アフィリエイト広告検討委、業界自主規制求める声、表示管理責任の強化も
消費者庁は6月10日、「アフィリエイト広告等に関する検討会」の初会合を行った。複数の委員から、業界に自主ルール策定を求める声があがった。行政に景品表示法第26条(表示の管理上の措置)の運用を求める声もあった。
検討会は、アフィリエイト広告に対する景表法適用の考え方、不当表示の未然防止に向けた方策を検討する。検討は、月1回のペースで行う。2回目以降、関連事業者のヒアリング(非公開)を行い、年内をめどに結論を得る。並行して行うアフィリエイト広告に関する実態調査の結果も検討に活かす。
表示の管理責任は、景表法第26条に規定される。同法第27条(指導・助言)、第28条(勧告・公表)の権限もある。16年に行政が詳細の指針も示した。
委員からは、「26条を活かせる機会」、「広告の定期的なチェックなど、26条の管理措置で詳細のルールを定めてほしい」など、同条の運用で広告主の自浄作用を促すことを求める意見があった。
アフィリエイト広告が外見上、広告か否か判別がつきにくいことに対する指摘も複数の委員からあった。「有償か否か、表示するルールが必要」など、業界の自主規制を求める声もあった。
初会合は、業界の自主規制を求める声が多く、法改正への言及は一部だった。現行法においてもアフィリエイト広告の責任は最終的に販売者(広告主)が負うとの認識で一致しており、これら基本原則の周知を行政に求める声が複数あった。
表示主体者の判断は、08年東京高裁判決で「他の者にその決定を委ねた場合も含む」との判例が示されている。消費者庁も「少なくとも「提携審査・承認」「掲載前審査・確認」「掲載後の審査・確認(パトロール等)」「成果の確認」の4段階で、広告主が内容を確認できる」(表示対策課)とする。
委員からは、「基本原則を確認し、有効な手段で周知すべき」、「出発点は、基本ルールの周知。業界が自主規制するなら実効性を検証した上で、次の段階でアウトサイダーの規制」、「検討結果を踏まえた自主規制に期待しつつ、景表法で対応が及ばない部分が次の課題」といった意見があった。
業界サイドの委員からは、「悪質な事業者はごく一部」として、健全な事業者の負担とならない検討を求める声があった。
共有されたのは、媒体社に自ら広告出稿を行い、アフィリエイトサイトに誘導する「アドアフィリエイト」に対する問題意識。「自ら広告出稿し、大量に虚偽誇大広告を配信して消費者被害につながっている実態がある」などの声があった。
消費者庁も「自ら身銭を切って出稿するアドアフィリエイトは、法人・個人でも大規模。有償の場合は成果報酬を求めて不当表示を行うインセンティブが働きやすい」と問題視した。
検討委員の発言要旨
消費者庁の「アフィリエイト広告等の検討会」検討委員の主な発言は以下の通り。
■笠井北斗(日本アフィリエイト協議会代表理事)
ごく一部の悪質層が「アドアフィリエイト」等の手法で大量に虚偽・誇大広告を配信し、消費者被害につながっている。これら事業者を排除し、業界、消費者の利益につなげたい。
■河端伸一郎(日本アフィリエイト・サービス協会会長)
ここ数年で「アドアフィリエイト」が目立っている。管理が行き届かない。まじめな事業者の負担にならない改善に注力したい。
■万場徹(日本通信販売協会専務理事)
景表法の規制範囲拡大など規制強化を行う場合は、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の観点から議論してほしい。消費者教育の観点も必要。
■柳田桂子(日本インタラクティブ広告協会事務局長)
不当表示を行うアフィリエイトサイトが、消費者誘導を目的にメディアを買いつける問題がある。ネット広告は、市場構造から掲載可否の判断を媒体社が行う従来の商習慣のプロセスが難しい。不当表示対策に広告主がソースとコストをかけなければならないことも課題。
■池本誠司(弁護士)
広告主も消費者の苦情を受けても自社広告でないため積極的に関与しない。まずは表示主体が販売者である基本ルールの周知が出発点。景表法第26条について、より具体的なルールを定めてほしい。有償か中立性のある広告か表示ルールも必要。取り組みには、ASPの協力が不可欠。業界が自主規制するなら、まずは見える形で示し、実効性を検証した上で規制するのが次の段階。
■岩本諭(佐賀大学経済学部経済法学科教授)
景表法第26条を活かせる機会。企業の自主的な取り組みが望ましいが、同法の運用で企業の自浄作用も期待できる。景表法で対応が及ばないところが次の課題になる。
■佐藤吾郎(岡山大学大学院法務研究科教授)
広告責任が販売者にあるという基本原則、有効な周知の手段を検討すべき。今後も新技術による広告手法が出てくる可能性はあり、規制手法のモデルになる。行政の執行、人員も限界があり、自主規制と法執行の組み合わせが必要。
■白石忠志(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
課徴金制度の運用面の工夫、課題となっている点の公表も検討してほしい。
■増田悦子(全国消費生活相談員協会理事長)
相談現場でも後追いできないのが現状。公式サイトの表示は法的に問題ないと主張され、協議が難航する。ASPはアフィリエイターとの契約時に調査したり、広告規制の注意喚起を行うなど、デジタルプラットフォームと同様に調査、苦情対応で役割を果たすべき。広告主とASPの役割を明確にして、デジタル新法と同様の規制を行ってほしい。課徴金の算定率も再度検討してほしい。
■森田満樹(FoodCommunicationCompass代表)
とくに健食で相談が多い。表示主体の範囲、広告責任、表示管理義務を明確にして周知してほしい。アフィリエイトサイトの見分けがつく仕組みが必要。景表法もデジタル時代の到来など変化する社会に対応して法改正などで進化してほしい。
■中川丈久(座長=神戸大学大学院法学研究科教授)
関連事業者にも「善良層」「中間層」「悪質層」がいる。中間層をいかに善良層に仕向け、悪質層にいかに対応するかを検討していきたい。
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検討会は、アフィリエイト広告に対する景表法適用の考え方、不当表示の未然防止に向けた方策を検討する。検討は、月1回のペースで行う。2回目以降、関連事業者のヒアリング(非公開)を行い、年内をめどに結論を得る。並行して行うアフィリエイト広告に関する実態調査の結果も検討に活かす。
表示の管理責任は、景表法第26条に規定される。同法第27条(指導・助言)、第28条(勧告・公表)の権限もある。16年に行政が詳細の指針も示した。
委員からは、「26条を活かせる機会」、「広告の定期的なチェックなど、26条の管理措置で詳細のルールを定めてほしい」など、同条の運用で広告主の自浄作用を促すことを求める意見があった。
アフィリエイト広告が外見上、広告か否か判別がつきにくいことに対する指摘も複数の委員からあった。「有償か否か、表示するルールが必要」など、業界の自主規制を求める声もあった。
初会合は、業界の自主規制を求める声が多く、法改正への言及は一部だった。現行法においてもアフィリエイト広告の責任は最終的に販売者(広告主)が負うとの認識で一致しており、これら基本原則の周知を行政に求める声が複数あった。
表示主体者の判断は、08年東京高裁判決で「他の者にその決定を委ねた場合も含む」との判例が示されている。消費者庁も「少なくとも「提携審査・承認」「掲載前審査・確認」「掲載後の審査・確認(パトロール等)」「成果の確認」の4段階で、広告主が内容を確認できる」(表示対策課)とする。
委員からは、「基本原則を確認し、有効な手段で周知すべき」、「出発点は、基本ルールの周知。業界が自主規制するなら実効性を検証した上で、次の段階でアウトサイダーの規制」、「検討結果を踏まえた自主規制に期待しつつ、景表法で対応が及ばない部分が次の課題」といった意見があった。
業界サイドの委員からは、「悪質な事業者はごく一部」として、健全な事業者の負担とならない検討を求める声があった。
共有されたのは、媒体社に自ら広告出稿を行い、アフィリエイトサイトに誘導する「アドアフィリエイト」に対する問題意識。「自ら広告出稿し、大量に虚偽誇大広告を配信して消費者被害につながっている実態がある」などの声があった。
消費者庁も「自ら身銭を切って出稿するアドアフィリエイトは、法人・個人でも大規模。有償の場合は成果報酬を求めて不当表示を行うインセンティブが働きやすい」と問題視した。
検討委員の発言要旨
消費者庁の「アフィリエイト広告等の検討会」検討委員の主な発言は以下の通り。
■笠井北斗(日本アフィリエイト協議会代表理事)
ごく一部の悪質層が「アドアフィリエイト」等の手法で大量に虚偽・誇大広告を配信し、消費者被害につながっている。これら事業者を排除し、業界、消費者の利益につなげたい。
■河端伸一郎(日本アフィリエイト・サービス協会会長)
ここ数年で「アドアフィリエイト」が目立っている。管理が行き届かない。まじめな事業者の負担にならない改善に注力したい。
■万場徹(日本通信販売協会専務理事)
景表法の規制範囲拡大など規制強化を行う場合は、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の観点から議論してほしい。消費者教育の観点も必要。
■柳田桂子(日本インタラクティブ広告協会事務局長)
不当表示を行うアフィリエイトサイトが、消費者誘導を目的にメディアを買いつける問題がある。ネット広告は、市場構造から掲載可否の判断を媒体社が行う従来の商習慣のプロセスが難しい。不当表示対策に広告主がソースとコストをかけなければならないことも課題。
■池本誠司(弁護士)
広告主も消費者の苦情を受けても自社広告でないため積極的に関与しない。まずは表示主体が販売者である基本ルールの周知が出発点。景表法第26条について、より具体的なルールを定めてほしい。有償か中立性のある広告か表示ルールも必要。取り組みには、ASPの協力が不可欠。業界が自主規制するなら、まずは見える形で示し、実効性を検証した上で規制するのが次の段階。
■岩本諭(佐賀大学経済学部経済法学科教授)
景表法第26条を活かせる機会。企業の自主的な取り組みが望ましいが、同法の運用で企業の自浄作用も期待できる。景表法で対応が及ばないところが次の課題になる。
■佐藤吾郎(岡山大学大学院法務研究科教授)
広告責任が販売者にあるという基本原則、有効な周知の手段を検討すべき。今後も新技術による広告手法が出てくる可能性はあり、規制手法のモデルになる。行政の執行、人員も限界があり、自主規制と法執行の組み合わせが必要。
■白石忠志(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
課徴金制度の運用面の工夫、課題となっている点の公表も検討してほしい。
■増田悦子(全国消費生活相談員協会理事長)
相談現場でも後追いできないのが現状。公式サイトの表示は法的に問題ないと主張され、協議が難航する。ASPはアフィリエイターとの契約時に調査したり、広告規制の注意喚起を行うなど、デジタルプラットフォームと同様に調査、苦情対応で役割を果たすべき。広告主とASPの役割を明確にして、デジタル新法と同様の規制を行ってほしい。課徴金の算定率も再度検討してほしい。
■森田満樹(FoodCommunicationCompass代表)
とくに健食で相談が多い。表示主体の範囲、広告責任、表示管理義務を明確にして周知してほしい。アフィリエイトサイトの見分けがつく仕組みが必要。景表法もデジタル時代の到来など変化する社会に対応して法改正などで進化してほしい。
■中川丈久(座長=神戸大学大学院法学研究科教授)
関連事業者にも「善良層」「中間層」「悪質層」がいる。中間層をいかに善良層に仕向け、悪質層にいかに対応するかを検討していきたい。