EC強化へ専用倉庫を開設<高島屋の通販戦略> ネットの独自商材も開発へ
2022年 8月18日 12:30
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高島屋の前期(22年2月期)におけるネットビジネスの売上高は前年比8・8%増の323億円で、目標の345億円には届かなかった。そのうち、主力サイト「高島屋オンラインストア」の売上高は3・9%増、食料品宅配サービスの「ローズキッチン」が5・2%増、ファッション通販サイト「タカシマヤファッションスクエア」が9・0%増だった。
コロナ1年目となる前々期(21年2月期)は、巣ごもり需要の拡大に伴う消費者のネットシフトが加速したこともあり、同社もネットビジネス全体の売上高が前年比約60%増と大幅拡大した反動もあって前期の成長率は落ち着いたが、24年2月期に計画する500億円へのステップとして、今期は420億円を掲げているだけに、もう少し伸ばしたかったところだ。
前期はとくに4~5月が苦戦。ボリュームの大きい中元商戦の後半から盛り返し、8月に実施した「高島屋オンラインストア」のリニューアルに合わせてキャンペーンを展開したこともあって、9~10月は大きく伸ばした。ただ、人出の増加や実店舗の回復とは真逆に、11月くらいから再び苦戦し始めたという。
同社のECはギフトや食料品が強く、大型商戦である中元・歳暮は売り上げを維持しつつ、バレンタインや母の日など第2のギフトとして力を注いでいる商戦ではしっかり成長できた。
昨年8月に実施した「高島屋オンラインストア」のリニューアルでは、スマホファーストのサイト設計とし、スマホサイトは訪問者ベースで全体の7割強、売り上げベースでも約半分を占めている。
また、これまで同社では通販サイトで展開する企画ページについては、クリエイティブチームと企画チームが打ち合わせを重ねて作り込んだページを展開していたが、サイト刷新に合わせて各担当者が簡易的に企画ページを作りやすくした。同じ商材であっても切り口が変われば見え方も変わるため、さまざまな企画をスピーディーに更新し、サイト訪問者の目に触れる機会を増やした。
強化中の自家需要の開拓については、EC全体の成長率よりも伸ばした。規模はまだ大きくないものの、百貨店の優位性が出せる特選カテゴリーが好調だ。
「高島屋オンラインストア」内には世界を代表するラグジュアリーファッションを集めた「タカシマヤラグジュアリーサロン」のコーナーに続き、ハイエンドからカジュアルウォッチまでを多彩にラインアップした「タカシマヤウォッチメゾンオンライン」コーナーを開設し、取り扱いブランド数や展開商品数の拡充に努めている。
コスメを強化EC在庫確保
今期、自家需要の開拓ではコスメを戦略的に強化する。具体的には、EC専用の倉庫を8月末に開設する予定で、商品在庫をEC用に確保するのに加え、EC限定商材も展開しやすくするなど、裏側の仕組みを整える。
従来、コスメ商材は横浜店と大阪店の店頭在庫を発送していたが、コスメのEC売り上げが拡大する中、EC在庫が確保しにくくなってくることを見越して手を打つ。
倉庫は、横浜市内にある同社物流センターの1フロアをEC専用に改修する。まずはコスメ商材を扱うが、今後はECで展開するリビング商材や食料品の一部も同倉庫で保管、発送する計画だ。
加えて、中計の目標達成を目指し、組織面では今春からEC事業部にバイイング機能を持たせた。従来のEC事業部はサイトを運営する部隊として機能。カタログ通販がメインのクロスメディア事業部や各店舗が開発したり、セレクトしたりしたアイテムを取り扱っていたが、EC強化に本腰を入れるためにも、店舗などと同様にバイヤーを置いてネット専用商材の開発に乗り出す。
今後はEC事業部として広げたい商材やカテゴリーを部内のスタッフで広げられるようになるため、よりスピーディーに品ぞろえを拡充できる。
「店頭やカタログで買い物をするお客様だけを見ていてはECユーザーを取りこぼしてしまう」(西名香織EC事業部長)とし、今後はECユーザーに向けた品ぞろえも強化。高島屋店頭や通販カタログでは扱わない商品も販売していく。
例えば、戦略商材のコスメでは従来の百貨店コスメに限定せず、プチプラコスメ、韓国コスメを含めて店頭とは異なるECユーザーのニーズに応えられる商材も扱っていく考え。
コスメ以外では、スポーツ関連商品や美容家電なども候補になっているようで、今秋から本格的にバイイング機能を強化する計画だ。