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【吉岡晃社長に聞く アスクルの現状とこれから㊦】 ロハコの構造改革進む、企業の在り方問われる時代に

2021年 7月 8日 12:30

 前回に引き続き、吉岡晃社長にアスクルの現状と今後の方向性などについて聞いた。

                       ◇

 ――業績は順調だ。理由は。

 「1つはコロナ禍の影響がある。BtoB事業(法人向けオフィス用品通販事業)についてはお客様である企業、特に大企業ではテレワークが進んだことで、会社で使う文具・事務用品、コピー用紙の売り上げは下がったが、消毒液などの衛生用品などが大きく伸び、落ち込みをカバーし、トータルで伸びた。(個人向けの日用品通販サイトの)『ロハコ』は(コロナを追い風に)大きく伸びた。利益面では『ロハコ』の構造改革が進んできたことが大きい。これまでは先行投資としてロハコ事業の赤字が拡大していたが、目指すべき方向を変えてお客様の利便性を損なわずに、損益分岐点を下げていく試みが順調に進みつつある。先日、ロハコにZホールディングの通販事業者向けサイト構築サービス『XS(クロスショッピング)エンジン』を導入したこともその一環だが、そのほか、一配送当たりでどれだけまとめて配送できるようにするかという工夫など様々な無駄を省き、効率化することで固定費や変動費を圧縮して売り上げを落とすことなく、利益を上げられる構造になりつつある」

 ――コロナ禍で事業を進めていく上で意識していることは。

 「お客様、特に個人のお客様だが、家にいる時間が増えたことで家事もまた増えだ。すると増えた家事を手早く終わらせるためにどうすべきかというさらなる時短ニーズが出てきている。このようにコロナによってニーズやし好も変わってきており、新しいチャンスとも言える。お客様との接点を直接、持っている当社のメリットを活かして、多くの事業者の中から我々を選んで頂けるように商品、サービスを考えていきたい。

 もう1つは置き配だ。置き配といってもニーズは多様で、荷物を置いていけばよいわけではなく、重くかさばるものを宅配ボックスに入れるとお客様は大変だ。感染の不安から対面では受け取りなくないが、単に置き配で満足かといえばそうではない。お客様に感覚や要望に応じたサービスが必要だろうと思う。

 事業面だけでなく、企業としての在り方も問われると思う。コロナは社会の大きなパラダイムシフトのきっかけになった。ただ、コロナ禍以前から社会の構造は近く、大きく変わっていくだろうと考えていた。気候変動やそれに伴う自然然災害の多発などにより否応なく社会は変化せざるを得ないからだ。社会が変化していく中で、役割、目指すべき方向を明確化することが企業にとって大切だ。そのため、これは以前から考えてきたことだが昨年、パーパス(存在意義)、バリューズ(価値観)、DNAで構成される『ASKUL WAY』という当社の行動規範を新しく作成した。そのパーパスは『仕事場とくらしと地球の明日に「うれしい」を届け続ける。』というものだ。当社では昨年3月に経済産業省と厚生労働省の要請に応え、消毒液を医療機関や介護施設などに出荷する事業を請け負った。消毒液の調達が困難な小規模施設などを対象として当社の物流を活かして届けるものだ。当時は必要な物資が不足しており、買い占めや転売も見受けられた。そこで当社がとるべき行動は何かと考えた時に、こうした状況に乗じて売り上げをひたすら上げることなのかと。それは違うだろうと。全国の医療機関など必要としているところに確実にすぐにお届けすることこそ、我々のミッションだろうと考え、請け負うことにした。業績はもちろんだが、しっかりと社会のインフラとして責任を果たしていくことが我々の存在価値であり、それこそがお客様から選ばれるための要素になると思っている」


 ――課題や今後の方向性は。

 「お客様にいかに選ばれていけるかだろう。コロナでECのプレイヤーは一気に増えた。その中でお客様に振り向いて頂けるか。そのためには、お客様の要望にきめ細かくこたえ続けていくしかない。品ぞろえや価格、デリバリーはもちろん、今後は特にサスティナビリティという観点も重要だ。それらをスピード感を持って改善、実現していくには徹底的にAIなどテクノロジーを活用してDX化を進めていく。そのためには(グループの)Zホールディングスやソフトバンクの力もふんだんに借りながら、実現していきたい。また、すでに現場レベルでは情報交換などを行っているがLINEやゾゾとの連携も模索していきたい」(おわり)

 
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