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2030年、利益率20%超へ<楽天が創業25周年> モバイル加入者増がECに好影響

2022年 4月21日 13:30

 楽天グループは4月14日、創業25周年を迎えたことを受けて、2030年に向けた成長戦略を公表した。同社では現在、中長期の経営計画を策定しており、営業利益率は2021年12月期の13・5%から20%超を目指すという。同社では国内EC流通総額を現在の5兆円から10兆円まで増やす目標を掲げているが、楽天モバイル加入者を数千万人規模にすることで、同社の経済圏「楽天エコシステム」を拡大する。

 





 同社では同日、創業25周年を記念し、都内ホテルでレセプションパーティーを開催した。政財界の要人や「楽天市場」出店者など、1000人以上が来場。岸田文雄総理大臣や林芳正外務大臣ら政治家が来賓として登壇したほか、安倍晋三元総理や菅義偉前総理からビデオメッセージが寄せられた。

 同社は1997年2月、日本興業銀行(現みずほ銀行)出身の三木谷浩史氏によって設立された(当時の社名はエム・ディー・エム)。同年5月に仮想モール「楽天市場」がサービス開始。レセプションの冒頭で挨拶した三木谷社長は「創業当時の社員は6名で、最初の月の楽天市場流通額は30万円。そのうち20万円は私が買った」というおなじみのエピソードを披露。そこから爆発的に成長し、2021年の国内EC流通総額は5兆円、グローバル流通総額は27兆円となっている。

常識を打破

 三木谷社長はさらに「今までの経営の常識を打ち破るために、挑戦し続けてきたのが楽天の歴史だ。楽天トラベルや楽天ポイント、楽天証券、プロ野球参入、楽天カード、楽天エコシステム、楽天銀行、社内公用語の英語化、携帯事業への参入と『なんでこんなことをやるのか』と言われてきたことばかりだ」と25年を振り返った。そして「革命は30年で終わるといわれており、インターネット革命も終えんに近づいていると思っていたが、新技術がたくさん生まれており、これからの25年はさらにエキサイティングになるだろう」と予測した。

 乾杯の音頭を取った林外相は「今日は外相としてではなく、長年の友人の1人してお祝いに来た」とし、楽天創業以前の交友や、共にカラオケに通ったエピソードなどを披露。「『日本興業銀行を辞めてインターネットでモールをやるんだ』と三木谷氏に相談されたとき、『みきちゃん、やめた方がいいんじゃない』と言った私は先見の明がなかった。先ほどの挨拶で三木谷氏は『常に無謀だと言われてきたが、やりとげた』と言っていたが、今の日本に一番必要なのは、こうしたアニマルスピリットではないか」と称えた。

 続いて登壇した岸田総理は、三木谷社長とは20年来の知己という。「当時から三木谷氏は情熱にあふれた人で、絶えず20年、30年先を見据えている人だった。新たな技術で既存のキャリアに挑戦する、そして世界を見据えて物事に挑戦する姿勢や情熱、先を見通す確かな目が今日の楽天グループの繁栄をもたらしたのだろう。日本は大きな転換点を迎えている。楽天のみならず、我が国も果敢に挑戦して新しい時代に臨んでいかなければならない。そのためにカギを握るのは、新しい時代にふさわしい、新しい形の官民協力だ。時代の課題に対して政府が予算や政策を通じて、呼び水を用意する。そこに民間のばく大な資金が投資される。こうしたことによって課題解決につなげていくことが求められている。楽天には新型コロナウイルスの検査キットや、ワクチン接種の推進など公的課題に貢献してもらっており、時代を先取りしているので、今後も先頭に立って活躍してもらいたい。また、今年をスタートアップ元年としたいと思っており、私が出会った頃の三木谷氏のように、志を持って挑戦する人たちを政府が応援していかなければならない。スタートアップの未来にこそ、イノベーションの創出や硬直した雇用環境の打破がある。私が掲げる『新しい資本主義』の一丁目一番地がスタートアップの活躍だ」などと述べた。

権限委譲進む

 レセプション終了後には三木谷社長が記者会見を行った。2030年に向けて、データサイエンスや人工知能などの「テクノロジー」、6000人以上の多国籍エンジニアなどの「タレント」、そして「サステナビリティー」という3つの柱を強化し、「売上成長の持続」「利益率の成長(モバイルセグメントを除いた2021年度Non―GAAP営業利益率13・5%を20%超へ)」「楽天モバイルと、通信事業者向けにソリューション事業を展開する楽天シンフォニーの大幅黒字化」を目指す方針を明らかにした。

 三木谷社長は「楽天モバイル加入者の楽天市場における1人あたり平均月間流通額は約70%増えており、モバイル加入者が2000万人、3000万人になれば、国内EC流通総額は8兆円、9兆円に伸び、そこから生まれる利益が大きなプラスになるだろう」と展望を述べた。また「アマゾンとの最大の違いは、楽天には地方や小さな企業のビジネスを助けるという考えが土台にあることで、そこにはブレがない。『送料無料ラインの統一』も波紋はあったが、結果的に楽天市場の流通は伸びている。日本の企業はお上に何か言われるとすぐにやめてしまうが、自分たちが正しいと思ったらチャレンジすべきだし、そういう精神を忘れずにいたい」と述べた。

 今後の後継問題については「私は現在、ハイレベルな戦略やUX(ユーザーエクスペリエンス)関連などに関わっているが、楽天カードであれば穂坂雅之(副会長で楽天カード社長)が、ECなら武田和徳(副社長執行役員)が実際にリードしており、私はモバイルに注力している。権限委譲は進んでおり、若い人たちの活用も重要になる」とした。



「『店舗のため』はブレない」、チャレンジ精神忘れずに挑む

 レセプションパーティー後の記者会見で行われた、三木谷浩史社長との質疑応答の要旨は以下の通り。

                                                                    ◇

 ーー次の25年に向けて、自社の事業で伸ばすべき部分と足りないと考えている部分はどこか。また、自身の後継者について考えているか。

 「次の25年については、いくつかのピボット(方向転換)が出てくるのではないか。ビジネスモデルのさらなる進化も必要で、その一つがモバイルだ。NFTを含めて、ブロックチェーンをベースに金融事業もさまざまな変化があるだろう。その中で、楽天シンフォニーを中心に世界へ進出していく。楽天KoboやRakuten TVも好調で、Viberもロシア問題が影響しているが、成長はしている。ただ、時代の変化もあり、マーケットプレイスではなく、プラットフォームを展開していく」

 「後継者に関しては、ハイレベルな戦略、あるいはユーザーエクスペリエンス、技術のアーキテクチャーなどでは、各事業に関して私が関わるところもあるが、実際の事業推進自体は担当役員がリードしており、私のリソースの大半はモバイル事業に割いている。そういう意味ではかなり権限委譲は進んでいるし、今後はさらなる若い人の活用が重要になってくる。楽天グループはクレジットカードから保険から銀行からショッピングからモバイルからと、幅広く事業を展開しており、1人でカバーするのは難しいと思っているので、ガバナンスを考えなければいけない」


 ーー2023年にモバイル事業を単月黒字化すると公言してきたが、そこは変わっていないか。何か秘策はあるのか。

 「秘策をしゃべると秘策でなくなるので(笑)。楽天モバイルは基地局ゼロから始まり、約5万局まで拡大した。町中でも『楽天モバイル安いよね』と噂されるようになってきた。カバー率が増えれば、必然的に加入者も増えるはずだ。また、5Gになれば使うデータの量も増える。法人営業についても、4分の1程度は『楽天モバイルにする』と言ってもらえている。最低でも25%の市場シェアが見込めるのではないか」

 ーー5月1日に、取引デジタルプラットフォーム(DPF)消費者保護法が施行されるなど、ネット販売における消費者保護の重要性が高まっている。楽天市場における施策は。

 「楽天市場は消費者第一で、消費者を保護するための取り組みは積極的に行っている。偽造品に関しても、世界中のブランドと提携して防止するための取り組みを進めている。消費者を保護し、不利益が生まれないようにしていく。信用第一の商売だと思っている」

 ーー2030年に向けて、モバイル事業は、MNO事業と楽天エコシステムとの連携、グローバル戦略の「トライアングル戦略」を掲げているが、どのように進めていくのか。

 「楽天モバイルにおいては、事実として楽天市場での買い物が70%増えている。ユーザーが2000万人、3000万人になると、それだけで流通総額は8兆円、9兆円になる。そこから出てくる利益がプラスになる。金融事業や保健事業においても、新しい仕組みを作ってシナジーを生み出していく」

 ーー楽天市場の25年を振り返って。

 「アマゾンとの最大の違いは、楽天には地方や小さな企業のビジネスを助けるという考えが土台にあることで、そこにはブレがない。『送料無料ラインの統一』も波紋は呼んだが、結果的に楽天市場の流通は伸びている。『店舗のためだ』と信じているからこそ実現できた。日本の企業はお上に何か言われるとすぐにやめてしまうが、自分たちが正しいと思ったらチャレンジすべきだし、そういう精神を忘れずにいたい」
 
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