明日見世」は同社が中計で掲げる”リアル店舗とコンテンツの魅力化”に向けたトライアルの位置づけだが、将来的には展開場所も含めてさまざまな検討をしており、好評なイベントを開催しやすい場所や広さなども考慮することになりそうだ。
なお、9月21日~12月13日までの第5弾テーマは「持続可能をかんがえる」で、ファッションやビューティー、ライフスタイル雑貨などを提案している。
「明日見世」では、売り手と買い手の間に生じる心理的なハードルをなくし、”アンバサダー”と呼ばれる百貨店のスタッフが出店ブランドとその商品の背景にあるストーリーを伝えることで、来店客やブランド側の満足度を高めることを目指している。気になる商品は店頭に設置されたQRコードを読み込むことで出店ブランドの通販サイトから購入してもらう仕組みだ。
ブランドは区画ごとに出店でき、スタッフの手配や面倒な在庫管理も発生しないため、リアル出店に消極的なD2Cブランドも気軽に好立地の百貨店内で顧客接点を持つことができる。
「明日見世」は昨年10月6日に始動し、間もなく1周年を迎える。大丸松坂屋百貨店では3カ月ごとにテーマと出店ブランドを変えて展開しており、1テーマにつき約20ブランドが出店。百貨店初出店のブランドも含めて従来は取り引きのなかったブランドの開拓に成功している。
一度出店したブランドが違うテーマで再出店することもあるほか、「明日見世」出店後に、百貨店内で開催するポップアップストアの出店につながるケースや、同社運営のファッションサブスクサービス「アナザーアドレス」での取り扱いにつながるなど、ブランド側の次のステップにも貢献しているようだ。
今年1月からは、NTTドコモと共同でAI顔認証ソフトウェアによるデータ分析の実証実験を「明日見世」内で実施。区画ごとに専用のカメラを設置しており、来店客がメガネやマスクなどを着用していても、映像から性別と年齢を推定できるほか、滞在時間なども分かるという。
大丸東京店の顧客層は40~50代が多いが、同システムにより、「明日見世」は20~30代の来店客が7割を超えているという。加えて、顧客アンケートから大丸松坂屋のカードやアプリの非会員が約7割と多いことも分かっており、新規顧客層の獲得につながっている。
同システムで得たデータを活用し、3カ月間の各会期中に商品展開場所の入れ替えを行う際の参考にするなど、店舗レイアウトや店舗運営の改善による顧客満足度の向上を図るとともに、アンバサダーが来店客から聞き取った声を踏まえた出店ブランドへのフィードバック情報を充実させている。
イベント開催で売上貢献も
また、出店ブランドから好評なのが、「明日見世」のVMDだ。大丸松坂屋百貨店では出店ブランドと消費者の”出会い”を重視しており、商品の展示の仕方にもこだわる。
例えば、化粧品や雑貨などの展示用に用意しているアクリルボードを切り抜いて商品を設置。来店客が手に取った後、元の場所に戻してもらいやすくする工夫で、展示スペースがいつでもきれいに見えるようにしている(画像(下))。
「明日見世」開設から1周年を迎え、足もとの課題は出店ブランドの売り上げへの貢献という。3カ月という出店期間の中で各ブランドの認知を高め、売り上げにつなげるのは簡単ではないようだ。
ショールーミングストアの形態に馴染みのない来店客からは「その場で買いたい」というニーズも引き続き高い。「『明日見世』は売ることを主目的としない体験型店舗で、そのコンセプトは維持していく」(廣澤健太・明日見世プロジェクトリーダー)とした上で、ブランドの売り上げ貢献への道も探っている。
「明日見世」の中央に配置しているコミュニケーションスペースを活用して週末にイベントを開催。出店ブランドの創業者などによるワークショップの後、その場で商品を購入し持ち帰れる機会を6月から設けている。
コロナ禍ということもあって1日に数回のワークショップを開催し密にならないよう心がけており、ワークショップ参加者の購入率が50%を超えるなど一定の成果が出ている。
また、「明日見世」では、店頭に立つアンバサダーが事前の勉強会で各ブランドの商品に対する思いなどを把握し、ECチャネルでは伝わりづらい部分を丁寧に発信できる強みがあるものの、「明日見世」のサイトではブランドや商品のストーリーを伝え切れていないことから、オンライン上での情報発信強化による顧客接点作りにも取り組みたい考え。
現状、「明日見世」は同社が中計で掲げる”リアル店舗とコンテンツの魅力化”に向けたトライアルの位置づけだが、将来的には展開場所も含めてさまざまな検討をしており、好評なイベントを開催しやすい場所や広さなども考慮することになりそうだ。
なお、9月21日~12月13日までの第5弾テーマは「持続可能をかんがえる」で、ファッションやビューティー、ライフスタイル雑貨などを提案している。