前回に引き続き、新森健之社長にジュピターショップチャンネルの現状と今後について聞いた。
◇
――今期(2022年3月期)の戦略は。
「前期(2021年3月期)はコロナ禍による売上減少の影響を最小限にとどめるために巣ごもり需要に対応した商品をそろえたが、今期は積極的に新規の商品を展開していく。強化してきたファッションも前年はコロナで投入を控えていたが新しいブランドをどんどん増やしていく。それによって将来的に売り上げをけん引するような強い商品・ブランドを育てていく。新しい試みも行っていく。今期は創立25周年の記念の年であることもあり、4月から毎月25日に売れ筋商品を特別なセット内容としたり、割安な価格で販売する番組『プレミアムショップスターバリュー』や通常は紹介していないような特別な商品を紹介する特番の放映を開始している。また、2月から東急ハンズが選ぶ商品を紹介、販売する特別番組『開店!東急ハンズショップチャンネル店』を月1回、放送しているが売り上げも非常に好調だ。今期の売上高は前年実績を越えていきたい。足元も順調だ。コロナの影響で落ち込んだ前年実績を越えているのは当然と
して好調だった前々期(2020年3月)の実績と比較しても同水準まで(売上高は)戻ってきている」
――「ショップチャンネル」の特徴であり、強みでもある生放送だが、コロナの感染対策の観点から24時間生放送をやめ、録画番組も交えた編成とした。24時間生放送に戻すのか。
「今年4月からは生放送は1日20時間まで戻している。録画番組は現状、午前2~6時までの4時間だ。お客様の声や反応を聞きながら、すべて生放送にした方がよいと判断すればそうするが、今のところ、この時間帯ではしばらく録画番組の放送を続けようかと思っている。コロナの感染対策という観点もあるが、深夜帯に働く社員には十分なケアや対応は行っているが、深夜に働くというのは負担もかかるわけで、”働き方”という観点で見ても無理に戻さなくともよいのではないか。コロナ禍を機に人々の生活パターンも変化している。お客様の変化に合わせて、編成の在り方も時間をかけて見直していく必要もあるとは思う」
――今期から始まる5カ年の中期経営計画を策定した。
「『テレビ通販からショッピングエンターテインメントのリーディングカンパニーへ』を掲げて、様々な新しい取り組みを進めて、持続的な成長を目指すための計画だ。当社はこれまでお客様の購入頻度を高めるための施策、もっと言えば年間に多くの商品を購入頂ける優良顧客の皆様にもっと購入を促すような施策がメインだった。これまではそれが効率がよく、ここまで成長することができたわけだが、今後も持続的な成長を続けるためには異なる打ち手も必要だ。そのため、番組は視聴しているが未購入層、1~2度購入頂いたがその後は購入していない層、一時期は購入を頂けていたが購入を止めてしまった層などに向けた購入促進策を本格的に実施していくことが1つだ。例えば、初回購入時にクーポン券を差し上げたり、送料を無料にしたりなどだ。これまでも実施してはいたがより力を入れてやっていく。各施策は効果検証を繰り返しながら最適な施策を打っていく」
――8月から開始する初の独自クレジットカード「ショップチャンネルカード」の発行もその一環か。
「そうだ。既存顧客の囲い込み施策だ。決済額に応じて貯まるポイントで当社で利用可能な割引コードを付与したり、送料無料という特典がつく。多くのお客様に利用を頂きたい」
――中計では新規層の顧客開拓や新規事業などにも取り組む。
「新規層のお客様の獲得の強化については、一環として4月から女性向け動画メディアを運営するC Channel(シーチャンネル)と組んでライブコマース『コレイヨ』を開始している。シーチャンネルが運営する動画メディアの公式インスタグラム上で各分野で活躍するインフルエンサーが進行役となり、商品を使ったデモンストレーションなどのライブ動画を配信して、専用サイトに誘導し、購入を促す形だ。これまで獲得しにくかった20、30代にアプローチする施策だ。毎回、様々な商品を販売しながら、何がお客様に受けているか。集客方法、番組内の訴求方法、ECサイトへの誘導など様々な施策を試しながら検証を繰り返している。ありとあらゆる選択肢を試して効果的な展開方法を見つけ出していこうと思っている。新しいビジネスモデルの構築も行っていく。その1つはコト・体験型商品の展開だ。第一弾として、6月1日にミラー型デバイスを介して、エクササイズレッスンが受けられる『フィットネスミラー』の販売を行った。ミラー型のタッチパネルデバイスを介して、インストラクターのレッスン動画などをみることができるサービスで、お客様は当社でミラーを購入頂き、レッスン動画を配信する企業に月額利用料金を支払い、レッスンが受けられる仕組みだ。今後も例えば旅や趣味、エンターテインメント、学習など他のサービス事業者が展開する『コト・体験』などのサービス・コンテンツの中から、お客様に喜んで頂ける面白いものをやっていきたい。サービス提供者にとっても当社の番組で紹介することで多くのお客様に一気に訴求でき、当社もお客様に紹介することでサービスに関連する商材の販売や手数料収入などを得ることができ、ウィンウィンだ。新規の取り組みについては数年は無論、利益は出ない先行投資となるが将来的な成長を考えれば必要なことだ。中計の最終年度となる5年目には全社の利益の2割は新規事業で獲得したい」
――”アフターコロナ”に向けた戦略は。
「これまで培った勝ちパターンや強固な土台など色々とあるわけだが、これからに向けてこの創立25周年という節目の年を機に、一度、様々なことを見直す必要があると思う。お客様の生活様式や社会インフラの状況、通販の位置づけも変わってきている。テレビ通販市場は近年、大きな成長は見られなかったが、去年は例年よりも高い市場成長率を見せた。これはコロナによる巣ごもり消費増が主因だ。店舗で買い物ができない方々が自宅でテレビを通じてお買物をしていただいたということだ。確かに昨年の市場成長は一時的なものかもしれないが、これによって『テレビ通販や通販は便利』と思われた方も多かったのではないか。また、コロナが落ち着き始めた段階で、これまで消費を我慢してきた分、そのリバウンドが必ず来るはずだ。そうした中で当社に何ができるか。何をすべきかを考え、そこでしっかりと、そうしたニーズにお応えできる商品、サービスを揃えたい。数年前に基幹システムの入れ替えも終え、新しい放送スタジオも今年から稼働を始めた。新社屋も完成した。来春には千葉・船橋市に新設した物流拠点の本稼働も始めるなど主な投資も終えた。今後の成長に向けて着実にすべきことを行っていく」(おわり)
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――今期(2022年3月期)の戦略は。
「前期(2021年3月期)はコロナ禍による売上減少の影響を最小限にとどめるために巣ごもり需要に対応した商品をそろえたが、今期は積極的に新規の商品を展開していく。強化してきたファッションも前年はコロナで投入を控えていたが新しいブランドをどんどん増やしていく。それによって将来的に売り上げをけん引するような強い商品・ブランドを育てていく。新しい試みも行っていく。今期は創立25周年の記念の年であることもあり、4月から毎月25日に売れ筋商品を特別なセット内容としたり、割安な価格で販売する番組『プレミアムショップスターバリュー』や通常は紹介していないような特別な商品を紹介する特番の放映を開始している。また、2月から東急ハンズが選ぶ商品を紹介、販売する特別番組『開店!東急ハンズショップチャンネル店』を月1回、放送しているが売り上げも非常に好調だ。今期の売上高は前年実績を越えていきたい。足元も順調だ。コロナの影響で落ち込んだ前年実績を越えているのは当然として好調だった前々期(2020年3月)の実績と比較しても同水準まで(売上高は)戻ってきている」
――「ショップチャンネル」の特徴であり、強みでもある生放送だが、コロナの感染対策の観点から24時間生放送をやめ、録画番組も交えた編成とした。24時間生放送に戻すのか。
「今年4月からは生放送は1日20時間まで戻している。録画番組は現状、午前2~6時までの4時間だ。お客様の声や反応を聞きながら、すべて生放送にした方がよいと判断すればそうするが、今のところ、この時間帯ではしばらく録画番組の放送を続けようかと思っている。コロナの感染対策という観点もあるが、深夜帯に働く社員には十分なケアや対応は行っているが、深夜に働くというのは負担もかかるわけで、”働き方”という観点で見ても無理に戻さなくともよいのではないか。コロナ禍を機に人々の生活パターンも変化している。お客様の変化に合わせて、編成の在り方も時間をかけて見直していく必要もあるとは思う」
――今期から始まる5カ年の中期経営計画を策定した。
「『テレビ通販からショッピングエンターテインメントのリーディングカンパニーへ』を掲げて、様々な新しい取り組みを進めて、持続的な成長を目指すための計画だ。当社はこれまでお客様の購入頻度を高めるための施策、もっと言えば年間に多くの商品を購入頂ける優良顧客の皆様にもっと購入を促すような施策がメインだった。これまではそれが効率がよく、ここまで成長することができたわけだが、今後も持続的な成長を続けるためには異なる打ち手も必要だ。そのため、番組は視聴しているが未購入層、1~2度購入頂いたがその後は購入していない層、一時期は購入を頂けていたが購入を止めてしまった層などに向けた購入促進策を本格的に実施していくことが1つだ。例えば、初回購入時にクーポン券を差し上げたり、送料を無料にしたりなどだ。これまでも実施してはいたがより力を入れてやっていく。各施策は効果検証を繰り返しながら最適な施策を打っていく」
――8月から開始する初の独自クレジットカード「ショップチャンネルカード」の発行もその一環か。
「そうだ。既存顧客の囲い込み施策だ。決済額に応じて貯まるポイントで当社で利用可能な割引コードを付与したり、送料無料という特典がつく。多くのお客様に利用を頂きたい」
――中計では新規層の顧客開拓や新規事業などにも取り組む。
「新規層のお客様の獲得の強化については、一環として4月から女性向け動画メディアを運営するC Channel(シーチャンネル)と組んでライブコマース『コレイヨ』を開始している。シーチャンネルが運営する動画メディアの公式インスタグラム上で各分野で活躍するインフルエンサーが進行役となり、商品を使ったデモンストレーションなどのライブ動画を配信して、専用サイトに誘導し、購入を促す形だ。これまで獲得しにくかった20、30代にアプローチする施策だ。毎回、様々な商品を販売しながら、何がお客様に受けているか。集客方法、番組内の訴求方法、ECサイトへの誘導など様々な施策を試しながら検証を繰り返している。ありとあらゆる選択肢を試して効果的な展開方法を見つけ出していこうと思っている。新しいビジネスモデルの構築も行っていく。その1つはコト・体験型商品の展開だ。第一弾として、6月1日にミラー型デバイスを介して、エクササイズレッスンが受けられる『フィットネスミラー』の販売を行った。ミラー型のタッチパネルデバイスを介して、インストラクターのレッスン動画などをみることができるサービスで、お客様は当社でミラーを購入頂き、レッスン動画を配信する企業に月額利用料金を支払い、レッスンが受けられる仕組みだ。今後も例えば旅や趣味、エンターテインメント、学習など他のサービス事業者が展開する『コト・体験』などのサービス・コンテンツの中から、お客様に喜んで頂ける面白いものをやっていきたい。サービス提供者にとっても当社の番組で紹介することで多くのお客様に一気に訴求でき、当社もお客様に紹介することでサービスに関連する商材の販売や手数料収入などを得ることができ、ウィンウィンだ。新規の取り組みについては数年は無論、利益は出ない先行投資となるが将来的な成長を考えれば必要なことだ。中計の最終年度となる5年目には全社の利益の2割は新規事業で獲得したい」
――”アフターコロナ”に向けた戦略は。
「これまで培った勝ちパターンや強固な土台など色々とあるわけだが、これからに向けてこの創立25周年という節目の年を機に、一度、様々なことを見直す必要があると思う。お客様の生活様式や社会インフラの状況、通販の位置づけも変わってきている。テレビ通販市場は近年、大きな成長は見られなかったが、去年は例年よりも高い市場成長率を見せた。これはコロナによる巣ごもり消費増が主因だ。店舗で買い物ができない方々が自宅でテレビを通じてお買物をしていただいたということだ。確かに昨年の市場成長は一時的なものかもしれないが、これによって『テレビ通販や通販は便利』と思われた方も多かったのではないか。また、コロナが落ち着き始めた段階で、これまで消費を我慢してきた分、そのリバウンドが必ず来るはずだ。そうした中で当社に何ができるか。何をすべきかを考え、そこでしっかりと、そうしたニーズにお応えできる商品、サービスを揃えたい。数年前に基幹システムの入れ替えも終え、新しい放送スタジオも今年から稼働を始めた。新社屋も完成した。来春には千葉・船橋市に新設した物流拠点の本稼働も始めるなど主な投資も終えた。今後の成長に向けて着実にすべきことを行っていく」(おわり)