ジャパネットグループは3月27日、新たなBS放送局を開局した。同社グループのジャパネットブロードキャスティングが運営する放送局だが、通販専門チャンネルでなく、無料放送の総合編成チャンネルで7割はスポーツやドラマ、アニメ幅広く編成。3割は得意とする通販番組を展開、商品を絞ってじっくり特徴を訴求するなど従来の通販番組とは異なる取り組みも実施する。番組を見ながらリアルタイムでコメントを投稿できたり、番組紹介商品をすぐ購入できたりする機能などを持った番組と連動する独自アプリ「つながるジャパネット」も展開し、視聴者との接点強化や通販への誘導を促す試みも行っていく。
同日の12時から開局したジャパネットグループのBS局は「BSJapanext(ビーエスジャパネクスト)」。チャンネル番号は263chとなる。なお、現状、約250社のケーブルテレビ局と同時再送信契約を結んでいるという。
開局初日は特別番組として11時間の生放送を実施。同局のレギュラー番組に出演するタレントが複数、出演して各番組のPRを行ったほか、目玉番組の1つで長年放送され、昨秋に終了したクイズ番組を同局で復活させた「パネルクイズアタック25next」を生放送、また長崎・佐世保のスタジオから通販番組を放送、開局記念セールを行った。
3月28日以降に放送する主な番組としては「アタック25」のほか、月~金の午後7時から放送する曜日ごとに出演者および旅をする地域を分け、各地域の中で毎回、1つの街に焦点を当て2時間をかけてその街の魅力を伝える地域創生番組や毎日午後9時から放送する国分太一さんら曜日ごとに異なるタレントを起用して、当該タレントがやりたいことを行う番組、月~土の午後10時からは、音楽、お笑い、声優、アイドルなど各カテゴリに特化した内容の番組など。また、午前8時半から10時の時間帯で「我々の局として独自に発信する情報番組を準備が整い次第、放送していく」(ジャパネットブロードキャスティングの田道祐樹社長)とする。独自制作番組以外では韓国ドラマやアニメ、地方局から買い付けた番組などを放送する。
通販番組も放送。基本は収録番組となるが、月~金の午前10時から30分枠および午後3時からの30分枠は生放送を行う。BS局専用の通販番組制作チームを創設し、地上波で放送する番組よりも商品を絞ってじっくり特徴を訴求したり、午後の30分枠では番組内で購入者を募り、希望者が目標数に達すると割安で購入できたりする形の演出など従来の通販番組とは異なる取り組みを進める。「例えば番組連動のアプリから紹介中に商品の『〇〇について聞きたい』といったコメントがあれば番組内で答えたり、前後の番組との関係性を意識して関連する商品を紹介する通販番組、その日の気温に合わせて商品を変えるなど自局ならではの工夫を考えていきたい」(ジャパネットHDの髙田旭人社長)とする。
なお、番組内では通販を行わない一般番組ついても例えば、旅番組で紹介したご当地の商品やアニメの関連グッズなどについてアプリ上に放送と連動してリアルタイムに表示。事前登録した利用者は当該商品を最短2タップで購入できる取り組みも行い、通販への誘導なども行っていく。
CM収益のほか、自社通販の強化、効率的な番組制作体制の構築などで2年後をメドにBS局単体で黒字転換を目指すとしている。
新BS「BSJapanext」開局 TOPに聞く・狙いと今後
ジャパネットグループは3月27日、BS放送局「BSJapanext(ビーエスジャパネクスト)」を開局した。「世の中に埋もれているモノ、サービス、考え方、音楽やスポーツ等のコンテンツ、地域の魅力を広めていくことで社会に貢献しつつ、より深く鋭くリアルさを追求する番組を届ける『必要とされる放送局』を目指す」との方針を掲げる同局を運営するジャパネットブロードキャスティングを率いる田道祐樹社長と同社取締役でジャパネットホールディングスの髙田旭人社長に「BSJapanext」のこれからについて聞いた。
テレビ業界を前に進める
ジャパネットホールディング 髙田旭人社長
――グループの強みをどうBS局に活かしていくのか。
「通常、テレビ局はCM収入がメインになるが、我々は通販会社なので、(全体の編成の3割を占める)通販番組での収益が増えることで、CM収入については他局より少なくても成り立つと思っている。そして、そうなることでスポンサーのことを考え過ぎることなく、フラットな番組が作れることも強みだ。また、番組と連動するアプリ『つながるジャパネット』はもともとジャパネットのショッピングアプリをアップデイト(※番組紹介商品を購入できる機能、番組へのコメント投稿、アプリ内での番組視聴、クイズ番組への参加者募集の機能など加えた)する形でリリースしたため、すでに数十万人が利用されている。たくさんの情報の行き来がアプリでできるようになることでオペレーションコストもすごく下がる。番組参加者の応募はもちろん、例えば、地域の情報収集などもアプリから各地域の視聴者に集めてもらって、それをもとに例えば旅番組の候補地や内容を決めるといった番組作りができる」
――番組編成上で工夫したことは。
「曜日ごと、時間帯ごとのコンセプトを分かりやすくした。例えば19~21時は曜日ごとにそれぞれの地域を散歩する番組を放送している。21時台はタレントさんが好きなことをやる番組、22時台は若者向けの番組など、(視聴者が)どこにいけばよいかわからない状態を作りたくないので編成は考えた。我々のチャンネルは深い場所にあり、ザッピングで見てもらえるというわけでない。分かりやすい編成でかつ面白い番組を作り、視聴習慣に組み込んで頂くようにしてもらわなければならない。今後も習慣化いただけるよう色々と考えていく」
――アプリでも番組の同時配信をする。
「アプリは同時配信もできるし、番組への意見や評価もコメントできる。これを使ってテレビの世界に視聴率以外の評価軸を作れないかなと思っている。例えば、ポジティブなコメントが多い番組は多少、視聴者が少なくても続けていくとか、視聴率で白黒つけるだけでなく、コメント数や評価、時には通販の売り上げなどを指標にして番組作りを考えていきたい」
――CMに関しては。
「我々はこれまでCMを購入する側だったため、その立場からのニーズを色々と考えて例えば、シニア向けにCMを放送したい方、子供向けに、各地域に向けてなどとCM枠のパッケージを作って販売するようにしている。時間帯で決めるのではなく、視聴者層に合わせた形だ。また、月曜日は東北・北海道、木曜は九州・沖縄というように曜日ごとに訪れる地域を変えた旅番組のCMはその地域でのみ放送されているローカルCMを放送する取り組みなども行っている。当社の営業チームが地域の企業に声をかけると皆さんが『面白いね』と乗ってくださった。購入側としての立場から『こういう企画があったらよい』というアイデアを出しながらCMについても販売していきたい」
――地上波や他のBS局で通販番組を提供している立場でもあるジャパネットが自分たちでチャンネルを持つことについてどう整理しているのか。
「自分たちでBS局を持つことで地上波や他のBS局での放送枠を減らそうという考えはない。我々のチャンネルはまだまだ皆様の生活の中心になれるようなものではないと思っており、地上波やBS局の集客力は高く、共存していきたい。一方でおこがましいがテレビ業界に対して貢献できるような取り組みをしていきたい。先ほどの曜日ごとにそれぞれの地域を散歩する番組に合わせて、17時台にはその地域の地方局から情報番組などを購入して放送している。これらによって、地方局の新たな収益源が1つ作れるのではないか。また、アニメについても購入して放送するが、合わせてアプリでグッズの販売も行う。これも局の新しいビジネスモデルの1つだろうと思う。やり方を変えてみたり、新しい収益源を見つけたりなど様々なチャレンジを我々が取り組みながらテレビ業界全体を少しでも前に進めていきたい。
また、我々は働き方改革に力を入れており、放送局にも適用していく。効率化のためにロボットカメラを導入して、スタジオでは複数のカメラマンを置かず、1人がカメラを操作して収録する取り組みも行っている。ジャパネットグループの方針として(放送局でも)休日出勤や残業はさせないようにしている。また、放送局さんでは書類が積み上がっているというイメージがあるが、当社グループは『紙は持たない』という決まりだ。我々なりのやり方をBS局にも取り入れ、テレビ業界に貢献ができたらと思っている」
――BS局の収益目標は。
「運営コストから逆算すると、BS局として上げなければいけない年間売り上げと採算のラインはあるが短期的な収益よりも大事なことがある。例えば、毎日6時から放送する美木良介さんのロングブレス(※運動方法を紹介する番組)は本当に毎朝やって頂ければ、日本中の方が健康になると思う。本当に良いものを紹介するという視点で番組作りを行っている。収益化するのは早い方がいいが、それ以上に視聴者に必要されるテレビ局になることを優先したい」
――「テレビ離れ」と言われている状況の中でのBS局開局となった。テレビ離れに対する危機感はあるのか。
「テレビ離れということよりも、(視聴媒体の主流が)インターネットになることに対する日本の未来への危機感がある。テレビは『ながら視聴』で様々な情報が入ってくる。それによって、(家族や友達などと)共通の話題が増えたりする。ただ、これが『ユーチューブ、ユーチューブ』となってしまうと、好きなものしか見なくなってしまう。コミュニティも同じ趣味の人たちだけが集まり、小さくなってしまう。我々としてはとにかく皆が安心してみることができる番組を作っていきたい。そして、テレビを盛り上げていきたい」(3月27日開催の会見での本紙記者を含む報道陣との一問一答より要約・抜粋)
「尖ったテレビ局目指す」
ジャパネットブロードキャスティング 田道祐樹社長
――「BSJapanext」が開局した。通販番組の制作は当然、ノウハウがあると思うが一般番組、ましてテレビ局の運営はかなり異なる。不安はなかったか。
「ジャパネットでは何か新しいことを始める際に先にやることを決めて理想を掲げ、それからやり方を考えてきた。そのため、採用を強化しており、今回に関しても正直、あまり心配はなかった。また、開局に向けてしっかりと準備も進めてきた。私達の考え方などに共感してもらえた有名な番組など色々な番組をこれまで作ってきたディレクター、プロデューサーなど60名程度のメンバーを採用し、しっかりとしたチームもできており、クオリティに高い番組を制作できる体制だ。想像していた理想の形でスタートが切れたと思う。ジャパネットらしいテレビ局を作っていきたい。とてもワクワクしている」
――どのような番組を制作、放送していくのか。
「様々な番組を制作、放送していく。例えば、(長年、朝日放送テレビで放送され)昨秋で最終回を迎えたクイズ番組『パネルクイズアタック25』を、司会を務めていた谷原章介さんを再び起用して毎週日曜日午後1時から放送する。また、毎日午後9時から1時間の帯で国分太一さんら曜日ごとに異なるタレントを起用してそのタレントさん本人がやりたいことを行う番組も放送していく。ジャパネットグループの2つ目の事業の柱である地域創生に関連して月~金の午後には旅番組も放送していく。月曜は北海道・東北、火曜は関東甲信・東海・北陸など曜日ごとに旅をする地域を変えつつ、番組に合わせて、その地域でしか放送されていないローカルCMを流したり、当該地域のローカル局から購入した番組を夕方に放送したりなど地域色を出していく。自社制作番組以外ではファンも多いジャンルだと思うので韓国ドラマを購入して放送する。月~金および週末に当該週に放送した話をまとめて放送する形だ。また、幅広い年齢層にリーチしたと思っているので『スポンジ・ボブ』『ハイキュー!!』『ベイビーシャークのわくわくショー』といったアニメも放送していく」
――放送局としては後発だ。他局と比べての強みや特徴は。
「1つは番組とアプリ『つながるジャパネット』との連動だ。私は旅番組を見ている時に出演者の方がおいしそうに食べているものをみると、それをネットで検索して調べたり、購入したりしてしまうのだが、そういう方も多いと思う。ただ、検索するにも時間や手間がかかるし、アクセスが集中しすぎてなのか、目的のウェブサイトを閲覧できないこともある。『つながるジャパネット』は現在、放送している番組と連動しており、例えば、旅番組で紹介したご当地の食品などの紹介がアプリのトップ画面に表示され、あらかじめ登録いただいていれば最短2クリックで商品を購入できる仕組みだ。もちろん、モノを紹介、販売する機能ではなく、番組へのコメントをリアルタイムで投稿したりなど様々な機能がある。番組内で気になっている商品がすぐに購入できたり、番組を見ながらみんなで意見交換ができたりなどアプリを軸に視聴者の方々と繋がれる世界を作っていきたい」
――アプリで番組紹介商品を販売する取り組みはどの程度やっていくのか。
「全体の編成として3割は通販番組、7割は一般番組を放送していくが、通販番組ではすべて連動させてやっていく。一般番組についてはすべて実施するわけでないが、例えば先ほどの旅番組では行う。オンエア上では『アプリで購入できる』と一部、告知もする。あとはアニメでも、関連グッズを販売するなど今後、増やしていきたい。収益性の問題もあり、できるものとできないものがあるが、究極的には番組で登場したすべてのものが買える世界になれば最高だ」
――「BSJapanext」で放送する通販番組は地上波などで放送しているジャパネットの通販番組と違いはあるか。
「地上波などで放送する通販番組はテンポよく商品を紹介するスタイルが多いが、BSの視聴者の多くはゆっくり番組を楽しんでいる方が多いと思うので、1つの商品の特徴をじっくりと紹介、深掘りしていくような番組が増えていくと思う」
――具体的には。
「地上波などで放送する通販番組の場合、当然、媒体効率を考えて、本当は伝えたいことが10個あるとして、その中の3~4個に絞り込んで、限られた尺の中でいかに効率よく商品の魅力を伝えられるか、というところに取り組んできたわけだが、BSでは自社放送局ということもあり、媒体効率よりも商品の様々な良さを伝えたり、特徴を深掘りして紹介していく。掃除機を販売する際にはとことんゴミを吸う実演をしてその吸引力などをじっくりと見せたり、炊飯器では様々な機能をそれぞれ紹介するなどだ」
――通販番組はライブか収録か。
「収録がほとんどだが両方やっていく。月~金の午前10時から30分間と午後3時から30分間、合計1時間は生放送する予定だ。午前の枠では先ほど説明したように商品をじっくりと説明していく。午前の枠ではこれまでネット販売限定で行ってきた商品購入者を募り、購入希望者数があらかじめ設定した目標数に達した場合に販売する『購入約束型みんなで買いまショッピング』を番組としてアプリと連携させながらやっていく」
――収益を含めた今後の方向性は。
「”普通のテレビ局”になるつもりはない。番組は表面をなぞるようなものではなく、”リアルさ”を追求したい。例えば、旅番組では2時間をかけて1つの街をしっかりと歩いて番組を見ればその街の良さが伝わるような、それで足を運びたくなるような構成にしたい。番組のクオリティは高めつつも、一方で効率化も進めたい。例えば、毎週放送する2時間の旅番組を制作していくためには通常、何十人のスタッフが関わっていく必要があると思うが、アプリで全国の視聴者から情報を募ることで、その土地の魅力などの情報を集めて、次回の旅先を選定したり、過剰なテロップはやめて、その分、編集時間を圧縮したりなどで数人で制作できるような体制作りに取り組んでいる。旅番組だけでなく、他の番組についても事前にしっかりと準備して撮影に臨むことでまとめ撮りをするなど効率化を進めている。『BSJapanext』では地域創生を掲げ、様々な番組を放送していくが当然、慈善活動ではないため、多額の利益を稼ぎ出すということでないが、最低限、収益化はしたい。私としては2年目で黒字転換することが目標だ。様々な取り組みを行い、尖ったテレビ局としてテレビ業界全体を元気にしていけるような存在になれたらいいなと本気で思っている」
同日の12時から開局したジャパネットグループのBS局は「BSJapanext(ビーエスジャパネクスト)」。チャンネル番号は263chとなる。なお、現状、約250社のケーブルテレビ局と同時再送信契約を結んでいるという。
開局初日は特別番組として11時間の生放送を実施。同局のレギュラー番組に出演するタレントが複数、出演して各番組のPRを行ったほか、目玉番組の1つで長年放送され、昨秋に終了したクイズ番組を同局で復活させた「パネルクイズアタック25next」を生放送、また長崎・佐世保のスタジオから通販番組を放送、開局記念セールを行った。
3月28日以降に放送する主な番組としては「アタック25」のほか、月~金の午後7時から放送する曜日ごとに出演者および旅をする地域を分け、各地域の中で毎回、1つの街に焦点を当て2時間をかけてその街の魅力を伝える地域創生番組や毎日午後9時から放送する国分太一さんら曜日ごとに異なるタレントを起用して、当該タレントがやりたいことを行う番組、月~土の午後10時からは、音楽、お笑い、声優、アイドルなど各カテゴリに特化した内容の番組など。また、午前8時半から10時の時間帯で「我々の局として独自に発信する情報番組を準備が整い次第、放送していく」(ジャパネットブロードキャスティングの田道祐樹社長)とする。独自制作番組以外では韓国ドラマやアニメ、地方局から買い付けた番組などを放送する。
通販番組も放送。基本は収録番組となるが、月~金の午前10時から30分枠および午後3時からの30分枠は生放送を行う。BS局専用の通販番組制作チームを創設し、地上波で放送する番組よりも商品を絞ってじっくり特徴を訴求したり、午後の30分枠では番組内で購入者を募り、希望者が目標数に達すると割安で購入できたりする形の演出など従来の通販番組とは異なる取り組みを進める。「例えば番組連動のアプリから紹介中に商品の『〇〇について聞きたい』といったコメントがあれば番組内で答えたり、前後の番組との関係性を意識して関連する商品を紹介する通販番組、その日の気温に合わせて商品を変えるなど自局ならではの工夫を考えていきたい」(ジャパネットHDの髙田旭人社長)とする。
なお、番組内では通販を行わない一般番組ついても例えば、旅番組で紹介したご当地の商品やアニメの関連グッズなどについてアプリ上に放送と連動してリアルタイムに表示。事前登録した利用者は当該商品を最短2タップで購入できる取り組みも行い、通販への誘導なども行っていく。
CM収益のほか、自社通販の強化、効率的な番組制作体制の構築などで2年後をメドにBS局単体で黒字転換を目指すとしている。
新BS「BSJapanext」開局 TOPに聞く・狙いと今後
ジャパネットグループは3月27日、BS放送局「BSJapanext(ビーエスジャパネクスト)」を開局した。「世の中に埋もれているモノ、サービス、考え方、音楽やスポーツ等のコンテンツ、地域の魅力を広めていくことで社会に貢献しつつ、より深く鋭くリアルさを追求する番組を届ける『必要とされる放送局』を目指す」との方針を掲げる同局を運営するジャパネットブロードキャスティングを率いる田道祐樹社長と同社取締役でジャパネットホールディングスの髙田旭人社長に「BSJapanext」のこれからについて聞いた。
テレビ業界を前に進める
ジャパネットホールディング 髙田旭人社長
――グループの強みをどうBS局に活かしていくのか。
「通常、テレビ局はCM収入がメインになるが、我々は通販会社なので、(全体の編成の3割を占める)通販番組での収益が増えることで、CM収入については他局より少なくても成り立つと思っている。そして、そうなることでスポンサーのことを考え過ぎることなく、フラットな番組が作れることも強みだ。また、番組と連動するアプリ『つながるジャパネット』はもともとジャパネットのショッピングアプリをアップデイト(※番組紹介商品を購入できる機能、番組へのコメント投稿、アプリ内での番組視聴、クイズ番組への参加者募集の機能など加えた)する形でリリースしたため、すでに数十万人が利用されている。たくさんの情報の行き来がアプリでできるようになることでオペレーションコストもすごく下がる。番組参加者の応募はもちろん、例えば、地域の情報収集などもアプリから各地域の視聴者に集めてもらって、それをもとに例えば旅番組の候補地や内容を決めるといった番組作りができる」
――番組編成上で工夫したことは。
「曜日ごと、時間帯ごとのコンセプトを分かりやすくした。例えば19~21時は曜日ごとにそれぞれの地域を散歩する番組を放送している。21時台はタレントさんが好きなことをやる番組、22時台は若者向けの番組など、(視聴者が)どこにいけばよいかわからない状態を作りたくないので編成は考えた。我々のチャンネルは深い場所にあり、ザッピングで見てもらえるというわけでない。分かりやすい編成でかつ面白い番組を作り、視聴習慣に組み込んで頂くようにしてもらわなければならない。今後も習慣化いただけるよう色々と考えていく」
――アプリでも番組の同時配信をする。
「アプリは同時配信もできるし、番組への意見や評価もコメントできる。これを使ってテレビの世界に視聴率以外の評価軸を作れないかなと思っている。例えば、ポジティブなコメントが多い番組は多少、視聴者が少なくても続けていくとか、視聴率で白黒つけるだけでなく、コメント数や評価、時には通販の売り上げなどを指標にして番組作りを考えていきたい」
――CMに関しては。
「我々はこれまでCMを購入する側だったため、その立場からのニーズを色々と考えて例えば、シニア向けにCMを放送したい方、子供向けに、各地域に向けてなどとCM枠のパッケージを作って販売するようにしている。時間帯で決めるのではなく、視聴者層に合わせた形だ。また、月曜日は東北・北海道、木曜は九州・沖縄というように曜日ごとに訪れる地域を変えた旅番組のCMはその地域でのみ放送されているローカルCMを放送する取り組みなども行っている。当社の営業チームが地域の企業に声をかけると皆さんが『面白いね』と乗ってくださった。購入側としての立場から『こういう企画があったらよい』というアイデアを出しながらCMについても販売していきたい」
――地上波や他のBS局で通販番組を提供している立場でもあるジャパネットが自分たちでチャンネルを持つことについてどう整理しているのか。
「自分たちでBS局を持つことで地上波や他のBS局での放送枠を減らそうという考えはない。我々のチャンネルはまだまだ皆様の生活の中心になれるようなものではないと思っており、地上波やBS局の集客力は高く、共存していきたい。一方でおこがましいがテレビ業界に対して貢献できるような取り組みをしていきたい。先ほどの曜日ごとにそれぞれの地域を散歩する番組に合わせて、17時台にはその地域の地方局から情報番組などを購入して放送している。これらによって、地方局の新たな収益源が1つ作れるのではないか。また、アニメについても購入して放送するが、合わせてアプリでグッズの販売も行う。これも局の新しいビジネスモデルの1つだろうと思う。やり方を変えてみたり、新しい収益源を見つけたりなど様々なチャレンジを我々が取り組みながらテレビ業界全体を少しでも前に進めていきたい。
また、我々は働き方改革に力を入れており、放送局にも適用していく。効率化のためにロボットカメラを導入して、スタジオでは複数のカメラマンを置かず、1人がカメラを操作して収録する取り組みも行っている。ジャパネットグループの方針として(放送局でも)休日出勤や残業はさせないようにしている。また、放送局さんでは書類が積み上がっているというイメージがあるが、当社グループは『紙は持たない』という決まりだ。我々なりのやり方をBS局にも取り入れ、テレビ業界に貢献ができたらと思っている」
――BS局の収益目標は。
「運営コストから逆算すると、BS局として上げなければいけない年間売り上げと採算のラインはあるが短期的な収益よりも大事なことがある。例えば、毎日6時から放送する美木良介さんのロングブレス(※運動方法を紹介する番組)は本当に毎朝やって頂ければ、日本中の方が健康になると思う。本当に良いものを紹介するという視点で番組作りを行っている。収益化するのは早い方がいいが、それ以上に視聴者に必要されるテレビ局になることを優先したい」
――「テレビ離れ」と言われている状況の中でのBS局開局となった。テレビ離れに対する危機感はあるのか。
「テレビ離れということよりも、(視聴媒体の主流が)インターネットになることに対する日本の未来への危機感がある。テレビは『ながら視聴』で様々な情報が入ってくる。それによって、(家族や友達などと)共通の話題が増えたりする。ただ、これが『ユーチューブ、ユーチューブ』となってしまうと、好きなものしか見なくなってしまう。コミュニティも同じ趣味の人たちだけが集まり、小さくなってしまう。我々としてはとにかく皆が安心してみることができる番組を作っていきたい。そして、テレビを盛り上げていきたい」(3月27日開催の会見での本紙記者を含む報道陣との一問一答より要約・抜粋)
「尖ったテレビ局目指す」
ジャパネットブロードキャスティング 田道祐樹社長
――「BSJapanext」が開局した。通販番組の制作は当然、ノウハウがあると思うが一般番組、ましてテレビ局の運営はかなり異なる。不安はなかったか。
「ジャパネットでは何か新しいことを始める際に先にやることを決めて理想を掲げ、それからやり方を考えてきた。そのため、採用を強化しており、今回に関しても正直、あまり心配はなかった。また、開局に向けてしっかりと準備も進めてきた。私達の考え方などに共感してもらえた有名な番組など色々な番組をこれまで作ってきたディレクター、プロデューサーなど60名程度のメンバーを採用し、しっかりとしたチームもできており、クオリティに高い番組を制作できる体制だ。想像していた理想の形でスタートが切れたと思う。ジャパネットらしいテレビ局を作っていきたい。とてもワクワクしている」
――どのような番組を制作、放送していくのか。
「様々な番組を制作、放送していく。例えば、(長年、朝日放送テレビで放送され)昨秋で最終回を迎えたクイズ番組『パネルクイズアタック25』を、司会を務めていた谷原章介さんを再び起用して毎週日曜日午後1時から放送する。また、毎日午後9時から1時間の帯で国分太一さんら曜日ごとに異なるタレントを起用してそのタレントさん本人がやりたいことを行う番組も放送していく。ジャパネットグループの2つ目の事業の柱である地域創生に関連して月~金の午後には旅番組も放送していく。月曜は北海道・東北、火曜は関東甲信・東海・北陸など曜日ごとに旅をする地域を変えつつ、番組に合わせて、その地域でしか放送されていないローカルCMを流したり、当該地域のローカル局から購入した番組を夕方に放送したりなど地域色を出していく。自社制作番組以外ではファンも多いジャンルだと思うので韓国ドラマを購入して放送する。月~金および週末に当該週に放送した話をまとめて放送する形だ。また、幅広い年齢層にリーチしたと思っているので『スポンジ・ボブ』『ハイキュー!!』『ベイビーシャークのわくわくショー』といったアニメも放送していく」
――放送局としては後発だ。他局と比べての強みや特徴は。
「1つは番組とアプリ『つながるジャパネット』との連動だ。私は旅番組を見ている時に出演者の方がおいしそうに食べているものをみると、それをネットで検索して調べたり、購入したりしてしまうのだが、そういう方も多いと思う。ただ、検索するにも時間や手間がかかるし、アクセスが集中しすぎてなのか、目的のウェブサイトを閲覧できないこともある。『つながるジャパネット』は現在、放送している番組と連動しており、例えば、旅番組で紹介したご当地の食品などの紹介がアプリのトップ画面に表示され、あらかじめ登録いただいていれば最短2クリックで商品を購入できる仕組みだ。もちろん、モノを紹介、販売する機能ではなく、番組へのコメントをリアルタイムで投稿したりなど様々な機能がある。番組内で気になっている商品がすぐに購入できたり、番組を見ながらみんなで意見交換ができたりなどアプリを軸に視聴者の方々と繋がれる世界を作っていきたい」
――アプリで番組紹介商品を販売する取り組みはどの程度やっていくのか。
「全体の編成として3割は通販番組、7割は一般番組を放送していくが、通販番組ではすべて連動させてやっていく。一般番組についてはすべて実施するわけでないが、例えば先ほどの旅番組では行う。オンエア上では『アプリで購入できる』と一部、告知もする。あとはアニメでも、関連グッズを販売するなど今後、増やしていきたい。収益性の問題もあり、できるものとできないものがあるが、究極的には番組で登場したすべてのものが買える世界になれば最高だ」
――「BSJapanext」で放送する通販番組は地上波などで放送しているジャパネットの通販番組と違いはあるか。
「地上波などで放送する通販番組はテンポよく商品を紹介するスタイルが多いが、BSの視聴者の多くはゆっくり番組を楽しんでいる方が多いと思うので、1つの商品の特徴をじっくりと紹介、深掘りしていくような番組が増えていくと思う」
――具体的には。
「地上波などで放送する通販番組の場合、当然、媒体効率を考えて、本当は伝えたいことが10個あるとして、その中の3~4個に絞り込んで、限られた尺の中でいかに効率よく商品の魅力を伝えられるか、というところに取り組んできたわけだが、BSでは自社放送局ということもあり、媒体効率よりも商品の様々な良さを伝えたり、特徴を深掘りして紹介していく。掃除機を販売する際にはとことんゴミを吸う実演をしてその吸引力などをじっくりと見せたり、炊飯器では様々な機能をそれぞれ紹介するなどだ」
――通販番組はライブか収録か。
「収録がほとんどだが両方やっていく。月~金の午前10時から30分間と午後3時から30分間、合計1時間は生放送する予定だ。午前の枠では先ほど説明したように商品をじっくりと説明していく。午前の枠ではこれまでネット販売限定で行ってきた商品購入者を募り、購入希望者数があらかじめ設定した目標数に達した場合に販売する『購入約束型みんなで買いまショッピング』を番組としてアプリと連携させながらやっていく」
――収益を含めた今後の方向性は。
「”普通のテレビ局”になるつもりはない。番組は表面をなぞるようなものではなく、”リアルさ”を追求したい。例えば、旅番組では2時間をかけて1つの街をしっかりと歩いて番組を見ればその街の良さが伝わるような、それで足を運びたくなるような構成にしたい。番組のクオリティは高めつつも、一方で効率化も進めたい。例えば、毎週放送する2時間の旅番組を制作していくためには通常、何十人のスタッフが関わっていく必要があると思うが、アプリで全国の視聴者から情報を募ることで、その土地の魅力などの情報を集めて、次回の旅先を選定したり、過剰なテロップはやめて、その分、編集時間を圧縮したりなどで数人で制作できるような体制作りに取り組んでいる。旅番組だけでなく、他の番組についても事前にしっかりと準備して撮影に臨むことでまとめ撮りをするなど効率化を進めている。『BSJapanext』では地域創生を掲げ、様々な番組を放送していくが当然、慈善活動ではないため、多額の利益を稼ぎ出すということでないが、最低限、収益化はしたい。私としては2年目で黒字転換することが目標だ。様々な取り組みを行い、尖ったテレビ局としてテレビ業界全体を元気にしていけるような存在になれたらいいなと本気で思っている」