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指針の「法規範性」判示【Cネット東海差止訴訟の影響③】 「直ちに違法と評価されない」

2021年10月28日 13:00

 ガイドライン(指針)に法規範性はない。消費者被害防止ネットワーク東海(=Cネット東海)とファビウスの差止請求訴訟では、名古屋高裁は行政が示すガイドラインの法的位置づけを判示した。「ガイドライン違反」の是非をめぐる判例になる。

法律と同等のの影響力  

 価格表示ガイドライン、機能性表示食品の届出ガイドラインや事後チェック指針、健食留意事項。行政は事業者が守るべき規範として、よく法解釈の詳細に触れた「ガイドライン」を示す。事業者も法運用の透明性を高めるため、また、自らが法違反という”虎の尾”を踏まないよう予見性を高めるため、時にガイドラインを求めることがある。

 ただ、幅広い関係者による十分な議論と手続きを経て検討される法改正と異なり、ガイドラインは、行政が省庁内における検討で一方的に策定するケースもある。パブリックコメントも必要としない。一方で、実質的に法律と同等の影響力を発揮する。

ファビウス「法規範性ない」と反論

 Cネット東海は差止訴訟において、特定商取引法の2016年改正を受けて消費者庁が策定した「インターネット通販における『意に反して契約を申し込ませようとする行為』に係るガイドライン」を根拠にファビウスの景品表示法違反を指摘した。

 指針は、申込確認画面等における適切・不適切な表示の具体例を示したもの。ファビウスの申込確認画面は初回価格と4回分の支払総額の表示箇所が分離しており、消費者が「継続契約と認識できない」と主張。対するファビウスは「ガイドラインは法規範性を持たない」「ガイドライン違反したからといって、直ちに有利誤認にはならない」と反論した。

 これに名古屋高裁は、ファビウスの申込確認画面の表示が分離しているとは言えないとした上で、「ガイドラインは一つの指針に過ぎず、準拠していないことを持って違法とは評価されない」と判示した。

指針の位置づけたびたび火種に

 「法規範性」とは、端的には、その規定が法的拘束力を持っているか否かということ。裁判所は、ガイドラインに法的拘束力がないとの見解を示したことになる。このことは、重要な意味を持つ。多くの企業はこれまで、「法律=ガイドライン」と同等に扱い、遵守してきたためだ。

 健康食品について景表法や健康増進法上の留意点を示した「健食留意事項」は、年々改訂が加えられ、広告の表示主体性などをめぐり、踏み込んだ法解釈を示す。

 16年には、消費者庁が機能性表示食品の届出ガイドラインについて、使用できる成分を制限する改訂を実施。すでに制限される成分を使った届出もあり、業界への事前相談なく一方的に変更したため、企業から「無断改定」と反発を招いた。

 景表法の有利誤認関連では19年、処分を受けたライフサポートがこれを不服として取り消しを求め提訴した。販売チャネルをまたいで行った二重価格表示を対象としたもの。価格表示ガイドラインの記載があいまいとしてその是非を争点の一つにした(今年5月、敗訴で確定)。

 また、「将来の販売価格」を比較対照価格にした二重価格表示をめぐっては、価格表示ガイドラインの解釈があいまいな中で処分が先行。これを受け、昨年、消費者庁は執行方針を公表した。

 たびたび火種になるからか、最近では消費者庁も企業との事前協議、パブリックコメントの募集など、策定のプロセスを充実させる姿勢をみせる。今回、ガイドラインの法規範性に見解が示されたことで、その策定・改訂や運用について、行政もより慎重さが求められることになりそうだ。(つづく)

 
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